007 僕知ってる!大は小を兼ねるんだよ!
皆さん。大は小を兼ねるっていう言葉があるじゃないですか。
あれって素晴らしい言葉ですよね。
だから、泉に腕を浸す儀式でお茶目な全力ダイブしても、あながちオッケーじゃないですか?
そしてもうひとつ言いたいんですけど。
光が闇を兼ねたら、打ち消し合って無になると思うんです。
じゃあ、絶賛俺の身体を黒いモヤで巻き巻き中のあの剣だって、ぶっちゃけただの剣じゃないですか?
あれ?そう考えたら雑魚じゃんアレwwwブフォッwww
・・・・・・あの、そろそろ巻き巻きやめて欲しいなーっなんて。
やっぱ、そろそろ空気が恋しくなっちゃって。いや、ほんとすいませんね、まだ空気離れできてなくって。マザコンならぬエアコンっつってね。アッハッハッハッハッ!!!!
こいつはもう聖剣さんも大爆笑だね!ほら面白すぎてどんどん底の方に連れてかれてるもんごめんなさい助けて下さいお願いします。
どんどん周囲の水が暗くなっていく。果たして聖剣が放つ邪気による影響か、それとも水深が深くなっているからか。
持ちうる限り全ての力でもがくがまとわりつくモヤに邪魔されて徒労に終わる。
そうしてる内にも恐るべき速度で下へ下へと引っ張られてしまう。
流石に冗談ですまなくなってきた。
苦しい。
体内の酸素が尽きかけている。
もがく。もがくが自分で活動限界を縮める自殺行為にしかならなかった。
いや死ぬって。
視界が霞む。
頭上の光が薄れていく。
手を伸ばす。
届かない。
・・・・・・ちょま、
意識が、
途切れ────。
■■■
夢を、見ている。
誰かの夢を見ている。
目の前には、一人の青年。
淡い青の髪と、優しげな顔立ち。
手を伸ばしてこちらに話しかけてくる。
音がぼやけて所々聞こえない。
森の中。少し開けた場所に彼は立っている。
おれはその場所を知っている。さっきの泉の所だ。
ああ、そうか。この夢は聖剣の記憶だ。
聖剣がかつて見た景色を追っているのだ。
青年が、俺を、聖剣を取る。
穏やかな笑みに、しかしその双眸だけは青く燃やして。
──宜しくね。僕の名前はアーサー。アーサー・ペンドラゴン。いつか、まだまだ小さいこの国を、人々が笑って暮らせる、そんな国にしてみせるんだ。
ぼやけた音声の中、何故かそこだけははっきりと聞こえた。
記憶は続く。
紅の曇天に、真っ赤な大地。山積みにされたそれらは、かつて人だったモノ。
死体が大地を満たしている。
・・・・・・なんだろう。この赤い景色を眺めていると、何かを思い出す。
いや、もう考えるのも億劫だ。
一人の男の滅びを見た。
どうしようもない〝滅亡の戦記〟。
民の笑顔を夢見て、立ちはだかる物を斬って進む。
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って斬って斬って斬って、その果てに残ったのは、この死体の山。
その全てを辿って、俺は、運命の残酷さに涙を流した。
最早喚く気力もない。
幾度の死を目の当たりにして、きっと通常の精神は擦り切れてしまったのだ。
ただただ静かに、赤い世界を眺めるのみ。
頬を伝う涙は冷えきっていた。
死体の山、その頂上に男が一人立っている。
彼の手から、剣が落ちた。
膝が崩れる。
──なんで。
わなないた口から零れる疑問。
──なんでこんなことに。
こんな悲しいことがあるものか。だって彼は、誰よりも優しかっただけじゃないか。
国とは民。国とは人である。そして、人とは心である。心を殺して、どうして国を導けようか。
分かっていた。分かっていたはずなのに。仲間の死が、彼にそれを見失わせてしまった。
〝見た〟だけでこれなのだ。
実際に五感で受けた彼は、果たしてどれ程の絶望なのか。想像することも出来ない。
その後使い手を亡くした聖剣は、再び泉へと投げられる。
落ちていく。
失望した。
暗い暗い泉の底。
聖剣の胸に、どす黒い感情の泡が沸騰した。
人間には、心底失望した。
感情の爆発。憤怒の波が、刀身を突き破って泉に充満する。
黒いモヤ。
主にはかつて、夢を共有した仲間がいた。しかし最後は、その者達に裏切られ幕を閉じた。
流れ込む怒りは、俺のものか、聖剣のものか。
分からないけど、もう、いいか。
度重なる精神の疲弊。
気怠さに瞳を閉じていく。
残された理性が微かに警告を鳴らしている。
しかし瞼は止まらない。
そういえば、赤の景色を見た時に感じた懐かしさは、何だったのだろう。
その思考を残して、瞼が完全に下ろされ────
カツンっ。
響く杖の音。
──やれやれ、あまり、自分のエゴを押し付けるなよ。エクスカリバー。
シリアスは次で終わらせるんや!
そのうちアーサー王の物語を投稿します。したいです。できるかな。