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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
35/60

さぁ、反撃開始だっ!——赤髪の青年編

「ラムザの兄貴っ! 数が一〇以上いやがるぜぇっ!」

「ははっ、むしろ三倍以上に増えてますね」

「なんで嬉しそうななんだがなっ!」


 およそ三〇。

 それが、ラムザたちを囲んでいるケモノの数。潜伏していたケモノたちが、わらわらとラムザを囲っては、猛攻を仕掛けている。

 

 そんな最中、隊員たちの中から、愚痴のようなため息が漏れた。


「でも、副隊長は余裕そうでいいな」

「とかいって、誰も欠けてない。さすがは皆のモノ、流石ですな」

「隊長の稽古のせいでなぁ。もう頭でやるよりも、身体で覚えちゃってるぜぇ」

 

 考えなくても、身体が勝手に動く。

 無駄口を叩こうが、しっかりとケモノの動きに身体が付いて行ってる。それは地獄のような稽古の成果だったのだから。

 

 それに、このケモノのスピードと数だ。

 今や、隊員たちは目で追うことしていない。この速さと数なのだから、見てからでは間に合わない。受けることも、避けることもなく、突撃されしまう。


 だからこそ、視覚だけじゃない。

 五感以外にも、第六感もフルに使う。聴覚や嗅覚以外にも、感覚とセンスも使っていく。

 

 ふと赤髪の青年の前から、ケモノが消えた。

 

 足音すらもない。ケモノは足音を消すのが上手い。こんなに駆け回っているのに、最小限の足音しか残していかない。

 だけど、匂いや気配は感じる。


「右なんだよなぁ」

 

 迷わず槍を振ったら、そのまま突撃してきたケモノに直撃した。

 

 鈍い音を立てるも、カチンと弾かれる。


 そんな瞬きすら許されない刹那でも、身体を捻ってまた別方向への防御に備えていた。


 それは、一瞬の隙さえを無くすために。

「ガルルッ!」

 

 左側から、ケモノの唸り声が聞こえる。足音も。


 けど、殺気は背後から感じられた。潜むようにして、忍ぶような気配もだ。

 

 だから、ただ後ろに身体を捻って、渾身の一撃を振り下ろしていた。


「ギャアアアアアアアアッ!」

 

 そこには、ケモノの唸り声があった。

 

 そして、息絶えた姿もだ。


 弾かれたまま、思いっきり叩き斬ったので、あの鉄のように固い頭でも叩き斬って見せたのだ。


「ラムザの兄貴、参考にさせてもらったぜぃっ!」

 

 そう言ってから、隊員は他と距離を取るように後退した。


「よしっ! 俺でも、なんとか倒せましたぜぇっ!」

 

 そうして勝ち誇っていると、別の方向からも隊員からの声が聞こえてきた。


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