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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第一章 剣×狼
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ヴァリバルト傭兵団——(ラムザ・副隊長)

 ――ひょう。

 と、鋭い音がケレンの横を駆け抜けた。


 何かと思い、思わずケレンは後ろを振り向いた。


 矢がオオカミの脳天に突き刺さっていた。

 僅かに弓なりに弾道を描いた矢は、一頭のオオカミの脳天を貫いてに突き刺さって……いや矢が突き刺さったまま身体ごと宙を舞った。 


 あまりの突然のことで、理解が追い付かなかった。

 オオカミは悲鳴をあげる間もなく地に伏し、しかし目には闘志が宿っていた。

 未だに自分が射貫かれたことを気づいていないのだろうか。それはケレンたちも同様で、どこからか矢が放たれたのか分からなかった。


 そして聞こえてくるのは、響く蹄の音。その重厚な音に、、猛々しさを感じる。その馬の大群には力強さが宿っているようだ。


 何頭もの馬の軍勢が、少年たちを取り囲んだ。


「迷子になったという子は、お主らかっ!」

「は、はいっ!」

「離れていなさい、もう大丈夫だっ」


 その男は屈強だった。

 彼は褐色の肌で、スキンヘッドでガタイもよく、服の上からでも鍛えられているのが分かる。その姿はまさに歴戦の戦士そのものだった。


 その屈強な戦士に、周りの兵が指示を仰ぐ。


「ラムザ副隊長っ、どうしますかっ‼」

「長槍を構えて整列しなさいっ! 一匹たりとも後ろに逃がすなっ!」


 彼が馬を降り槍を携えると、後の者もそれに続いた。

 それは、横に伸びた陣形。槍を構えて隊列を組み、お互いの間に一寸の隙間もない。まるで巨大な壁のようなもので、正面から突撃する意志さえも削いでしまう。


 そうしてオオカミが横から回り込もうとすると、


 「右に六、左に一〇、人員を回せっ! オオカミと対峙する面をできるだけ平にしろっ! 側面から押し込まれないよう注意しろっ!」


 オオカミが横から回り込もうとするも、すぐに陣形を変えて対応する。どうやら、あの屈強の男が指示を出しているらしい。


 筋肉質で、武闘派に見える彼だが、それだけはないらしい。彼自身が前線に立っていても、周囲が見えており、的確に指示を出していた。彼は知識も豊富で、戦術にも長けていた。


「す、凄いっ……!」


 キラキラとした眼差しを、少年たちは屈強な男に向ける。

 颯爽とかそんな感じは全くないが、パワフルな動きでオオカミを薙ぎ倒していく。窮地に陥った時に助けてくれた、それだけで少年たちにとっては歴戦の英雄だった。


「おい坊や、ここは危ないって言っただろ! 後ろに下がっていろっ!」

「は、はいっ!」


 補給部隊の一人が、ケレンに声を掛ける。


 後方では補給部隊が荷を起こし、簡易的な防衛ラインを築いていた。


 そんな中、ラムザは前線にいながら指示を出していた。


「前に出て、我先にという蛮勇になど飲まれるなっ! 落ち着いて、冷静に、オオカミを食い止めることだけを考えましょう! なに、カイト殿が来るまでの辛抱ですっ!」

「……カイト殿?」


 他にも屈強な戦士がいるのかと、少年たちは目を輝かせた。


 あの一薙ぎでオオカミどもを蹴散らす男が、だ。

 カイトという人に、とてもつなく信頼を寄せている。もっと凄い屈強な男が現れるのではないかと、少年たちは期待してしまった。


面白いと思って頂けた方は、ブックマークや評価をして頂けると幸いです!


何卒宜しくお願い致します。

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