一方、シモーネの街は……
「ごほっ!」
「お兄様、大丈夫?」
「今までで、一番強烈なヤツを喰らったっ!」
「えっ、ソイツはどこぞのヤツですかっ!」
「そこにいる妹だよ」
「てへっ」
「可愛くない。凶暴な妹だ」
「うーん、やり過ぎちゃいましたか」
振り返ってみれば、平原にはポカンとした穴が空いていた。
底が見えてしまうくらいに、どデカい穴が。
もちろん、ケモノたちの見る影もない。
「……まぁケモノを殲滅できたし、良しとするか」
「お兄様のそういう前向きな姿勢、大好きですっ!」
「無理矢理、前向きに考えてるんだけど。だからシオンにはまだ待機してほしかったのに」
「むぅ、愛しの妹を棺桶に閉じ込めておくなんて、酷いお兄様です」
「二つ返事で了解してくれたのに?」
「棺桶の中は、最初はひんやりとして気持ち良かったのですが……一週間で飽きましたっ!」
「はいはい」
それにしても、あのケモノの軍勢を殲滅できたことは大きい。
五〇〇はいたのだろうか。
これで前線の部隊は蹴散らすことができたし、あのケモノと言えども後続の部隊が追い付くまでの時間はかかるだろう。
「もう逃げる必要はないかな」
「はい、街へ戻って防衛に備えればいいですから」
しかしそんな甘い考えは、すぐに改めさせられることになる。
――なぜなら。
ドカンと街の方から、とてつもない音がした。
「何の音ですかっ!」
「シモーネが燃えているっ!」
まるで映画のような光景だった。白い粉が空高く舞い上がり、一瞬にして街が煙に包まれている。離れているカイトたちにも分かるくらいに、街が燃えていた。
「僕たちが対峙した部隊は、囮だったらしい」
「……囮ですか?」
「あぁ、注意を引き付けておくためのね。そして他の別働隊を密かに行動させ、街へ突撃させた」
「わっわっ、急いで街へ戻らないとっ!」
「うん、行こうか」
森に隠していた馬を跨り、馬の腹を蹴ってすぐに街へと向かった。
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