カイトVS大型のケモノ――②
だけど、いくらでもやりようはある。
「こっちから行くよ」
カイトは刀を鞘から抜いて、フェントを織り交ぜた胴薙ぎを繰り出していく。
続けざまの攻撃は、一撃目こそ躱されたが、二撃目はケモノの胴体にヒットする。
ケモノにとってかすり傷のようなもので、カイトが後ろに下がると、相手は追いすがるように迫ってきた。
(それでいい。だって、こっちは攻撃を誘発しているのだから)
カイトはまるで、ケモノが突進する瞬間を分かっていたように――刀を鞘走った。
「ガウッ!」
ケモノの肩に、直撃ッ!
ケモノは強引に身体を回転させ、頭部の直撃を防ぐため、腕を前へ伸ばすような格好で防いでいた。
「でも手ごたえはあった」
「——」
ようやく異変に気付いたのであろう。
ケモノの身体がどんどん沈んでいってる。
やがて、ケモノの身体を支える力を失って、打たれた右肩からずるずると崩れ落ちて言った。
「肩口を叩いた。肉はキレなくても、衝撃で関節を外すことはできる」
人間でも、肩口を強打で叩かれれば腕が動かなくなる。
それは関節を持つ生き物なら、ケモノも人間も同じ。その急所をカイトは正確に射抜いたのだ。
「……」
カイトは正眼の構えで、ケモノに剣先を向ける。
そして、これは真剣勝負。お互いの命を賭け、最後に立っていた者が勝者だ。斬られたケモノはもう満足に動けず、二の太刀で確実に仕留めなければいけない。
それが分かっても尚、カイトは聞いた。
「……まだやるの?」
カイトの表情からは、わずかな迷いが読み取れる。
まるで何かをためらっているような……そんな表情。
しかし、ケモノの目には未だに闘志が宿っていた。
「ガルルルルッ!」
「……分かった」
カイトは、大きく踏み込んだ。
まるで瞬間移動したかのように、五メートルの距離を一気に詰める。
そしてほぼ同時だった――カイトの放つ横なぎの一閃と、ケモノの突き出した狼爪が重なり合う。
「ぐっ!」
ケモノの短い呻き声が響いた。
迫ってきた狼爪の上で刀を滑らせ、横なぎの一閃は、鋭角な刺突へと変貌した。
敵の勢いを利用して分厚い喉元を貫く。
そこに刃を深く突き入れると、開いた口からおびただしい血煙が噴き出た。
やがて力を失って、所在なくしたケモノの巨体は地面に触れ伏す。
喉元に刺さった刀を、カイトはゆっくりと引き抜いた。
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