焚火(戦闘後、皆で暖を取る)——①
ヴァリバルト傭兵団は、森の中で一夜を過ごすことにした。補修部隊が、オオカミの毛皮を剥いだり、肉を切り解体しているのに時間を要する為、この場に留まることになる。
しかし森の夜は寒い。
そこで、焚火をして、暖を取ることになった。
まずは小さな枝を集めて、火打石で引火させる。そして、徐々に大きな枝や小枝を追加してくと、あっという間に燃え盛る焚火が完成した。
そこにあったのは、温もりという安堵だった。
焚火の周りを皆で囲み、じんわりと暖かさを感じながら、飲み食いしながら談笑しあう。あの戦闘の後とは感じさせないくらい、ゆったりとした時間がそこには流れていた。炎の輝きや揺らぎに、心が癒されていくようだ。
「うわっ、あったけぇ……っ!」
「ケレンケレンっ! さっきバチってなった、バチって!」
「うるさいな、少しは大人しくしてろよ」
「むぅ、大人ぶりやがって」
そう言いつつケレンも、ほっとしていた。
純粋に、焚火を楽しんでいる子供たちとは少し違う。森の中での焚火は、夜の闇を照らす暖かな炎であり、とても幻想的に思えた。
(さっきまで、オオカミに追いかけられてたんだよなぁ)
この熱が生を実感させてくれる。
その熱さを感じながら、ケレンは心の中で「ありがとう」と神様に感謝する。今ようやく、自分が生きているのだと実感できた。この森の感じる焚火の温もりは、いつまでも忘れない思い出となるのだろう。
と、大柄な男の影が焚火に映し出される。
「お主ら、元気だな」
「あっ、ラムザのおっさんっ!」
ラムザが、少年たちの傍にどかっと座る。
その安心感たるや、半端ない。この男がいれば、どんな場所でも安全だと思えてしまう。それほどに、焚火の炎に照らされる彼の身体は、大きく見え、そして頼りがいがあった。
そんな彼が、少年たちに対して優しく微笑んでいる。
「あのな、お主ら。私まだ一七歳なのですよ」
「嘘、信じられないっ!」
「えぇ、このお兄さんのせいでハゲさせられました。このお兄さんといると、心労堪えなくて」
「ん? 僕のせい?」
対して、カイトという隊長は、串で焼かれたオオカミの肉を頬張っていた。
そこには隊長らしさの欠片もない。
大きな口を開け、頬張る様子は無邪気な子供みたいだった。さきほどの戦闘とはまた違って鋭さもない。今や、ただの普通の青年にしか見えなかった。
「もっと隊長としての自覚を持ってもらえれば」
「……もぐもぐもぐ」
「って、本当に呑気ですねっ! 私ばっかりですよ、貧乏くじ引かされてるのっ!」
「ラムザって、副隊長だけど……でもなんか、この傭兵団のお母さんみたいだよね」
「お、お母さんですか、そんなこと言われるなんて……。隊長のせいで、こんなこと言われてるんですからねっ!」
呑気に頬張っているカイトに対して、ラムザが必死に身体を揺すった。そう何度も揺すられても、カイトは食べることはやめず、一人口の中をもぐもぐさせた。
実際、ほとんどの運営はラムザに任せっきりになっている。ラムザのおかげで、このヴァリバルト傭兵団が成り立っている……と言っても、過言ではない。
装備や物資の補充はもちろんのこと、人員確保のための報酬や契約条件などの明確なルールも示したのも、ラムザだった。さらに報酬や福利厚生の配慮まで充実させていくなど、ラムザの手腕があって、このヴァリバルト傭兵団は大きくなっていった。
まるで他人事のような態度をとるカイトに対して、ラムザは抗議の声を上げる。。
「でもね、カイト殿。こういう運営は、きっかり二人でやろうって……最初にそう誓ったのに。全部、カイト殿は丸投げなんですからっ!」
「もぐもぐもぐ」
「くそっ、他人事だこの人っ!」
そんなカイトとラムザに、周囲の者はどっと笑った。どうやらいつものことらしく、恒例のやり取りになっているらしい。
と、後ろから黄色い声を掛けられる。
面白いと思って頂けた方は、ブックマークや評価をして頂けると幸いです!
何卒宜しくお願い致します




