さぁ、反撃開始だっ!——赤髪の青年編
「ラムザの兄貴っ! 数が一〇以上いやがるぜぇっ!」
「ははっ、むしろ三倍以上に増えてますね」
「なんで嬉しそうななんだがなっ!」
およそ三〇。
それが、ラムザたちを囲んでいるケモノの数。潜伏していたケモノたちが、わらわらとラムザを囲っては、猛攻を仕掛けている。
そんな最中、隊員たちの中から、愚痴のようなため息が漏れた。
「でも、副隊長は余裕そうでいいな」
「とかいって、誰も欠けてない。さすがは皆のモノ、流石ですな」
「隊長の稽古のせいでなぁ。もう頭でやるよりも、身体で覚えちゃってるぜぇ」
考えなくても、身体が勝手に動く。
無駄口を叩こうが、しっかりとケモノの動きに身体が付いて行ってる。それは地獄のような稽古の成果だったのだから。
それに、このケモノのスピードと数だ。
今や、隊員たちは目で追うことしていない。この速さと数なのだから、見てからでは間に合わない。受けることも、避けることもなく、突撃されしまう。
だからこそ、視覚だけじゃない。
五感以外にも、第六感もフルに使う。聴覚や嗅覚以外にも、感覚とセンスも使っていく。
ふと赤髪の青年の前から、ケモノが消えた。
足音すらもない。ケモノは足音を消すのが上手い。こんなに駆け回っているのに、最小限の足音しか残していかない。
だけど、匂いや気配は感じる。
「右なんだよなぁ」
迷わず槍を振ったら、そのまま突撃してきたケモノに直撃した。
鈍い音を立てるも、カチンと弾かれる。
そんな瞬きすら許されない刹那でも、身体を捻ってまた別方向への防御に備えていた。
それは、一瞬の隙さえを無くすために。
「ガルルッ!」
左側から、ケモノの唸り声が聞こえる。足音も。
けど、殺気は背後から感じられた。潜むようにして、忍ぶような気配もだ。
だから、ただ後ろに身体を捻って、渾身の一撃を振り下ろしていた。
「ギャアアアアアアアアッ!」
そこには、ケモノの唸り声があった。
そして、息絶えた姿もだ。
弾かれたまま、思いっきり叩き斬ったので、あの鉄のように固い頭でも叩き斬って見せたのだ。
「ラムザの兄貴、参考にさせてもらったぜぃっ!」
そう言ってから、隊員は他と距離を取るように後退した。
「よしっ! 俺でも、なんとか倒せましたぜぇっ!」
そうして勝ち誇っていると、別の方向からも隊員からの声が聞こえてきた。
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