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蒼穹のイカロス  作者: レイチェル
第二章 ウバルト王国 海岸沿いの街:シモーネ
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これがヴァリバルト傭兵団の珍解答っ!——③

「いや言ってないけど、なんだかそんな雰囲気じゃん。頼んでもないのに、どんどん肉がでてくるんだよ」

「だからカイト殿、食べてたんですね」

「もぐもぐもぐ……頼んでないものに、お金は払わなくてもいいでしょ?」

「つまり、貰い物ですか。店のモノがなくなるまで食い尽くしましょう」

「あぁ、席に早く戻れっ。全部、食べちゃうぞ」

「はーいっ!」

「「……もぐもぐ」」


 呑気に肉を食べ始めたカイトとラムザ。

 

 店主は呆れて物も言えなくなってしまった。

 

 こいつ等は、ただ生き延びたいわけじゃない。


 本来、命を優先するなら、コソコソひっそりとしてればいい。領主が来れば、関わらないように戸を締めればいい。それだけでいい。

 

 でも、カイトたちは違う。

 自分の命を勘定に入れていない。目的達成のためなら、自分の命は二の次だ。他の命は優先するのに、自分だけはどこか別と考えている。

 

 狂っている。

 自分の命を、髪の毛一本程しか思っていない。それは当たり前のことで、あんな事があったのに、呑気に飯なんかを食べている。

 

 つまり、こいつらは異常なのだ。


 命を懸けることが当たり前だと思っている。


 そして、それはこいつらの日常なのだ。


「うん店主、腕を上げたなぁ。前来たよりも美味しくなってるよ。手をかけて、肉の灰汁を抜いているのが分かる」

「そうですか? 他人から奢って貰った肉は、美味しいといいますし、それだと思いますよ?」

「それかぁ、分かる」

「えぇ、きっとそうですよ」

「「もぐもぐ」」


(つーか、いつまで食ってやがるッ)

 

 カイトとラムザが、いつも通りで店主の方もイラつてきた。

 

 これでは、心配損だ。あのときも店主は、ハラハラしていたのに……。


 ラムザが領主に杖で殴られている時、店主も領主の前で頭を下げようとしていた。ラムザの罪を軽くするために、跪き一緒に殴られよう、と。


 だから必死の決意で、店主も覚悟していた。


 だが、こいつらにとっては違う。

 

 それを、このカイトとラムザは、いつものことだと笑って過ごしている。自分の覚悟を、当たりのことだとバカにされた気分だ。


 そんな二人に対して、店主の感情は爆発した。


「お前らッ、ふざけんじゃねぇッ……‼」

 

 店主がドンとテーブルをぶっ叩く。

 

 これには、カイトとラムザも食べるのを止めた。


「人が心配していたのに、呑気に飯なんか喰いやがってッ! 自分の命をなんだと思ってやがるッ!」

 

 それに対して、ラムザは冷静になって対応した。


「そりゃ、命は大切です。そのための覚悟です」

「その中には、テメェの命は入っているのか?」

「——」

「もっとコソコソ生きてればいい。それなのに、余計な事ばっかしやがってッ。今回のこともだ。自分の命が危険に晒されたら逃げるんだよ、普通そうだろッ!」

「……なるほど」


 普通なら当たり前のことなのに、カイトは口をあんぐり開けて感心していた。

 

 この男、そういう考えは一切なかったっらしい。


「領主の嫌がらせを無視すればいいと言ってたけど……実際は全く別のことをしていたか」

「そうだッ、お前自身が教えを守ってねぇじゃねぇかッ!」

 

 ぜぃぜぃと肩で息をする店主。怒鳴るのも、体力を消耗する。怒鳴ったせいか、口の中の空気はなくなり、喉がカラカラだった。

 

 店主は、適当にテーブルにあった水を飲み干す。


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