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世も末子さんの観察  作者: めいめい
4/10

クソッタレな世の中

 何でこんな状況になってるんだ。


 誰かが私に恨みがあって仕組んだとでも言うのか。恨まれるような事をした覚えはないしそもそも人との関わりが少なすぎるから恨む恨まれるの問題じゃないと思うけど。



「何で…もう勘弁してよ」



 目の前に家があるのにこれ以上近づくことが出来ない。真っ黒で巨大なバリアが張られているみたいだった。早く部屋に行って布団の上にダイブしたい。



 でも裏道も無ければ家の中に入れる扉は正面にしかない。

 将棋じゃないけどこれは詰みだ。強行突破するかアイツがあの場所を去るのを待つかの2択しかない。



 家に帰るだけなのに何でこんな事を考えなければいけないんだ。

 自分が指名手配されて追われてるわけでもあるまいし。まぁ見つかったら追って来そうなやつがすぐそこに居る訳だが。



 とりあえずあの寂しいコンビニにでも入って時間を潰すか。

 私が入ってあげればあそこの寂しさは少しは軽減されるだろう。とくだらない事を考えながら家に背を向け引き返そうとした時。



「あ! 稜子じゃん! なんだよ用事あったんじゃねーのかよ〜」



 気が付かれた。


 またしても抜かる私。今日は何度ミスをすれば気が済むんだ…。今御籤を引いたら確実に大凶だろうな。



 逃げた所でどうせ追いかけてくるのは目に見えている。多くの学生は自分の親の前で友達と話をしたりする事を苦手とする人が多いみたいだが私は無論気にしない。

 毎度言っているがどうでもいい。仕方がない、腹を括るか。ちょっと大袈裟だけど。



 アイツがこっちに気がついた事によってあと2人もこちらに気がついた。母は私に手を振ってくる。普段なら振り返していたかもしれないが今はそういう気分になれなくて無視してしまった。



 そうしているうちに。


「まさかのまさかでびっくりしたわ。うちらの親同士知り合いだったんだな。しかも近所だし。中学の時までは別のとこ住んでてさ〜高校生になるタイミングでこっちに越して来たんだよね。まだこっちにきてそこまで経ってないのにいつの間にあんなに仲良くなったんだか」



 目の前に来たかと思えば聞いてもいないことをベラベラと勢いよく喋っている。


 やっぱり嫌な予感は当たるものなんだな。



 しかも近所って…さすがにこれは出来すぎじゃないか?実は私達は誰かに操作されて動いているんじゃないのか、そして今こいつルートに入っている的なやつ。

 付き合わないぞ私達は。



 考えるに高校になって越してきたって事は前住んでいた場所によっては知り合いが1人も居ないパターンもありえる。

 もしそうなら友達がいない、という言い方は間違いで友達がまだ出来ていないが正解か。



 かといって寄りによって私と友達になろうとしているのか。友達になろう!なんて事はまだ言われていないけど今すぐにでも言われそうな雰囲気だ。



「おーい。聞こえてますか〜」



 聞いているのか確認を取りながら私の顔の真ん前で手を振ってくる。この行動も漫画で見たことがあるけど聞こえているかの確認なのに何でわざわざ手を振るんだろう。

 それは目が見えているかの確認でするべきじゃないか?その振っている手を軽くパチンっと弾く。



「聞こえてるに決まってるでしょ。こんだけうるさいんだし。ちょっと頭の整理をしてただけ」



「うるさいって相変わらず失礼だな。もう慣れてきけど。てかあんな道入っていって用事って何だったの?」



 来た。この流れが。


 まさかこんなにも早く訪れるとは思っていなかったけど大丈夫。

 さっき帰り道の途中でその答え方は既に考えてあった。候補が幾つかあるけど1番面白いのは…



「あー。あれね。別のクラスに気に入らない奴がいたの。だから学校から離れたあの場所に呼んでちょっと痛い目にあってもらおうと思ってね」



 どうだ。これを聞いてまず何を思う。ヤンキーな奴が言うのとは訳が違う。私のような見た目陰キャが言ったんだ。


 少しは驚いて戸惑って欲しいもんだけど。



「え? いやいや。もうちょっとマシな嘘つけよな〜。そんな訳100パーセントないじゃん」



「何でそんな事が言えるの? 私の事ろくに分からない人がそんな自信満々に」



「言えるよ。自信満々に。だって黒沼って絶対良い奴じゃん? 普段はこう人を寄せ付けない冷たいオーラ放ってるけど心の中は暖かい的なやつ? うちの直感って外れた事無いんだよな〜」



「例え外れた事が無いのが本当だとしても勝手に決めつけられるのは納得いかないんだけど」



 ドクンっ!ドクンっ!


 心臓の音…いや違う。

 土が溜まるに溜まった心の奥底の何かが過剰に反応している感じがしてかぁーっと胸が熱くなり徐々に体全体に伝わっていく。


 体が擽ったくなってきた。さっきは突っ込みを入れるのを忘れていたけど突然名前を呼ばれた時も一瞬似たような感覚に襲われていた。ていうか何で急に名前?今苗字に戻ってるし…。



 なんなの?この感じ。私の体の中で一体何が起こってるって言うんだ。自分の事なのにやっぱり分からない。分かった所で何かが変わるとは思えないけど。原因は間違いなくこいつだ。



 別にムカついている訳じゃない。

 直感という凄く曖昧な理由だったけど良い奴じゃんって言われるのは悪い気はしない。

 でも嬉しいとも思えない。もう全てが分からなくて投げ出したくなった。



 世の中の人間は自分の都合さえ良ければどうだっていい精神のクズばかり。私がいた小学校、中学校の奴らはみんなそうだった。先生も生徒も。



 いつもの様に遊んでいた友達同士がいつの間にか縁を切っていて別の仲間を集めそいつをターゲットにいじめをしたり、話しかけても全部無視をする。俗に言うハブきと言うやつか。



 その縁を切った2人以外のヤツらが片方に肩入れをし理由もなくそいつに便乗して同じ事をする。

 いじめを最初に始めた奴もクソ野郎だけどそれに便乗する奴らはそれ以上のクソ野郎だと思う。そんな事をして何が楽しいんだろ。



 可哀想な奴らだ。



 縁を切った理由も糞がつくほどしょうもない理由だ。

 遊ぶ約束をしていた日に家の用事があった事を忘れていて、当日に用事があるのを忘れていた。行けなくなったと言っただけ。

 たったそれだけの理由で周りのみんなが敵になり目の敵にされる。



 こんな理不尽な事が小・中学校では何度か似た理由で発生していた。

 先生もそれを知るなり注意などはするがそれでお終い。そんな事誰にだってできる簡単な事だ。1度注意するだけで収まっているならいじめが原因で自殺している人なんて1人もいないだろう。



 先生の本来の仕事は生徒たちに勉強を教える事。それ以外のことは二の次三の次。あれは生徒たちの問題だ。自分達で解決するべきだと先生お得意の綺麗事を並べてきそう。



 親達もそうだ。親同士で自分の子供の話をする時は決まった流れがある。


 まず他人の子供のことをすごいすごいと褒め、その後うちの子なんてと自分の子供を貶す言い方をする。何度かこの流れの会話をしているのが耳に入ってきた事があった。



 自分の親のことは嫌いじゃない。好きか嫌いかで答えろと言われたらきっと好きと言う。だけど他人の子供を褒め自分の子供を貶すこの流れだけは本当に納得ができない。



 なら他人の子供も悪く言えとかそういう話じゃない。親というものは自分の子供が1番に可愛くて大切なはずだ。

 なのにどうして貶した言い方をするんだろう。どうせなら他人の子も自分の子も褒めればいいじゃないか。



 私が今まで生きてきた間に関与してきた人間なんて他の人達に比べたら大した数ではないと思う。でもその数少ない中がこの有り様だ。


 私の知らない他の場所にいる人達はいい人達が沢山いるんだろうな…なんて事は思ったこともないしどこも結局は同じだろ。という考えに今は至っている。



 ついでに言うと中学1年生の時にいじめのターゲットにされたのがこの私。



 友達を中学1年の時には既に捨ててきたと言っていたのはつまりこう言う事。初めは辛かったし家に帰って1人でめそめそ泣いていた時もあった。



 でも時がたち、周りでも似たようなことが起きていたのを見ていたからか人間なんてみんなクソ。


 それが当たり前の世の中だし仕方がないか。もうどうでもいい。と考え方がそこから段々腐っていき今の私がいる。

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