目深にフードを被った謎の二人
「ふぅん、お忍びで来ていたけど……面白いところに出くわしてしまったわね」
「面白い? ヤバいじゃなくてか?」
広場の集会を、離れていた所から見ていた。
そんな男女が二人。フードを目深に被って顔も分からないが、明らかに女性は楽しんでいて、隣にいる男性は呆れたようにため息をついた。
「だってそうよね? ヴァリバルト傭兵団の戦力が知りたくて、こんな南方の港まで足を運んできたのよ。こうじゃなくては、困るの」
「まっ、確かに。そうだけどさ」
そうして、二人の男女は遠巻きに、中心になって指揮するユリアーネを見た。
「皆、だんだら模様の羽織を着てっ!」
浅黄色にだんだら模様の羽織。それは戦闘衣装。ヴァリバルト傭兵団が決死の覚悟を示すときに着る羽織だった。
それを見た住人は、途端に叫び合った。
「おい、あのヴァリバルト傭兵団がっ! あの死装束をっ!」
「あの死を恐れない奴らがっ! それほどヤバいってことかっ!」
「おい、逃げるぞっ! 他の奴らにも、言って回らないとっ!」
たちまち周囲にいた住人は、蜘蛛の子散らすように散って、必死な表情で逃げる支度をした。
「死装束……⁉ なんか納得いかないですけどっ! まぁ、説明して回る手間が省けたからいいですけどっ!」
ユリアーネは、肺に詰めた空気を全部ため息で出す。
それから隊員たちに指示しながら駆けっていった。
「スゲェな。迫真だったぞ、周りにいた人たち」
「それくらいイカレっるってことよ。見ものじゃない、今後のことが」
「ほら、俺たちも避難するぞっ!」
「えぇ、そうね」
そうして、目深にフードを被った二人は去っていった。
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