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第40話 テンション上がる

「ともかく、三週間後に迫った選挙に向けて動くしかないってことね」

「そういうことだ」

 鈴音はどうやって妖怪たちを統治すればいいんだろうという問題と、人間なのに人間じゃないという健星の問題の二つを抱えることになってしまったのだった。





「あっ、これはテンション上がるかも」

 翌日。高校が終わってから冥界に赴くと、挨拶回り用の衣装が用意できていた。袖を通し、鈴音は可愛いとくるっと回ってみる。

 それは大学生が卒業式に着るような振り袖に袴というスタイルだった。深い紅色の振り袖に藍色の袴。振り袖には名前に合わせて鈴が模様として美しく描かれている。

「ユキ、どう?」

 着替えを終えてユキの前でくるりと回ってみる。それにユキはもう卒倒しそうだった。

「お、お美しゅうございます」

 着物も綺麗だが、はしゃいでいる鈴音が凄く愛らしい。ユキは真っ赤になりながらも賞賛を口にする。

「あらあら、ユキったら、照れてるわ」

 その様子に、着付けをしてくれた右近が、可愛い反応をしているわよとくすくす笑う。

「なんでユキが照れてるの? どこかおかしい?」

 しかし、鈴音はユキの気持ちに全く気づかず、似合ってないのかなあと首を傾げている。それに右近はますます笑ってしまい、ユキはお似合いですと慌てて両手をぶんぶん振っている。

「あらあら、賑やかねえ」

「あっ、お母さん。ありがとう」

 そこに女房装束の紅葉が現われたので、鈴音はぺこっと頭を下げた。この着物は本当に自分好みで嬉しい。

「良かったわ」

 それに、紅葉もようやく母親らしいことが出来たと満足げに笑う。そんな紅葉の顔に鈴音も嬉しくなってしまった。そして、泰章の伝言を思い出す。

「あっ、そうそう。冥界からでもスマホが使えるってお父さんに教えたら、暇なときでいいからお母さんと話したいって言ってたよ」

「あら」

 途端に紅葉の顔が母の顔から乙女の顔へと変わった。目元をほんのりと赤らめ、とても嬉しそうだ。

「何なら、今する? お父さん、そろそろ仕事が終わる頃だけど」

「えっ、ううん。そうね。泰章さんが晩ご飯を食べ終えた頃がいいかしら」

「解った。その頃には挨拶回りって終わってるのかな」

「今日じゃなくても大丈夫よ」

 ふふっと笑って、それでもそわそわしている紅葉だ。本当に嬉しそう。その顔を見ると、別れてからの十二年、ずっと好きだったんだなということが解る。

「まさか両親のラブラブっぷりをこの年になって知ることになるとは」

 朝、連絡できるという事実を知った泰章の慌てっぷりを思い出し、凄いなあと鈴音は感心してしまう。別々の場所、しかも住む世界からして違う二人がずっと想い合っているなんて、遠距離恋愛どころじゃない、壮大なラブストーリーだ。

「おい、用意できたか」

 そこに常時不機嫌な健星がやって来て、浮かれている紅葉を不思議そうに見ている。

「何だ? めでたいことでもあったのか」

 健星、意外に鋭い。

「個人的なことよ。それより、これで大丈夫かしら」

 紅葉はふふっと笑って誤魔化し、鈴音の服装に関して意見を求める。

「ふむ。問題ない。女房装束では動きにくいし、かといって、制服では王としての威厳がないが、これならば、新人の王という雰囲気も損なわずにいいだろう」

 再び意外にも、健星は衣装に関して、素直ではないものの褒めてくれた。これにもびっくりだ。

「じゃあ、行くぞ。まずは中務省(なかつかさしょう)からだ」

 しかし、すぐに挨拶回りに出発だと言われ、鈴音も浮かれてばかりはいられないのだった。

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