ケモノの数は増え、またもやピンチっ!
そんなラムザがポツリと、息を吐くようにして弱音を漏らした。
「……でもこれ以上増えると、少し厳しいものがありますか」
「えっ、このまま行かねぇか? ラムザの兄貴に、負けたくありませんねぇっ!」
「かなりいますよ? もう五〇に増えているんじゃないですか?」
「えっ、そんなにっ!」
隊員たちは、突撃しようとする足を無理にでも止めた。
ラムザから言われて初めて分かった。
数が減っていない。隊員たちがそれこそ、一人一頭以上狩っているのに、だ。
それどこか増えている。
隊員たちがどれだけ倒しても、どこからともなくケモノが現れていく。
「ここが、退き時です」
「せっかく気持ち良くなってきたのになぁっ!」
「まだ戦う機会はありますよ。それにカイト殿も言ってたでしょう?」
「ん、何をです?」
「一番重要なことは、生き延びること、だと」
「……分かりましたよ。ラムザの兄貴」
隊員たちは皆頷いて、懐に手を伸ばした。
「皆のモノ、退散っ!」
そうして、煙玉を地面に爆散させた。
煙が辺り一面に広がる。
「ガルルッ!」
ケモノたちは一瞬怯んだように見えた。
煙だけでなく、キツイ匂いもあった。
唐辛子の粉末を詰めて、更に油も詰めているので、ケモノに肌に張り付いて離れない。嗅覚が鋭いケモノにとって、これ以上のないダメージだった。
けれど、それはラムザたちも例外ではなかった。
「は、肌がヒリヒリしますっ!」
「さすが、ユリアーネの姉御ぉっ! でも、強く作り過ぎだっ! 熊よけとか、そんなのに使う奴だからかぁっ!」
そうして、隊員たちは煙を潜り抜けて、ラムザがぴゅぅと口笛を吹いた。
林に潜めていた馬が、ラムザたち目掛けて突っ込んできた。
「皆の者、退散ですっ!」
「応っ!」
すぐ馬に乗り込み、隊員たちは一斉に駆け出した。
煙玉に怯んでいたケモノも立て直したようで、こちらに物凄い速さで駆けってくる。
「うわっ、もうきやがった」
「後ろを振り向かないで下さいっ!」
「そうはいってもなぁ、ヤバいなぁっ!」
ケモノが馬の後ろに、もうピッタリとくっついてきた。
もう食いつきそうなところで、
「うおぉぉぉぉっ!」
槍を払い、必死に牽制する。
しかしそれも空しく、次々とケモノが追いかけてくる。五〇以上のケモノに追われているのだから、隊員たちは気が気じゃない。
このままでは、やられるとそう思ったとき――。
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