シモーネの街が燃えているっ!——④
そして瓦礫の隙間からようやく、小さな手が震えながらも伸びてきた。
ラムザが巨大な瓦礫を持ち上げ、カイトが勢いよくその手を引っ張る。
すると、ぐちゃぐちゃの泥まみれになったケレンが出てきた。
「……ゴホッ、ゴホッ!」
息が荒く、苦しそうに酸素を取り込む。
顔には傷跡が走っており、唇は青ざめていた。
「……グスッ、グスッ」
瓦礫から救出されたケレンの顔には、安堵というよりも、恐怖と涙と溢れていた。
「……えっと」
泣き止まないので、どうしようかと抱えながらオロオロするカイト。
それを横目で見てからラムザは肩を竦め、ケレンを抱き合えた。
「ほら、こうやっるんですっ! 温かく優しくっ!」
「硬っ! ゴリゴリ痛いっ!」
「ははっ、元気じゃないですか」
そうやって、ケレンを肩車するラムザ。
そこには、もう涙はなかった。あの泣きじゃくっていたリックが、すぐに笑って見せる。
「流石だな、ラムザは」
「まぁ、こういうのは得意なので」
そうして北門から抜けようと、総勢五〇名とケレン一人が向かっていると――。
ぞろぞろとケモノたちが、カイトたちに立ちふさがるようにして道を阻んできた。
「お前ら、遅いっすね。俺らのが断然早いんっすけどっ!」
「ちょうどいいじゃないですかっ! まだやりたらなかったですしっ!」
「もう少しばかり老体に鞭を打つとするかのぉ。子供にいいところ見せたいしのぉ」
「お祭りっ、お祭りっ! もっと私にも、暴れさせろっ!」
そう、まるで神輿の祭りだった。
周りが火で燃え盛る中、ケレンが神輿のように担がれている。ラムザに肩車されているから、尚更カイトにはそう思えた。ミツルギ家では、毎年秋ごろに騒がしく祭りをしていたなぁ、と。
「……喧嘩の祭りか。懐かしいな」
「皆さん、気合を入れてきましょう。気を緩めて、死の淵に落っこちないようにっ!」
「いやいや、僕が落ちるっ! 僕を担いでるんだからねっ、忘れてないっ⁉」
「ラムザ・ルンドヴァルっ! ヴァリバルト傭兵団の副隊長が、道を開いて差し上げるっ!」
「それって前に出るってことじゃ――」
そう喋る暇もなく、ケレンの声が掻き切れていく。
気づいたら、いなくなっていた。
まるで風、それも突風のような嵐みたいな男だ。
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