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異世界転生が闇すぎたんですが ?(キレ気味)  作者: 鹿里マリョウ
プロローグ 強制転生 TO THE FIRST DAY
6/23

006 しょうがねえだろ、見えねえんだよ!!

















 〝迷わずの森〟、はるか昔より神聖な場所として存在している深い森の中心部。丸く木がはけ、残された緑の絨毯が楽しげに踊っていた。

 星が煌めくその下で、年老いた男と、手を繋ぐ男女が泉へと向いていた。


「それではこれより、聖剣の儀式を執り行います」


 ソウレスが重々しく口を開く。先程までの飄々とした雰囲気が嘘のようだ。


「かつて、かの建国の大英雄アーサー・ペンドラゴンも受けたとされるこの儀式ですが、真の勇者が泉に腕を浸せば、聖剣が顕現するというものになります」


 そんなことより勇者をお断りしたいんですけど、とりあえずこの儀式で聖剣さん出てこなければ辞めてもいいんですよね?よーし、聖剣さん出てくんな!


「もし、──もし万が一蒼流殿が真の勇者と認められなければ・・・・・・いえ、やめておきましょう」


 出てこい!!聖剣さん全力で出てこい!!!!


 ・・・・・・ん?てかそんな危険な儀式なら受けなければよくね?


 そうじゃん。わざわざそんな危険な物に挑む必要ないじゃん。


「──あの、やっぱり辞退しようかな〜、なんて」


 頭を掻きながら腰低く申し出る。


「ではそろそろ儀式を始めさせていただきます」

「え?なんで無視したの?いやあの辞退したい・・・・・・」

「〝──応えよ応えよ聖剣よ〟」


 両の手をやけに芝居がかった動きで広げ、ソウレスは高らかに声を上げる。


「いや詠唱開始すんな。ちょっとやめて、泉光出しちゃってるから。眩く輝いちゃってるから」


 泉の水面より吹き出した光が瞳を焼く。

 目を細めるが、視界は真っ白。前も後ろも上も下も全て分からなくなりそうだ。


「ぐっ、くぅ──〝我、勇気ある者ぞ。人を導く者なるぞ。姿を示せ聖剣よ。我は王の遺志を継ごう〟」


 おじいちゃん苦しみだしちゃったよぉ!?絶対ヤバい儀式だよコレ!!


 慌てふためく俺のことなどお構い無しに、吹き出る光量は留まる所を知らず、森全体を包み込む。


「が、ぐぁあああああああ、はァ、はァ──〝光を束ねし聖剣よ。今こそ眠りを覚ます時、我が名は──〟」


 もう死にそうなんですけど!?泉からの謎パワーで聖剣さんが覚める前にソウレスさんの方が長い眠りに着いちゃうよ!?


 光のせいで姿は確認できないが、声音から察するに相当やばい状態なのだろう。

 それでも、ソウレスは奥歯を噛み締めながら続ける。


「〝我が名は──清水蒼流であるッ!!〟」


 ・・・・・・



 ・・・・・・



「・・・・・・え?何お前勝手に人の名前──」


「今です蒼流殿!腕を泉に浸して下さい!」


 使ってんの?という講義の声を遮ってソウレスが叫ぶ。キレそう。

 しかし(しわが)れた眼光は驚く程の気迫が篭っていて、

 不安に揺れ動く身体が、あまりの迫力に押され前に出た。


「い、いや、そんな事言っても眩しすぎて泉が何処にあるのかも──!」


 が、瞼さえも突き抜けて両目を襲う白光。

 光に逆らって進もうとすると、右手が後ろに引っ張られる。シルヴィアか。最早この距離ですら分からない。

 右手を握る冷たい手は、一瞬の躊躇いのあと、静かに離れる。

 ・・・・・・この瞬間だけは繋いでいて欲しかったなあ!お手手さみちいよお!!


「蒼流殿!もうッ、長くは持ちませぬ!」


 ソウレスの声もくぐもり、切羽詰まっている。

 自分が何処にいるのかも把握出来ないまま、兎に角足を前に出す。


 あとどれくらいだ?・・・・・・確か、この辺りだったような──


 そしてまた一歩、足を出した瞬間。






 ドボンっと、水しぶきの音がした。






「「・・・・・・え?」」


 地上より零れた呟きが届く。


 ・・・・・・ちゃうねん。

 ・・・・・・わざとじゃないねん。

 だって仕方がなくない?前が見えないんだよ?


 身を覆う冷たさと浮遊感。

 やがて光も収まった。

 泉に落ちた俺は、恐る恐る目を開ける。


 頭上では目を点にしたソウレスさんが口を開けて揺れていた。

 やめて。そんな目で見ないで。水面を隔てて目を合わせないで。


 水中と地上で視線を交錯させ、最高に気まずい空間を練り上げていると、


「──ッ!!!?」


 背筋に氷柱が突き刺さったような錯覚を覚えた。

 泉の底からだ。

 水中の不自由さに抗いながら、できる限りの速度で下を見る。


 〝ナニカ〟がいた。

 黒いモヤのような物が蠢いている。

 水中だからでは無い。何故か息苦しくなる。

 違う、黒いモヤの中心部。そこにいる。

 〝ナニカ〟がいる。


 のしかかる嫌な予感に耐えながら目を凝らす。



 モヤに巻かれた。聖剣だった。



 神聖さなど欠片も持ち合わせていない。寧ろ何処までも禍々しい金色の剣。



 ・・・・・・・・・・・・いや、聖剣じゃねえじゃん。魔剣じゃん。


 ・・・・・・・・・





 ・・・いや、












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