敵に囲まれて、ピンチっ!
あのケモノに勝てる。
そう、他のモノにも思わせることができたのだから。
「さぁて、ケモノどもっ! 次は俺の番だぜぇっ!」
「おうおう、行くぞ行くぞっ!」
他のモノも、自らを鼓舞するように吠えた。
そうして、また一つとケモノが現れると――。
今度は、若い二人組の隊員たちが斬りこんでいった。
「俺たちも、副隊長に負けてられねぇっ!」
「突撃するぞ、おらっ!」
常に二対一の状況を作る。
一人は槍で正面から斬りこんで、相手を釘付けにして――。
そしてもう一人は、横に回り込んで、即座に槍で薙ぎ払う。
「よっしゃ、直撃っ!」
ケモノの防御が間に合わず、側面からの攻撃が通る。
しかし――。
「ガルルルッ!」
「やべっ!」
渾身の一撃が、弾かれた。
まるで、巨大な岩のようにビクともしない。
ケモノは、何ともなさそうにして、攻撃を受けたまま飛び退いていた。
「くそぉ、全く刃が通らねぇ」
「ハハ、ラムザの兄貴に負けてらんねぇぜ」
それでも負けじと。ケモノを追って駆ける赤髪の青年が一人。
他の隊員たちは、もう分かっていた。
ケモノの速度を、体感で感じ取っていた。あのラムザの戦闘で、だ。他の隊員も、ラムザ同様に地獄のような鍛錬を乗り越えてきた同士なのだから。
(今、この瞬間なら追いつけるぜぇっ! その速さからして、後二歩程度。なら一歩目で地面を強く蹴り上げ、それと同時に思いっきり薙ぎ払えばいいっ!)
「おりゃっ!」
駆ける勢いのまま、その胴を薙ぎ払おうとすると――。
視界の端に、凄まじい勢いで向かってくる影が現れた。
跳躍したせいで、地面から足が離れてしまっているッ!
このままでは直撃ッ!
だから攻撃が向かってくるその瞬間、咄嗟に身体を捩じらせ、矛先の軌道を変える。ギリギリの所で刃が届くも、勢いを殺せずそのまま――。
「危ないですっ!」
「ガルッ!」
ラムザが咄嗟に槍を振り下ろし、死角から突撃してきたケモノの軌道を変えた。
「ありがとな、ラムザの兄貴っ!」
「おいおい、一匹じゃねぇのかよ」
「……いや、まだいるぜぇ」
ケモノがまた一匹。
いや、ぞろぞろと現れた。
視界に捉えられるだけでも。
その数、一〇体ほど。
ラムザたちは、ケモノに囲まれていた。
「ははっ、そうこなくっちゃな」
「ラムザの兄貴だけに狩られちゃぁ、俺たちの取り分もなくなるしよぉ」
「そうじゃの、今度はワシらの出番じゃな」
今や、乱戦状態。
ケモノと傭兵共が駆け回り、お互いの武器が衝突し合う。
そうして、五〇人ほどいる傭兵は、ケモノ一〇体たちと対峙した。
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