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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
50/60

シモーネの街が燃えているっ!——④

 そして瓦礫の隙間からようやく、小さな手が震えながらも伸びてきた。

 

 ラムザが巨大な瓦礫を持ち上げ、カイトが勢いよくその手を引っ張る。


 すると、ぐちゃぐちゃの泥まみれになったケレンが出てきた。

「……ゴホッ、ゴホッ!」

 

 息が荒く、苦しそうに酸素を取り込む。


 顔には傷跡が走っており、唇は青ざめていた。


「……グスッ、グスッ」


 瓦礫から救出されたケレンの顔には、安堵というよりも、恐怖と涙と溢れていた。


「……えっと」


 泣き止まないので、どうしようかと抱えながらオロオロするカイト。


 それを横目で見てからラムザは肩を竦め、ケレンを抱き合えた。


「ほら、こうやっるんですっ! 温かく優しくっ!」

「硬っ! ゴリゴリ痛いっ!」

「ははっ、元気じゃないですか」

 

 そうやって、ケレンを肩車するラムザ。

 そこには、もう涙はなかった。あの泣きじゃくっていたリックが、すぐに笑って見せる。


「流石だな、ラムザは」

「まぁ、こういうのは得意なので」

 

 そうして北門から抜けようと、総勢五〇名とケレン一人が向かっていると――。


 ぞろぞろとケモノたちが、カイトたちに立ちふさがるようにして道を阻んできた。


「お前ら、遅いっすね。俺らのが断然早いんっすけどっ!」

「ちょうどいいじゃないですかっ! まだやりたらなかったですしっ!」

「もう少しばかり老体に鞭を打つとするかのぉ。子供にいいところ見せたいしのぉ」

「お祭りっ、お祭りっ! もっと私にも、暴れさせろっ!」


 そう、まるで神輿の祭りだった。

 周りが火で燃え盛る中、ケレンが神輿のように担がれている。ラムザに肩車されているから、尚更カイトにはそう思えた。ミツルギ家では、毎年秋ごろに騒がしく祭りをしていたなぁ、と。


「……喧嘩の祭りか。懐かしいな」

「皆さん、気合を入れてきましょう。気を緩めて、死の淵に落っこちないようにっ!」

「いやいや、僕が落ちるっ! 僕を担いでるんだからねっ、忘れてないっ⁉」

「ラムザ・ルンドヴァルっ! ヴァリバルト傭兵団の副隊長が、道を開いて差し上げるっ!」

「それって前に出るってことじゃ――」

 

 そう喋る暇もなく、ケレンの声が掻き切れていく。

 

 気づいたら、いなくなっていた。


 まるで風、それも突風のような嵐みたいな男だ。


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