今後の方針——①
そんな中、カイトは立ち上がった。
「さてと、ケモノ退治でも行きますか。残党がいないか見てくるよ」
「ここで休まれないのですか?」
「敵は待ってくれないからね」
「全く、戦闘狂ですね」
カイトは、ズボンをパンパンと払いその場を後にしようとするも、思い出したかのようにラムザに向かって言った。
「ラムザ……今日の件は反省したほうがいいよ。さっきの戦いはなっちゃいなかった」
「……はい」
先ほどのケモノとの戦闘のことを言っているのだろう。
冷淡に、カイトは言い放つ。
「槍捌きって、単純だからね。僕の言ってること、分かる?」
「はい、分かります」
「うん、ケモノに懐を突かれた。また次もそうされる……そうなったら?」
「えぇ、分かってますとも。私にも考えがあります」
「うん、ならいいんだ」
そこでカイトは柔らかい笑みを浮かべた。それはまるでラムザ自身に考えさせている師匠の顔だった。弟子を褒めるように、クスっと笑う。
そんな様子も見て、ユリアーネは子供のように頬を膨らませた。
「なんか二人でも通じ合ってるみたいでズルい。私もちゃんと物見役してたのにっ!」
「ごめんって、ユリアーネもお疲れ様」
「その、物見の調子はどうなのですか? 何か分かりましたか?」
「う~ん、かなりヤバいねぇ。私たちが確認しただけでも、あのケモノが複数確認できたかな。まぁ近づいたら速攻バレるから、数までは把握してないけどね」
「それが分かっただけでも、いい収穫だ」
「……役に立ってないかな?」
「ケモノは他と比べて、探知能力が発達しているし。それは野生のものと同等か、それ以上だと思うよ。見つからないことが一番重要、いい仕事したねユリアーネ」
「やった、隊長に褒められちゃった」
しかし喜ぶのも束の間、申し訳なさそうに、ユリアーネはケレンの頭を撫ぜた。
「……でも怖い想いをさせちゃったなぁ。この子たちには、今さっき合流したようにいったけどさ。森に迷い込んでいるのは、知ってたからさ」
そう、ユリアーネからの伝令で、カイトたちは森に向かったのだ。そうでなくては、その正確な位置まで分かるわけがない。だからこそ、カイトたちは間に合ったのだ。
「私たち物見役だけで、本当は救助したかったんだけど……ケモノの縄張りに入っちゃったみたいで……私たちだけでは対応できなかったし。だから隊長たちに急いで伝令を送ったんだけど」
「むしろ、それで良かったんだ。最悪のパターンは、無作為に突っ込んで全滅させられること」
「よく我慢しましたな……歯がゆい思いもしたでしょうに」
カイトたちの言葉に救われたように、そっとユリアーネは胸を撫でおろした。
今まで、気が気じゃなかったのは、ユリアーネの方だ。
今回カイトたちが間に合ってたから良かったものの、到着が遅れたら彼女の性格上、絶対ケモノと対峙していたに違ないない。最悪、自分を犠牲にしてまでも……。
そこをギリギリまで我慢した彼女を、カイトとラムザは手放しで褒めた。
と、カイトは表情を引き締めてユリアーネに聞いた。
「でもそうか。やっぱりケモノの数は多くなっているんだよね?」
「うん、日に日にね。ねぇ、結構ヤバい状況じゃない? なんか一気に攻められるような気がする」
「あのケモノの被害も増えてますからね。アレが一斉に責められたら……想像するだけで怖いです」
「誰かしら、あのケモノを手引きしている人間がいる……とは思うんだけどね」
「アレが野生で、ひょっこり現れた……というのは、無理があります。アレは人為的に作れらた兵器そのものです」
「自然界には存在しないバケモノだね」
確かに、あのケモノは驚異的だ。人ならざる力を持っている。
事実カイト以外、誰一人太刀打ちできなかったのだ。
しかもアレが一斉に襲い掛かってきたら、例え戦闘馴れしているヴァリバルト傭兵団でもひとたまりもないだろう。そう考えると、万が一も勝ち目がないように思える。
「カイト殿っ! 本当に大丈夫ですかっ!」
「ね、アレが一杯出てきたらヤバいじゃんっ!」
そんな脅威に怯えている、ラムザとユリアーネに対して、カイトは淡々と答えた。
「無理だね」
「「えぇっ⁉」」
そんなハッキリ言う隊長に対して驚くも、カイトはまるで他人事ように笑った。
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