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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
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ケモノの大将が現れたっ!

「来るっ!」


 森の中でケモノの群れが、カイトに目掛けて突進してくる。


 ケモノを横なぎで受け止めてさせてから、即座に身体を捻り反動を逸らした。

 

 それから後退しながら刀を下段に移すと間もなく、突進してきた別のケモノに、掠め取るような突き斬りで軌道を逸らした。


 そして次にケモノがカイトを捉えようとしたその先には――。

 

 もうそこに、カイトはいなかった。

 

 既に退いて、カイトは駆け出している。

 攻撃を捌いて隙ができた瞬間、脚に力を入れ大地を踏みしめる。そうして限界まで弾き絞られた弓矢のように、飛び出していた。


 攻撃ではなく、逃げに転じる。

 攻撃に転じることはせず、かつ後退しながら距離を取らなければいけない。囲まれたら、終わりなのだ。


 だからどう逃げられるか。

 それを念頭に入れなければいけなかった。どう打てばどう捌けられ、どうすれば距離を取れるのか、そういう一刀を振らなければいけない。


「でも、少しずつ分かってきたな」

 

 それでも、カイトとケモノの距離は縮まらない。

 

 それどころか、カイトとケモノの差は空いていく一方だ。

 

 カイトはケモノたちの猛攻をことごとく受け流し、その生まれた隙を縫っては逃げてを繰り返してきた。また一歩、また一歩と距離を離していく。


 ケモノの速度と力が身体で覚えたら、逆にどうすれば受け流し防ぐのかも分かってきた。


 少しずつケモノとの距離を突き放す。


「このまま、逃げ切れるか」

 

 森の中で、木々の間を縫うようにして逃げる。

 

 ケモノとの距離も取り、完全にまいたとホッと一息つこうとした。

 

 そのとき――

 

 思わず、脚を止めてしまった。

 

 熱い視線を感じる。ケモノに追いかけれていることを忘れてしまうほどに。そんな強烈な圧力を感じさせる視線。。言ってしまえば、殺意のようなモノ。

 

 思わずカイトは振り返ってしまう。

 

 そこにあったのは――。

 

 燃えるような深紅の瞳だった。

 

 向けられている瞳は、紅色。それも濃い赤だった。炎のように激しく燃えるわけでもなく、それでいて深く静かで、内に熱がこもっているような……そんな深紅の瞳。熱のこもっている石炭に近い感じもする。

 

 視線で射貫かれた。いや、焦がされた。その視線の熱はカイトにも映るほどで、まるで芯まで全て燃やしつくしてしまうほどだ。


(あれ? ん?)


 そうして空気がない肺が、一斉に動き出す。

 呼吸を忘れてしまった。そこでカイトはようやく、自分が圧迫されていたことに気が付いた。

そこで、一つ確信したことがある。


 だから、ポロっと言葉が落ちた。


「……あんたが大将か?」

 

 やっと出た言葉に、深紅の瞳の主はニヤリと笑う。


「あぁ、そうだとも」

 

 月夜に照らされて、その主の姿が明らかになる。

 

 銀白色の長髪。月夜に照らされて、煌めいている。彼女が長身のせいもあってか、髪が横に流されている様が、天の川のようだ。


 そしてその煌めきには、褐色の肌が寄り添っている。それはひっそりとしていて、彼女の銀髪を際立たせていた。


 でも、やはり目を引くのは……この紅い瞳だ。


 まるで金縛りにあったようだった。

 睨まれただけで、思わず脚を止めてしまうほどに。それほどに、彼女の瞳から強いプレッシャーを感じる。それほどの力がった。


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