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日常壱齣  作者: 呉武鈴
2/5

銀行強盗に遭遇したら? 〜笠羽亨の場合〜

「現在犯人グループは人質をとって銀行に立て籠っております。さらに『逃走用の車』を要求しており応えなければ人質を一人ずつ殺すと言っております」

白昼、都市部にある銀行にて起きた事件の中継を見ながら所長のいない事務所で二人の少女が煎餅と茶をいただいていた。

「怖いですね」

「まぁ私たちにとっては他人事だけどさ」



「テメェら妙な真似はすんなよ!」

そう言いながらライフルを人質に向けている犯人の一人をみながら笠羽亨は(銀行強盗なんて下らない真似してる馬鹿共に言われたくねぇよ)などと考えていた。


―遡ること20分前



夜逃げした債務者を捕まえてくれと『知り合い』から依頼された亨は、まず『知り合い』が口座に振り込んだ必要経費を落とすために近くにあった銀行に入った。カウンターにある番号札を取り、印刷されている番号と現在の番号を確認してまだ時間がかかると判断し五人掛けの椅子に座ろうとしたとき。

「金寄越せ!!」

目の前で覆面を被った数人の男がカウンター越しに係員に拳銃をつきつけて大声を上げた。何が起こったか状況を理解出来なかった客達が一瞬静まりかえったがすぐに強盗がいると認識して亨と強盗グループ以外がパニックを起こした。

「黙れぇ!静かにしろぉ!!」

一番背の高い犯人が天井に向けてライフルを発砲すると同時にシャッターが降りた。どうやら店長が警報スイッチを押したらしい。その事を察した犯人が怒鳴りながら奥に向けて発砲する。

そして犯人は

「テメェらは人質だ!!全員隅で大人しくしてろ!」と今日一番の声で叫んだ。



そして現在に戻る。

外では警察が説得に当たっているのかお決まりの台詞が聞こえてくるが誰も耳を傾けてなどいない。

(つまんねぇな)

そう思いながら亨は状況を確認する。

犯人は目の前にいる二人と金をとるために奥に行った二人、そして警察に脅しをいれているのが一人と合計五人。装備はそれぞれが拳銃を所持しており五人中三人がライフルをもっている。人質は自分を合わせて九人。自分の所持品は携帯電話が二つ、スタングレネードが三つだけ。

(まぁコイツら素人臭いからどうにでもなるか)

そう思いながら隣にいた青年にある伝言を伝えて行動に移した。


「スマンがトイレに行きたいんだが」

「しょうがねぇなぁ」

そう言いながら一人がトイレまで誘導してくる。

「妙な真似は…」

「分かってるよ。素手(こっち)(そっち)じゃどっちが強いか子供でも分かるよ」

「そりゃそうだ―」

しかし犯人の言葉は最後まで続かなかった。振り向くと同時に亨が首を掴み銃を思いっきり捻って奪い取ったので声を出すことも発砲することも出来なかった。

「でもなぁ、近距離で素手(こっち)が先手をとれば勝ち目があるんだよ」

抵抗しようと両手で亨の腕を掴むが一寸も動かない。そのうち犯人の力が弱くなり最後には完全に意識が落ちた。



ブルルルル…ブルルルル…

「おい!携帯電話は切っとけ!」

「すみません」

携帯電話の着信を切ると同時に青年は可能な限り大きな声で叫んだ。

「伏せて!」

「は?」

その言葉と同時に人質は誰一人躊躇わず伏せる。突然の奇行に犯人は唖然とする。人質が伏せると同時に後ろで物音がする。振り向けば缶ジュースのような物体が転がっていた。しかし缶ジュースとは違いプルタブの代わりに突起がついている。そのことについて疑問に思った直後、それが強烈な光と音を発した。

「――!?」

突然のことに体を前屈させながら犯人は思った。

―スタングレネード!?

そう思い一体誰がこんなものを使ったのかと思いながら後頭部に衝撃を喰らい意識が遠のいた。



「あ、進展があったみたいです。今、中で強烈な光が発されました」

「今のって…」

「ハハハ…」



―一体なんだよ!?

そう思いながら奥にいた二人は戻ってきた。

通常の警官がスタングレネードなど持っている訳などないから特殊部隊でも来たかと思ったが仲間の一人がこちらに向かって水平に飛んできたのを見て違うと感じた。



「あ、今犯人の一人が出てきました。何やら慌てて…あっ、中から誰か…スーツの男性が…犯人の襟首を掴みそのまま中に戻っていきました」

「…すみません」

「雪奈ちゃんが謝ってもしょうがないよ。それより犯人達の無事を祈ろう」

「…そうですね」


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