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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
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ケモノの数は増え、またもやピンチっ!

 そんなラムザがポツリと、息を吐くようにして弱音を漏らした。


「……でもこれ以上増えると、少し厳しいものがありますか」

「えっ、このまま行かねぇか? ラムザの兄貴に、負けたくありませんねぇっ!」

「かなりいますよ? もう五〇に増えているんじゃないですか?」

「えっ、そんなにっ!」


 隊員たちは、突撃しようとする足を無理にでも止めた。

 

 ラムザから言われて初めて分かった。


 数が減っていない。隊員たちがそれこそ、一人一頭以上狩っているのに、だ。


 それどこか増えている。


 隊員たちがどれだけ倒しても、どこからともなくケモノが現れていく。


「ここが、退き時です」

「せっかく気持ち良くなってきたのになぁっ!」

「まだ戦う機会はありますよ。それにカイト殿も言ってたでしょう?」

「ん、何をです?」

「一番重要なことは、生き延びること、だと」

「……分かりましたよ。ラムザの兄貴」

 

 隊員たちは皆頷いて、懐に手を伸ばした。


「皆のモノ、退散っ!」

 

 そうして、煙玉を地面に爆散させた。

 

 煙が辺り一面に広がる。


「ガルルッ!」

 

 ケモノたちは一瞬怯んだように見えた。


 煙だけでなく、キツイ匂いもあった。

 唐辛子の粉末を詰めて、更に油も詰めているので、ケモノに肌に張り付いて離れない。嗅覚が鋭いケモノにとって、これ以上のないダメージだった。


 けれど、それはラムザたちも例外ではなかった。


「は、肌がヒリヒリしますっ!」

「さすが、ユリアーネの姉御ぉっ! でも、強く作り過ぎだっ! 熊よけとか、そんなのに使う奴だからかぁっ!」

 

 そうして、隊員たちは煙を潜り抜けて、ラムザがぴゅぅと口笛を吹いた。

 

 林に潜めていた馬が、ラムザたち目掛けて突っ込んできた。


「皆の者、退散ですっ!」

「応っ!」

 すぐ馬に乗り込み、隊員たちは一斉に駆け出した。


 煙玉に怯んでいたケモノも立て直したようで、こちらに物凄い速さで駆けってくる。


「うわっ、もうきやがった」

「後ろを振り向かないで下さいっ!」

「そうはいってもなぁ、ヤバいなぁっ!」

 

 ケモノが馬の後ろに、もうピッタリとくっついてきた。

 

 もう食いつきそうなところで、


「うおぉぉぉぉっ!」

 

 槍を払い、必死に牽制する。

 しかしそれも空しく、次々とケモノが追いかけてくる。五〇以上のケモノに追われているのだから、隊員たちは気が気じゃない。


 このままでは、やられるとそう思ったとき――。

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