3-6. 大火炎輪
その翌日、森の大火炎輪が燃え盛る。
リタもカリーヌもこの森に来て、これがはじめてだ。
はじめて内側から見る火炎輪は、凄い迫力だった。
「凄い光景ですが、意外に熱くは無いのですね」
「はい」
よく考えると、森の木が枯れていないのだから、熱風が広範囲に吹き荒れるわけではなく、
火炎輪の炎の真上以外は、そこまで熱くは無いのだろう。
そして、大火炎輪が発生する理由を知った。
「わしは死ぬのかもしれぬ」
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「わしはずっと病気だと思って居った」
「大人の女性にはあるのです」
「気を付けておっても発作が出るからおかしいと思っておったのじゃ。
こんなに苦しいのに病気ではないというのは信じられぬ」
「それにしても、これが大火炎輪の理由だったのですか」
「確かに、そんな噂もありましたが本当だとは思いません」
「魔女様、これをお使いください」
ここには衛生用品が全然足りない。
「魔女様、洗ってきますから起き上がらないでください」
「お嬢様、それは私がやりますので」
ところが魔女様は起き上がるなと言ってるそばから起き上がろうとする。
「トイレに行って参る」
「え、どうしましょう。カリーヌ、手を貸してさしあげて」
「……はい。では魔女様……」
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「魔女様、いつもはどのように過ごされていたのですか?」
「嵐が過ぎ去るのを待つのみであった」
確かに嵐、そんな感じであった。
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嵐が過ぎ去った。
外を見ると、大火炎輪が収まりつつある。
3人共げっそりだ。
魔女様はお婆様と暮らしたのは8歳まで。
魔女様にとっては月のモノは謎現象だった。
「病気では無かったのじゃな」
「それは病ではありません。女性なら誰だってありますよ……魔女様は特別大変そうな感じですが」
「はじめのころは、死ぬかと思って居った。
何年か経って、定期的に起きるが死なないことに気付いた」
事前の知識無しに血が出たら死ぬかと思うのも仕方がない。
「ああー。それは災難でしたね」
「魔女様、次に備えて準備しておきましょう」
「買い物です」
「何を買うのじゃ?」
「いろいろです。今のままじゃダメです」
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また町にやってきた。
「こんなにたくさん人がおると恐ろしい」
「大丈夫ですよ。魔女様」
「こんなに人が多いところでよく平気じゃのう。
カリーヌ、お主も肝が据わっておるな」
「はい。慣れておりますから特に(問題ありません)」
「まあ、この町に住んでる皆さん慣れていますから」
もう何度か来ているのに慣れないものだろうか?
「魔女様、下着は特に念入りにいくつも揃えますから」
「便利なのはわかったが。そんなにいくつも要らんじゃろ?」
「病気になりますよ」
あの火炎輪の意味が分かったのだ。
魔女様の体調が悪いときに発動させているものだった。
体調が悪いと防御が手薄になるので火炎輪で侵攻を防いでいるのだ。
防御と言っても、そう滅多に攻めてくるものは居ないのだが。
ところが、火炎輪で森への侵攻は防げても、魔女様は布をろくに持っていない。
買いに行ければ良いのだが、火炎輪は燃え盛っているし、魔女様は動けないしで、
その期間、必要なものが有っても森から出られないのだ。
なので落ち着いてから、下着や衛生関連の品を買いに来た。
「わしも毎回困っておる。50になれば止まるのであろう?
であれば、わしもあと5年の辛抱じゃ。長かったのう……」
魔女様はそう言うが、リタはたぶんそうならないと思う。
確かに50くらいになれば止まる人が多いという話はした。
個人差はあるがいつかは終わる。
だが、魔女様はそれに該当しないように思う。
完全に個人差の範囲外。
「あの……たぶん。たぶんですけど、魔女様は5年経っても終わらないと思いますよ」
「何故じゃ」
「だって、年取ってないじゃないですか」
「45だと言っておろう」
「45には見えません」
魔女様は自称45歳。見た目は15歳位だ。
「見た目が15歳で、生まれてから110年経ってますから、
魔女様には普通の人間の常識は多分通じないと思います」
「少しくらいは数え間違いがあるかもしれぬが、そこまでは年を取っておらぬはずじゃ」
「だいたい、壁画の大聖女様は130年前の人です」
魔女様が婆様と呼んでいる人物は130年前の人物だ。
そして魔女様の生まれ年から計算すると、その人物と行動を共にしていてもおかしくはないのだ。
魔女様の言う妙なことも、その時代であればつじつまが合う。
リタは気になって調べてみたのだが、130年前には本当に火あぶりの刑が有ったようだった。
「その頃なら、魔女様の言う火あぶりの刑もあったみたいです。
でもたぶん魔女様を火あぶりの刑にするのは無理だと思います」
本人が言っている通り、町を丸ごと焼き払うことができる。
たぶん、魔女様は逃げることもできそうに思う。
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予想外なことに、下着は簡単には買えなかった。
「注文してくれれば仕入れるけど、同じサイズのものをいくつも置いてないからね」
衣服を扱う店を回ったが、寝間着も下着も十分な数買えなかった。
「町の人たちって下着とか寝間着どうしてるのかしら?」
「滅多に買う物ではないようですね」
※寝間着は自家製が普通。下着も基本自家製です。
手作業で作っているので、服も自家製のものも多いです。
なのでリタさんが古着屋で買っている服は、職人でもない一般人の誰かの自家製のものだったりします。
カリーヌは一般家庭は寝間着を持っていないか、持っていても自作だということは知っていた。
誰かが作れば良いのだが、カリーヌは衣類を作った経験はあまりない。
修理くらいはすることがあっても一から作った経験はほとんど無い。
それに時間も無い。
この先どうやって解決しようかと少々悩む。




