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敵地での休息

 ブリオウェル星系の戦いを大勝利で終えてジュリアス達は艦隊に帰還。ラプター部隊を収容したヴァレンティア艦隊は次なる獲物を求めてブリオウェル星系を旅立った。

 旗艦ヴィクトリーに降り立ったジュリアスは流石に疲れが溜まったらしくすぐにもベッドで横になりたいという風だったが、格納庫で待っていたネーナに医務室へと連行されて軍医の診察を受けた。

 今回の診察でも特に異常が見られなかったため、すぐに解放されたジュリアスはすぐに自室へと戻り、着替えずにパイロットスーツもままベッドの上に倒れ込む。

「ちょ! た、大将。寝るのは汗をしっかり拭いて着替えてからです! そのままでは風邪を引いてしまいます! ……って大将?」


 ネーナが言葉を言い終わる前に、彼女の耳にはジュリアスのすやすやと眠る寝息が聞こえてきた。


「も、もう寝ちゃったんですか」

 相当疲労が溜まっていたんだろうと察したネーナはジュリアスを起こすのを断念した。しかし、このままの状態にして風邪を引かれては困ると考え、ジュリアスを寝かせたまま自分が彼の着替えと汗の拭き取りを行なう事を決める。

「大将は基本何をしても起きてくれないですし、疲労が溜まっている今なら大丈夫ですよね」

 そう自分に言い聞かせ、気持ち良さそうに眠るジュリアスの身体を申し訳なさそうな顔をしながら動かして服を脱がしていく。

 ネーナの言った通り、彼女が何をしてもジュリアスはまったく起きる気配を見せなかったが、彼よりもずっと小柄な体格をしているネーナが彼の身体を動かして服を脱がせるのはかなりの労力を要する。彼が起きないように気を遣う余裕はまったくない。時折、普通なら起きそうなくらい大胆にジュリアスの身体を大きく動かしたりとかなりの重労働である。


 長い格闘の末に、ネーナが全ての作業を終えた時、ネーナは完全に草臥れており、ジュリアスの横にゴロンと横になった。

 このまま大好きな主人の横で眠りたい。そんな甘い誘惑にネーナが襲われたその時、ある思いがその誘惑を吹き払い、彼女はベッドから起き上がった。

「っていけません! 奴隷の私が主人と同じベッドの上で寝るなどもっての他です! それに何かあった時に私が寝ていたら、一体誰が大将を起こすんですか!」

 そう言って誘惑に一瞬でも負けそうになった自分を自分で叱り、この戦いが終わって帰ったら、しばらくは罰として自分の嫌いなピーマン料理を食べるようにしなければと心の中で固く誓うのだった。



─────────────



 ここまでの戦いで、ヴァレンティア艦隊は連戦連勝を重ねていた。この連勝は将兵達の士気を大きく高めたが、徐々に兵士達の疲労を見せつつあった。いくら連戦連勝を重ねているとはいえ、敵中に孤立した状態で進軍を続ける事のリスクは計り知れず、それだけでも兵士達にとってはストレスを誘う種となろう。

 そしてその中で、一際疲労の色を見せているのが誰なのか。この艦隊で知らない者は皆無と言って良いだろう。


「私に口出しする権利が無いのを承知であえて申し上げます。次のカランタン星系の戦いではシザーランド師団長の出撃をお止め頂くよう、司令官閣下よりお命じ頂きたく存じます」

 そう言うのはアルバート・グレイ少佐。ジュリアスが指揮する戦機兵ファイター師団に所属するパイロットで、旧ネルソン艦隊時代から在籍している古株である。古株と言っても、まだ24歳の若手パイロットではあるが。

 グレイ少佐は旗艦ヴィクトリーの艦橋にまで参上して、艦隊司令官と艦隊参謀長を前にそのような事を言い出したのには理由があった。

「先の戦いで師団長のラプターは誰よりも勇猛果敢な戦いぶりを披露していましたが、少々反応や動きが鈍くなっている印象を受けました。我々は戦闘以外では基本休息を取るよう師団長から命じられていますが、師団長ご自身はずっと職務に精励しておられるとか。我々の前では普段通りに振舞っておりますが、おそらくかなり疲労が溜まっているのではないかと」


 グレイ少佐に指摘されるまでもなく、クリスティーナもトーマスもその事は承知していた。しかし、あのジュリアスの事だから、何を言っても無駄だろうと半ば諦めていたのだ。

 とはいえ、部下の目から見ても疲労の色が隠せなくなってきたとなると、2人もこのまま黙っているわけにはいかない。

「話は分かりました。ありがとうございます。シザーランド大将の身を案じてくれて。彼の件は私達が預かります。あなたも疲れているでしょう。次の戦いもあるのですから部屋で休みなさい」


「は、はい! ではこれにて失礼致します!」

 そう言ってグレイは敬礼した後、艦橋を去る。


 グレイが去るのを見送った後、トーマスは軽く溜息を吐く。

「まったくジュリーは人に心配をさせるのが特技なんじゃないかな」


「ふふ。そうかもしれませんね。グレイ少佐にはこちらで預かると言いましたが、ジュリーが大人しく聞き入れてくれるとも思えませんし、どうしましょう?」


「え? そ、そんな事を僕に聞かないでよ。ここは上官のクリスがビシッと言うのか筋でしょ」


「う! じゅ、ジュリーのブレーキ役はトムでしょう! ここはトムが何とかするべきです!」


「えぇ~」


 2人にとってジュリアスは家族であり、親友であり、自分の命よりも大切な存在だった。しかし、それと同時にこの世で最も厄介な人物とも思っていたのだ。

 決して我儘というわけではないが、頑固で1度決めた事は決して妥協も譲歩もしない。というところがジュリアスにはあり、そんな彼を説得するのは極めて困難だった。

 しかし、その中でトーマスはある秘策を思いつく。

「そうだ! ジュリーは今、部屋で寝てるんだよね」


「ええ。そのはずです」


「だったら、そのまま寝たままでいてもらえば良いんだよ」


 トーマスの提案を聞くとクリスティーナは思わず吹き出した。

「ふふ。なるほど。確かにジュリーなら戦闘の警報が鳴り響いて、起こさなければ爆睡しているでしょうからね。それで行きましょう!」


 司令官の了承を得たトーマスは、ブレスレット端末からジュリアスの自室の通信端末へと通信を行う。これに出たのはネーナで、ジュリアスがベッドで寝ている事を確認するとトーマスは、今決めた秘策をネーナに告げて彼女に協力を仰いだ。


「分かりました! 是非協力させて下さい!」


「ありがとう。それじゃあ念のため、その部屋の警報装置をこっちで切っておくから。何かあったら僕から直接連絡するね」


「はい! 分かりました!」

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