これがヴァリバルト傭兵団の珍解答っ!——③
「いや言ってないけど、なんだかそんな雰囲気じゃん。頼んでもないのに、どんどん肉がでてくるんだよ」
「だからカイト殿、食べてたんですね」
「もぐもぐもぐ……頼んでないものに、お金は払わなくてもいいでしょ?」
「つまり、貰い物ですか。店のモノがなくなるまで食い尽くしましょう」
「あぁ、席に早く戻れっ。全部、食べちゃうぞ」
「はーいっ!」
「「……もぐもぐ」」
呑気に肉を食べ始めたカイトとラムザ。
店主は呆れて物も言えなくなってしまった。
こいつ等は、ただ生き延びたいわけじゃない。
本来、命を優先するなら、コソコソひっそりとしてればいい。領主が来れば、関わらないように戸を締めればいい。それだけでいい。
でも、カイトたちは違う。
自分の命を勘定に入れていない。目的達成のためなら、自分の命は二の次だ。他の命は優先するのに、自分だけはどこか別と考えている。
狂っている。
自分の命を、髪の毛一本程しか思っていない。それは当たり前のことで、あんな事があったのに、呑気に飯なんかを食べている。
つまり、こいつらは異常なのだ。
命を懸けることが当たり前だと思っている。
そして、それはこいつらの日常なのだ。
「うん店主、腕を上げたなぁ。前来たよりも美味しくなってるよ。手をかけて、肉の灰汁を抜いているのが分かる」
「そうですか? 他人から奢って貰った肉は、美味しいといいますし、それだと思いますよ?」
「それかぁ、分かる」
「えぇ、きっとそうですよ」
「「もぐもぐ」」
(つーか、いつまで食ってやがるッ)
カイトとラムザが、いつも通りで店主の方もイラつてきた。
これでは、心配損だ。あのときも店主は、ハラハラしていたのに……。
ラムザが領主に杖で殴られている時、店主も領主の前で頭を下げようとしていた。ラムザの罪を軽くするために、跪き一緒に殴られよう、と。
だから必死の決意で、店主も覚悟していた。
だが、こいつらにとっては違う。
それを、このカイトとラムザは、いつものことだと笑って過ごしている。自分の覚悟を、当たりのことだとバカにされた気分だ。
そんな二人に対して、店主の感情は爆発した。
「お前らッ、ふざけんじゃねぇッ……‼」
店主がドンとテーブルをぶっ叩く。
これには、カイトとラムザも食べるのを止めた。
「人が心配していたのに、呑気に飯なんか喰いやがってッ! 自分の命をなんだと思ってやがるッ!」
それに対して、ラムザは冷静になって対応した。
「そりゃ、命は大切です。そのための覚悟です」
「その中には、テメェの命は入っているのか?」
「——」
「もっとコソコソ生きてればいい。それなのに、余計な事ばっかしやがってッ。今回のこともだ。自分の命が危険に晒されたら逃げるんだよ、普通そうだろッ!」
「……なるほど」
普通なら当たり前のことなのに、カイトは口をあんぐり開けて感心していた。
この男、そういう考えは一切なかったっらしい。
「領主の嫌がらせを無視すればいいと言ってたけど……実際は全く別のことをしていたか」
「そうだッ、お前自身が教えを守ってねぇじゃねぇかッ!」
ぜぃぜぃと肩で息をする店主。怒鳴るのも、体力を消耗する。怒鳴ったせいか、口の中の空気はなくなり、喉がカラカラだった。
店主は、適当にテーブルにあった水を飲み干す。
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