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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第三章 ケモノの軍団VSヴァリバルト傭兵団っ!
33/60

敵に囲まれて、ピンチっ!

 あのケモノに勝てる。


 そう、他のモノにも思わせることができたのだから。


「さぁて、ケモノどもっ! 次は俺の番だぜぇっ!」

「おうおう、行くぞ行くぞっ!」

 

 他のモノも、自らを鼓舞するように吠えた。

 

 そうして、また一つとケモノが現れると――。

 

 今度は、若い二人組の隊員たちが斬りこんでいった。


「俺たちも、副隊長に負けてられねぇっ!」

「突撃するぞ、おらっ!」

 

 常に二対一の状況を作る。

 

 一人は槍で正面から斬りこんで、相手を釘付けにして――。

 

 そしてもう一人は、横に回り込んで、即座に槍で薙ぎ払う。


「よっしゃ、直撃っ!」

 

 ケモノの防御が間に合わず、側面からの攻撃が通る。

 

 しかし――。


「ガルルルッ!」

「やべっ!」

 

 渾身の一撃が、弾かれた。


 まるで、巨大な岩のようにビクともしない。


 ケモノは、何ともなさそうにして、攻撃を受けたまま飛び退いていた。


「くそぉ、全く刃が通らねぇ」

「ハハ、ラムザの兄貴に負けてらんねぇぜ」

 

 それでも負けじと。ケモノを追って駆ける赤髪の青年が一人。


 他の隊員たちは、もう分かっていた。

 

 ケモノの速度を、体感で感じ取っていた。あのラムザの戦闘で、だ。他の隊員も、ラムザ同様に地獄のような鍛錬を乗り越えてきた同士なのだから。


(今、この瞬間なら追いつけるぜぇっ! その速さからして、後二歩程度。なら一歩目で地面を強く蹴り上げ、それと同時に思いっきり薙ぎ払えばいいっ!)


「おりゃっ!」

 

 駆ける勢いのまま、その胴を薙ぎ払おうとすると――。

 

 視界の端に、凄まじい勢いで向かってくる影が現れた。

 

 跳躍したせいで、地面から足が離れてしまっているッ!


 このままでは直撃ッ!


 だから攻撃が向かってくるその瞬間、咄嗟に身体を捩じらせ、矛先の軌道を変える。ギリギリの所で刃が届くも、勢いを殺せずそのまま――。


「危ないですっ!」

「ガルッ!」

 

 ラムザが咄嗟に槍を振り下ろし、死角から突撃してきたケモノの軌道を変えた。


「ありがとな、ラムザの兄貴っ!」

「おいおい、一匹じゃねぇのかよ」

「……いや、まだいるぜぇ」

 

 ケモノがまた一匹。

 

 いや、ぞろぞろと現れた。

 

 視界に捉えられるだけでも。

 

 その数、一〇体ほど。

 

 ラムザたちは、ケモノに囲まれていた。


「ははっ、そうこなくっちゃな」

「ラムザの兄貴だけに狩られちゃぁ、俺たちの取り分もなくなるしよぉ」

「そうじゃの、今度はワシらの出番じゃな」

 

 今や、乱戦状態。

 

 ケモノと傭兵共が駆け回り、お互いの武器が衝突し合う。

 

 そうして、五〇人ほどいる傭兵は、ケモノ一〇体たちと対峙した。


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