第57話 これぞ王の仕事じゃないか
結局、職員室荒しは不良たちの犯行でしかなかった。たまたま陰摩羅鬼が傍を通りかかったことにより、発作的に不良たちは職員室荒らしを決行してしまったらしい。
いや、それってどうなんだよと鈴音は思ったが、妖怪と出会って波長が合ってしまうと起こる現象だという。
「この間も話題になった通り魔がその典型例だな。あれは魔とすれ違ったために日頃心の奥底に隠している破壊衝動が噴出する現象だからな」
「ううむ。そういうのもトラブルになるってことか。今回のことで勉強になったなあ」
冥界に戻り、ともかく休憩となったところで、鈴音はしみじみと呟いていた。右近の用意してくれたおにぎりを食べつつ、考えることが多いなあと実感してしまう。それに、健星はふっと笑った。
また馬鹿にしてと思った鈴音だったが、健星が予想以上に優しい顔をしていたのでドキッとしてしまう。しかし、次に意地悪く口角を上げると
「自ら学ぼうとする姿勢は素晴らしい。今後もしっかりやれよ」
と言ってきた。おかげでドキッとした気分は吹っ飛んだ。ちぇっ、これだから、この男は。
「それで、その不良というのはどうするんですか」
ユキが解決したと見なしていいんですかと質問。
「そうだな。少年課に情報提供しておくから、すぐに犯人は解るだろう。後は学校側と保護者に任せるしかないね」
健星はここから先は人間界での仕切りになるからなと真面目な顔になる。妖怪のトラブルは解決するが、人間のことは人間でやれというのが基本なのだ。
「まあ、そうですよね。妖怪のことだけでも手一杯です」
「それだわ。ちょっと通りがかっただけで影響しちゃうことがあるんだったら、そりゃあトラブルも続発するわよね。健星も言っていたけど、現世に住むんだったらちゃんと住処を決めてあげて、そこから出ないようにって指導しないと」
ユキの言葉を受けて鈴音がそう言うと、それだと健星がパチンと指を鳴らした。
「えっ、それって」
「つまり、冥界に来るか、現世に留まりたいのならばルールを守るか。これをちゃんと伝えて行こう。俺だと話を聞かない妖怪が多くてバトルになるが、お前ならば出来る」
健星、そう言って鈴音を指差した。これぞ王の仕事じゃないかと笑っている。
「いやいや。っていうか、すぐにバトルになる健星が問題でしょ」
「ふん。ルールを破ったのは妖怪たちだ。俺が引く必要はどこにもない」
「こ、これだから」
本当に王様にならなくて正解だよ。鈴音は心の中で絶叫してしまう。
「ついでに挨拶回りにもなるだろ。選挙の時は自分に投票しろってついでに言え」
「いや、なんでやることに」
「効率的に回らないとなあ。おい、お前は一週間学校を休め。鬼退治もあるんだ。ちんたらやってられん」
「ちょっ」
「俺は虫垂炎ということにしよう。診断書はいくらでも偽造できる」
「いやいや。ええっ」
「何か希望の病気はあるか? なければ急性胃腸炎にしておくが」
しれっと健星がそう言うので、鈴音はそうじゃなくてぇと頭を抱えてしまうのだった。
ちなみに現在時刻はすでに朝の九時。学校はサボり決定なのだった。




