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3-2.町でお食事

リタは無事、町で魔女様の宝石の一部を換金することに成功した。

魔女様が強いことが判明し、いざとなれば森に帰れるので町に行っても問題無いと判断した。

町の者は、リタを敵対視していないので、知らない降りをしてくれる。



魔女様が持っている宝石は種類が偏っており同じものが多数ある。

宝石は元々流通量が少ないからこそ価値が高いものなので、一気に売ると相場が下がる。

そこで少しずつ換金する。

今回換金しただけでも、普通に暮らせば数年は持つ。


とは言え、散財する材料がいくつもあるのだが。

※なので今日はカリーヌさんは留守番です。リタさんが散財するお店がバレちゃうからです。


次は料理屋だ。これも大きな散財の1つになる。

だが、魔女様の攻略には料理が必要だ。

この町に限らず一般的に女性は料理屋をあまり利用しない。

庶民の間では、店で料理を食べることは料理ができないことを喧伝するようなもの。

そんな考えが存在する。


一方で、女性向けの店も少ないながら存在する。

女性向けの店は料理よりスイーツメインのお店が多い。

スイーツメインの店であれば、女性が利用しても悪評が立ちにくい。


だが、リタは魔女様には料理を食べていただきたい。

リタと一緒に来れば美味しいものが食べられるということを知ってもらうために。

※普通に、食い物で釣る作戦ですね!


女性でも入れて、安全でおいしく、それでいて普通の町民でも入れる店。

そういう店は実はとても少ない。

同様の店が他の町にあるかと言うとそうでもない。


ここは少々値は張るが、まあ()()()()()()()()なのでリタの持ち金でも十分足りる。

以前のリタのように、平民に成りすまして食事しに来る貴族も多い。

※リタさんの趣味は町遊びです。


貴族がわざわざ食べに来る理由。それは、実は庶民の食べ物にも美味しいものがあるから。

高級=美味しいは必ずとも成り立たない。

安くて美味しいけれど、貴族が食べるのはよろしくない料理というのはたくさんある。


貴族は、味より、格を優先しなければならない。


なので、貴族令嬢時代のリタは、お忍びでよく食べに来ていた。

※貴族令嬢の趣味としてはかなり良くない部類に入ります。



「なんじゃ、テーブルがたくさんあるな」

「料理屋です」

「料理をその場で食べることができる店じゃな。聞いたことがある」


「メニューはこれですが、何を頼みます?」

「わしは文字は知らん」


そんな気はしていたが、リタは魔法使いは()()()()()()()で勉強しているイメージを持っていた。

なので、もしかしたら文字を読めるのかもしれないと思っていた。


文字は読めなくても魔法を使えるかどうかには関係無いようだ。


「そうでしたか。

 ……魔法は本で学ぶのではないのですか」


「今思えば、文字が読めぬと使えぬ魔法があるのかもしれぬな」

「ああ、そういう認識……」


たぶん思い当たることがあるのだ。

どう習ったのかはわからないが、

”もしかしたら、呪文を使わないと使えないような魔法を使えないのは文字が読めないからかもしれない”ということに今更ながら気付いたと言っているのだ。

まあ、使えてるのだから、必ずしも文字が読める必要は無いのだろうが。


「認識とはなんじゃ?」


「ああ、良いのです」


メニューを読み上げても良いが、おそらく魔女様は料理の名前を見ても、それがどんなものかは知らないはずだ。

読めるのであれば、これはどんな料理で……と説明しても良いが、魔女様の好みを知るためにも、幅広く注文することにする。


「いくつかおすすめのものを頼みますね」

「うむ。たのむ。わしは料理は全く知らぬからな」


料理が何品か運ばれてきたが、魔女様は手を付けない。

???

「どうされましたか?」


「食べて良いのか?」

「いいですよ。もちろん。魔女様に食べていただくために注文したのですから」


「そうか。これはどのように食べるのじゃ?」


ソースがいくつかあるので食べ方がわからなかったようだ。

もっとシンプルなものを頼んだ方が良かっただろうか?


「このソースを付けていただくと、より一層美味しさが引き立ちます」


「ほう、こっちをこれに付けるのかの?」


「はい。お気に入りのソースが1種類だけであれば、先にかけていただいても良いと思いますが、

 せっかくですので、ソースの味の差を楽しんでいただければと思います」


意外なことにナイフとフォークの使い方に関しては、魔女様はそこらの平民よりきれいだと思う。

おそらく、お婆様が高貴な方だったからではないかとリタは考える。



「なんと美味い」


「魔女様にそう言っていただけると、案内した甲斐があるというものです」

「ソースなど無くても美味いが、付けないといかんかの?」


「いえ、一番おいしいと感じるようにいただいてください」


「こんなものは食べたことが無かったが、実に美味い」


魔女様は実に幸せそうに食べる。

瞳が輝いて見える。曇りの無い純粋な瞳。

お世辞ではない嘘偽りの無い言葉。


美味しいものを食べているときの魔女様はとても魅力的だ。


そんなことを考えているときに、この一言。


「お主、こんな美味いものを食わせてくれるとは、やはり天使のようじゃの」


この一言はリタの心に思いきり刺さった。

(ううう、魔女様、私が魔女様に惚れてしまいそうです)


くうう

予想外の一撃に悶絶する。


「おぬし、何をしておる? お主は食わんのか?」

「ああ、はい。いただいてますよ」


「町にはこのような店もあるのだな」

「ちょっとお店選びが難しいんですけどね」


「難しい?」

「店選びは町に住んでいる者でも、けっこう難しいのです」


「ようわからんが、そのあたりはお主に任せる」

「はい。おまかせください」


リタは遊び歩いていた経験が役に立った。凄く役に立った。

でも、同時に、何かむなしい気持ちにもなる。


「どうした? 不満があるのか?」


「ああ、心配させてすみません。

 単なる私個人の気持ちの問題なのですが……」


「うむ」


「真面目にレッスン受けた内容より、

 不真面目に遊び歩いた経験の方が役立つというのは、

 ちょっと精神的に微妙なものが有りまして。

 なんだか、努力を否定されたような……」


「何を言って居る?」


「ああ……いいえ、何でも無いです。

 単なる自己嫌悪と言うか、世の中の理不尽さに対する嫌悪感を持ったという話です」


「わしにはようわからんが、命を狙われるというのは辛いものじゃ。それはわしにもようわかる」


「ああ、いえ、そういう話では……」


話の内容は直接的には全く伝わっていなかった。

ただ、本当は魔女様はわかっているのかもしれない。


私は死にたくなくて、自分の有用性を魔女様に認めて欲しい。


そのとき役立ったものが、努力を重ねてきたものではなく、

遊びで覚えたことだったので、そこが気に入らないのだ。


命を狙われなければ、貴族令嬢がこんなことをする機会など無かったのだ。

もちろん下心があってやっているのも事実ではあるが、魔女様に美味しいものを食べていただきたいと思っているのも事実であり、自分で望んでいることで、嫌々やっていることではない。


だが、命の危機に陥らなければ、今の状況になることは無かった。


魔女様がそこまで考えて言ったのかはわからないが、そう考えないと話が繋がらない。

逆に、そう考えれば話は繋がるので、そういう意味で言ったようにも思える。


魔女様は本当は賢いのだろうか?


……………………


「おお、よう食った、食った。

 食い溜めする習慣があって助かった。

 3食分は食ったぞ。

 世の中にこのような美味なものが、こんなにあるとは思わなんだ。

 もっと早うに来ておればよかった」


「満足していただけたようで良かったです」


リタが調子に乗って注文しまくったせいもあるが、ちょっと驚くような金額になった。

でも、魔女様の食べ物の好みも分かった。

これはリタが身を守るのに必要な経費なのだ……と思うことにした。


※そうでも思わないと平穏な気持ちを保てないくらい高かったのです。

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