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第29話 『黒い閃光』

【あらすじ】省略!

【※少しだけりぃな視点です。鷹野を追う数分前】


 こんちは、りぃなです。

 いまウチはとんでもない場面に立ち会ってます。興奮して一人称「ウチ」って言っちゃってるのは許してください。それぐらいスゴイことになってます。



 ──ザンッ!!



「すげぇ……これで何点目だ」

「36点差だぞ? なのにもう11点取り返してる」

「こんなの見たことねぇ」


 観客の視線はコート上を縦横無尽に走り回る彼ひとりに注がれています。



 『黒い閃光』──桶川佑人。



 『S』のメンバーは選び抜かれた精鋭ばかりですが、その中でも彼は突出していました。


 広い視野、豊富な運動量、尽きないスタミナ、瞬発力、巧みなハンドリング、正確なテクニック、ぶれない体幹。そしてトップスピードに至るまでの速さ……オールラウンダーという言葉じゃ生ぬるいほどに、彼は天才なのです。


 『黒い閃光』──その由来は雷光。

 たとえば黒雲が近づいて嵐の気配を感じていても、いつ、どんな軌跡で走るのか予知できない雷のように、だれも彼を捕まえることができないのです。


「ふぅ……やっぱりかっこいいなぁ、()()()


 これが見たかった。ウチはもう胸がいっぱいです。


「また得点だ! 今度は7番の……小石崎ってやつだ」

「あいつ一年だろ? よく『黒い閃光』についていけるよなぁ」


 ふむ、朔丘を去った佑人様は月波で良い後輩に恵まれたみたいです。

 良かった良かった。


「どうですか、かつての仲間の勇姿は?」


 スマホに語りかけるも通話相手は黙り込んでいます。

 リアルタイムの映像に熱中して会話どころじゃないみたい。


「……おや?」


 星浦ベンチにいた鷹野彩矢が動き始めました。

 逃げるに違いありません。


「鷹野彩矢が動きました。懲らしめなくちゃいけないのでウチはここまでにしておきますね。会場にいる別の人に見せてもらってください、キャプテン」


『ああ』


 通話相手は朔丘中央学園高等部の男子バスケ部キャプテンです。

 つまり佑人様の中学時代のチームメイトですね。


 ついでにウチは佑人様会いたさに高校から朔丘に入学したんですよ。いなかったけどね!



   ※



「うそ、りぃなちゃん朔丘に入学してたの?」


 鷹野彩矢は驚きを隠せなかった。

 現役高校生の動画配信者の中ではトップランカーに位置し、憧れ存在でも『りぃな』が目の前にいる。


「そう『黒い閃光』見たさにね。同じクラスになったらどうしよう、もしかして席も隣同士だったり?……って色々妄想していたから他の学校に進学したって聞いたときはホント倒れるかと思ったー」


 追いかけようにも、彼の進学先は誰も知らなかった。

 だから男バスのマネージャーになり、情報収集しながらコートに戻ってくるのを待とうと決めた。


「で、数日前に地区大会の登録メンバーに名前見つけて飛んできたの。少し前スポ●チャで似た人を見かけたときからこの辺をマークしておいて良かった~」


「……す、ストーカー?」


「違う。ただの大ファンだもん。とにかくそういうことだから佑人様の足を引っ張るアンタが許せないの」


 指さされた鷹野は一瞬面食らった様子だったが「バカバカしい」と鼻で笑った。


「許せないってなにが? 佑人が試合に遅刻したこと? あたしは試合前に市販のハーブティーを差し入れしただけよ、眠くなるなんて知らなかったわ」


 りぃなは途端に困り果てた。


「あーそっか。知らなかったなら無罪だよね」


「ええそうよ。すぐに立ち去ったからあとは知らないわ」


「うーん困ったなー。知らなかったのかぁ……あれ、でもなんで()()()()なんて言ったの? 佑人様本人は試合中だからなにも言ってないよね。お腹壊してトイレにこもっていただけかもしれないじゃん」


 しまった、とばかりに鷹野は冷や汗をかく。


「だからそれは……そんな気がしただけで」


「試合前に月波のマネージャーさんたちが探していたの知ってるよね? 教えてあげなかったのはなんで?」


「どうして敵チームを助けなくちゃいけないの?」


「事務室で聞いたんだけど、あの部屋が使われていないことを確認に来たのって鷹野ちゃんだけらしいよ。美人で目立つからよく覚えてたみたい。良かったね」


「……っ」


「だから誤魔化してもダメだって。苦しくなるだけだよ」


 りぃなは笑顔で続ける。


「朔丘に入っていろいろ耳にしたよ。たとえば彩矢ちゃんが全中の試合の前に佑人様とは別の人にも『優勝したら付き合おう』って二股かけていたってこと。当の本人いま朔丘のバスケ部にいるんだ」


「うそ……」


「本当は朔丘の高等部に内部進学したかったのに()()()()が原因でダメになっちゃったこと」


「なんで知って……」


「風の噂だよ。でも火のないところに煙は立たないっていうよね。お金目当てのパパ活していたとか、胸を強調したいかがわしい動画流していたとか、裏垢が特定されちゃったとか……。これ今の彼氏さん知ってるのかな?」


「やめて!!」



 ──ワァアアアアア……!!



 ひときわ大きな歓声が廊下まで聞こえてくる。

 3rdが終了したようだ。


「と、いうことで。バラされたくなければもう悪いことしない方がいいよー」


「……ふ、ふふふふ」


 顔を覆ってうずくまっていた鷹野は不気味に笑いながらスマホを取り出す。

 録音中のマークがついていた。


「いまの全部録ったわ。バラしてやる。人気動画配信者の『りぃな』が本当は性格クソであたしを脅してきたって拡散してやる! あんたは炎上! あたしは被害者として同情を買いながら人気者に躍り出るのよ! ざまぁみろ!」


 乱れた髪を振り乱して驚喜する鷹野。


 しかし。


「いまの発言いただきました!」


 今度はりぃながスマホを取り出した。こちらも録音中だ。


「言った言わない論争にならないようお互い録音しておいた方がいいよね。安心して。アンタがどんなに編集加工したデータ出してきてもウチは全データ持ってるから」


「あっ……あ……」


「アンタの動画登録者って何人だったっけ? ウチひそかにチェックしてて……あ、2,000人だね。おめでとう! ウチの100分の1!」



   ※



 ビー!!


 試合終了のブザーが鳴り響いた。


「いよっしゃあああああ!!!」

「やったねひと君!!」


 歓喜に震える月波サイド。うなだれる星浦。


「はっ……は、はぁ……」


 夢中でボールを投げ続けてきたオレはいつからか点数を見る余裕すらなくなっていた。

 滴り落ちる汗をリストバンドでぬぐい、どくどく震える心臓をなだめ、深く息を吸い込み、ゆっくりと得点板(スコアボード)を確認する。




 月波高校 58-57 星浦高校

バスケに関して無知ゆえに前話では色々ご指摘いただきました。ありがとうございます。誤字指摘くださった方もありがとうございました。落ち着いたころにゆっくり見直して確認しますね。

ちなみに今話で小石崎は7番スモールフォワードとしましたが詳しい方からしたら何番が妥当なのでしょうね。ちょっと聞きたいかも。


さて、本作はバスケものではなく恋愛ものなので少々急ぎ足になりましたが星浦戦はこれにて決着。

次話でおわります。

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― 新着の感想 ―
[一言] スラムダンクである程度確立されたみたいな感じですが、番号=ポジションが固定されているわけではないです。ただ、7番はチームの司令塔であるポイントガードに多い。謂わば主人公である佑人のポジション…
[良い点] なんか鷹野勝手に自爆した。というか録音した内容も殆ど悪さすんなこんなことやってただろという感じの追求だし普通に流されてもダメージ低そうなのになんで炎上すると思ったのかな [一言] 恋愛メイ…
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