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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
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シモーネの街が燃えているっ!——⑤

「ラムザの兄貴らしいや。ったく、俺っちも気が乗らねぇけど、名乗らせてくれねぇっすか。敵に覚えられていないのも、癪なんで」


 赤髪の青年は、好戦的に八重歯をチラつかせた。


 引き締まった体つきと、子供っぽい顔つきが印象的だ。ニヤリと笑い槍を構えるさまは、どこか颯爽としていた。


「アレックス・チェンバレン! ヴァリバルト傭兵団の前衛部隊の一人、そして最近上り調子の期待の――」

「ちなみに、ワシはグレゴーリ・リューズ。ヴァリバルト傭兵団で一番年寄りの傭兵じゃ。後衛部隊の荷車隊などの補給を任せられるおるよ。まぁ、こうして前線に出ることもしばしばあるが」

「だったら出しゃばれないでほしいっすね、クソ爺っ!」

「おいおい、クソ爺呼ばわりかよ。敬語も台無しじゃのぉ」

「いいから行くっすよ、名乗りは狩ってからでも行けるしなっ!」

「そうじゃな、グレゴーリ参らせていただくのゃ」

「おっしゃ、行くぜぇぇぇっ!」

 

 そうして、青年のアレックスと老兵のグレゴーリも、ラムザの背中に続くようにして駆けって行く。


「ミツルギ・シオン、参るっ! 北門を皆で突破だっ! って、あれ兄さまは……⁉」

 

 シオンが周囲を見渡しても、カイトの陰すらない。

 

 何故なら皆が名乗り上げる前から、もう既に駆け出していたのだから……。


「皆が名乗り上げるなら、僕もそうしようかな」

 

 乱戦状態。

 皆がどこで戦っているのか、分からないほどだった。ただ、耳に聞こえるのは刃の甲高い音だけが響き渡る。

 

 それは、ケモノたちと激しく衝突している証。

 

 そして、途絶えることなく鳴り響くのは――。

 

 生きている証でもある。


 その最前線で、ヴァリバルト傭兵団の隊長が名乗り上げた。


「ミツルギ・カイト! 参るっ!」

 

 カイトは腰を深く沈め、刃を斜めにしてケモノの胴を薙ぎ払った。

 

 血しぶきがあがったが、返り血を浴びる間もなく、次の獲物へと斬りかかっていく。

 

 ――祭りの夜が、明けていく。


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