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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
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戦闘もようやく終わるも……大群が迫ってきたっ!

「……終わったか」

 

 火照った身体に、冷たい風が当たる。


 満身創痍だった。自分の身体を見れば、擦り傷らだけで、いつの間にか肩で息をしていることに気が付いた。


 しかしなぜか酸素を求めようとしても、肺が受け付けてくれない。


 満身創痍だからじゃない。


 それは終わったことを意味してないからで――。

 

 ドドドっと地震のような響きが伝わってきた。

 

 一〇〇どころじゃない。

 

 それどころか、三〇〇ほどの軍勢がカイト目掛けて押し寄せていた。


「……もう疲れたんだけど」

 

 思わず、げんなりとしながら肩を落とすカイト。


 もう包囲されている。

 先ほどの戦闘で時間を稼がれたせいだ。この平原に誘い込まれたのも、数の暴力でカイトを殺しにきているからだろう。


「それでも、皆に生き延びろと言った手前——」

 

 カイトが手をかざす。


「ここで諦めるわけにはいかないッ!」

 

 眩い光。

 暗闇一帯を強く照らし、輝きが増していくようだ。それは全ての闇を切り裂く剣になろう。どんな暗闇でも眩しく照らす剣にもなろう。


「アイン――」

 

 唱えようとしたところで、ケモノの影が眼前に現れる。一匹のケモノがカイト目掛けて突進してきた。魔法を展開するときには、無防備になる。


(このままでは、やられるッ!)

 

 ケモノが突進してきたそのとき――。

 

 まるで庇うようにして、また大きな影がカイトの眼前に飛び込んできた。


「えっ!」

 

 それは棺桶だった。

 

 まるで自らの意志が宿ったかのように、そのままケモノに突っ込んでいった。


「グッ‼」

 

 ケモノが短い唸り声を上げた。

 

 それは驚きの声なのだろうか。

 

 なんせ、棺桶の中から人が出てきたのだから。


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