シモーネの街が燃えているっ!——②
(誰か、僕を呼んでいる?)
その声を、どこかで聞いたことがあった。既に周囲は煙で見えないなか、必死で声の主を探し、そして見つけたときにはもう息も絶え絶えだった。
「……カイト」
瓦礫の山にうずくまっていたのは、あのケレンだった。
森で遭難していた子供の一人だ。
とはいえ、埋もれているので彼の全身は拝めない。
埋もれた瓦礫の隙間から、何とか生きていることを感じさせる、そんな微弱な声が聞こえてくるだけだった。
ずっと心細かったに違いない。
周囲はパニックに包まれ、誰もが自分の安全を最優先していた。
彼はその中で必死に声を上げていたが、今の今まで誰にも見つからずに瓦礫に埋もれていた。しかし決して諦めず、絶望の中でも必死に生きようとしている。
そんな姿には心を打たれるものがあり、カイトはすぐさま駆け寄った。
「今すぐ助けるっ!」
そう言いつつも、慎重になっていた。
瓦礫の一つ一つが、複雑に重なり合っている。少しでも均衡が崩れれば、ケレンを生かしている僅かな隙間さえ埋めてしまうだろう。だからこそ、慎重にかつ急いで瓦礫を撤去しなければいけない。
「熱っ!」
後ろから熱風が迫り、ますます周囲の火の勢いが熱くなっていく。燃え盛る火がどんどん近づいてくる。汗が額から滴る中、慎重に瓦礫をどかしていくとーー。




