戦闘もようやく終わるも……大群が迫ってきたっ!
「……終わったか」
火照った身体に、冷たい風が当たる。
満身創痍だった。自分の身体を見れば、擦り傷らだけで、いつの間にか肩で息をしていることに気が付いた。
しかしなぜか酸素を求めようとしても、肺が受け付けてくれない。
満身創痍だからじゃない。
それは終わったことを意味してないからで――。
ドドドっと地震のような響きが伝わってきた。
一〇〇どころじゃない。
それどころか、三〇〇ほどの軍勢がカイト目掛けて押し寄せていた。
「……もう疲れたんだけど」
思わず、げんなりとしながら肩を落とすカイト。
もう包囲されている。
先ほどの戦闘で時間を稼がれたせいだ。この平原に誘い込まれたのも、数の暴力でカイトを殺しにきているからだろう。
「それでも、皆に生き延びろと言った手前——」
カイトが手をかざす。
「ここで諦めるわけにはいかないッ!」
眩い光。
暗闇一帯を強く照らし、輝きが増していくようだ。それは全ての闇を切り裂く剣になろう。どんな暗闇でも眩しく照らす剣にもなろう。
「アイン――」
唱えようとしたところで、ケモノの影が眼前に現れる。一匹のケモノがカイト目掛けて突進してきた。魔法を展開するときには、無防備になる。
(このままでは、やられるッ!)
ケモノが突進してきたそのとき――。
まるで庇うようにして、また大きな影がカイトの眼前に飛び込んできた。
「えっ!」
それは棺桶だった。
まるで自らの意志が宿ったかのように、そのままケモノに突っ込んでいった。
「グッ‼」
ケモノが短い唸り声を上げた。
それは驚きの声なのだろうか。
なんせ、棺桶の中から人が出てきたのだから。
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