さぁ、反撃開始だっ!――ラムザ編
「えぇ、そうですね」
カイトとの、鍛錬の日々がフラッシュバックしていた。
厳しい日々だった。
それも血反吐を吐くほどに。技術面や心構えなどを、鍛錬を通りして学んだ。地に伏しても、決して槍を離さなかった。そういう毎日だった。
それでも、もっと強い奴がいる。
このケモノもそうだ。力もスピードも、間合いの把握も、全てラムザよりも勝っている。あの鍛錬でも、敵わない敵もいる。
既に、ケモノは攻撃に転じていた。
もう様子見もない。
攻撃を繰り出す、一定の間合いも読まれてしまっている。
だかこそ躊躇なく、連続で、しかも恐ろしく早い猛攻を繰り出しているのだ。
でも、この状況ですら――。
ラムザは笑っていた。
あの人は、いつも最後に一番重要なことを教えてくれる。
だからこそ、血の滲むような鍛錬にも付いてきた。
「だからこそ、どんな敵でもっ! 最後まで、諦めずに立ち向かえられますっ!」
そうしてラムザは、ケモノの目掛けて突きを繰り出した。
「ら、ラムザっ」
「まさか……副隊長から仕掛けた」
咄嗟に周囲のモノが叫ぶも、もう後の祭りだった。
これも読まれているのだろう。
相手は間合いの達人だ。今までの攻撃で、身体を軸に動かす軌道は全て把握されている。
だからこそ、その突きと同時に相手の懐に飛び込めば――。
突き出した槍の穂先を横から叩かれ、ラムザの身体が僅かに傾いた。
このままでは————。
横から回り込まれ、鈍い音と共に、ラムザは吹っ飛ばされる。
最初にケモノと対峙した時と、同じだ。
誰もがそう予想した。突く瞬間を狙われて、体勢を崩したところから、攻められる。そんな同じ光景を、周りにいた誰もが想像してしまった。
やられるっ!
そう誰もが、思わず目を瞑ってしまいそうになった。
しかし……。
あのケモノが、真っ二つに叩き切られていた。
これには、周囲にいたものもどよめいた。
「な、バカな……攻撃が防がれたのに、なんでケモノを叩き切れるんだ」
「生きるか、死ぬなんて……最後まで分からないものなんですよ」
そうして、ラムザは槍でケモノの血を払いのける。
「最後まで、諦めずに立ち向かう。これは、カイト殿に教わったことです。どんな状況でも、勝敗なんて最後の最後で決まる。だからケモノとはいえ、あそこで勝利を確信してまった。それがあなたの敗因です」
槍の穂先を叩かれた瞬間——。
ぐるっと、槍が一回転した。
まるで反動を利用するように。
そのまま槍の切っ先がケモノの横腹に目掛けて叩き切ったのだ。
それは、一瞬だった。
あのケモノでさえも躱すことできないほどに。
ケモノが槍を払った後では防御も間に合わず、その横腹に直撃していた。
そうして、あのケモノは真っ二つに両断されていたのだ。
それは、まさしく真剣勝負だった。
お互いの命を賭けての、殺し合い。
最後の最後まで、勝負の行方が分からないほどに。
「まずは、一歩ですね」
まだ……遠い。
少しはあの人に近づけただろうか。この緊迫とした一線を乗り越えたことで、また一歩と。それが千歩の中の一歩であったとして、だ。
そう、まだまだ戦いは始まったばかり。
だからこれは、ほんの一歩に過ぎない。だけどその一歩が時には力にもなる。
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