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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
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カイトVS大型のケモノ――②

 だけど、いくらでもやりようはある。


「こっちから行くよ」

 

 カイトは刀を鞘から抜いて、フェントを織り交ぜた胴薙ぎを繰り出していく。


 続けざまの攻撃は、一撃目こそ躱されたが、二撃目はケモノの胴体にヒットする。


 ケモノにとってかすり傷のようなもので、カイトが後ろに下がると、相手は追いすがるように迫ってきた。


(それでいい。だって、こっちは攻撃を誘発しているのだから)

 

 カイトはまるで、ケモノが突進する瞬間を分かっていたように――刀を鞘走った。


「ガウッ!」

 

 ケモノの肩に、直撃ッ! 

 

 ケモノは強引に身体を回転させ、頭部の直撃を防ぐため、腕を前へ伸ばすような格好で防いでいた。


「でも手ごたえはあった」

「——」


 ようやく異変に気付いたのであろう。


 ケモノの身体がどんどん沈んでいってる。


 やがて、ケモノの身体を支える力を失って、打たれた右肩からずるずると崩れ落ちて言った。


「肩口を叩いた。肉はキレなくても、衝撃で関節を外すことはできる」

 

 人間でも、肩口を強打で叩かれれば腕が動かなくなる。


 それは関節を持つ生き物なら、ケモノも人間も同じ。その急所をカイトは正確に射抜いたのだ。


「……」

 

 カイトは正眼の構えで、ケモノに剣先を向ける。


 そして、これは真剣勝負。お互いの命を賭け、最後に立っていた者が勝者だ。斬られたケモノはもう満足に動けず、二の太刀で確実に仕留めなければいけない。


 それが分かっても尚、カイトは聞いた。

「……まだやるの?」


 カイトの表情からは、わずかな迷いが読み取れる。


 まるで何かをためらっているような……そんな表情。

 

 しかし、ケモノの目には未だに闘志が宿っていた。


「ガルルルルッ!」

「……分かった」


 カイトは、大きく踏み込んだ。


 まるで瞬間移動したかのように、五メートルの距離を一気に詰める。


 そしてほぼ同時だった――カイトの放つ横なぎの一閃と、ケモノの突き出した狼爪が重なり合う。


「ぐっ!」

 

 ケモノの短い呻き声が響いた。

 

 迫ってきた狼爪の上で刀を滑らせ、横なぎの一閃は、鋭角な刺突へと変貌した。


 敵の勢いを利用して分厚い喉元を貫く。

 

 そこに刃を深く突き入れると、開いた口からおびただしい血煙が噴き出た。


 やがて力を失って、所在なくしたケモノの巨体は地面に触れ伏す。

 

 喉元に刺さった刀を、カイトはゆっくりと引き抜いた。


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