003 よくガタイのいいガラの悪いモブが出てくるけど私はそんなに嫌いじゃないです
ほんのちょっとヤンデレの片鱗が見えます。
並ぶ赤屋根、並ぶ屋台。
行き交う人々に活気を受ける。
そして視線。視線視線死線。
中世の西洋の街並みを、死線を纏って突き進む。
女性からは好奇心。男性からは殺気。
それぞれ含んだお目目が、こちらに向けられている。
それもそうだろう。だって、こんな真っ昼間から白髪美少女と手を繋いで歩いてるのだから。
「ごめん状況が掴めない」
「──?」
足は止めずに顔だけ振り返る白髪美少女シルヴィアたん。
なんでこうなったんだろう。
白くひんやりとしたお手手をむにむにしながら回想する。
あれは、俺が急に窓から異世界来たーー。などと意味不明な供述をして無事頭のおかしな奴になった直後だった。
「・・・・・・蒼流、武器・・・・・・取りに行こ」
え何こいつすぐ呼び捨てしてきた。やあねえ最近の若いのは直ぐに敬いを忘れるんだからぁ。あ、俺じゃん。
という流れで行先も告げられず手を引かれているのだ。
どうだ皆さん。私の状況が分かったかな?私は分かりません。
「おーいおいおいおい、えれえべっぴんさんがいるじゃねえか!あっひゃあ!」
「ハッハア、色んな服を着せて遠くから見守ってやりてえなあ!」
がたいのいいチンピラペア(穏健派) が あらわれた!
そうりゅう は がたいのいいチンピラ(穏健派) を モブ と なづけた!
「やあどうもこんにちはモブAさんモブBさん」
「ああん!?てめえ初対面でその口の利き方はなってねえんじゃねえのか?いやマジで心配になるくらい」
がたいのry は キレた!
これ は 10わり そうりゅう が わるい。
金髪モヒカンのモブAが凄く凄い形相で見下ろしてくる。こわい。
「────しないで」
「「「え?」」」
シルヴィアの口からボソリと零れた囁きは、よく聞き取れない。しかし、その声音は酷く冷たく感じられた。
呆けた顔の三人の視線が集中する中、シルヴィアは再度告げる。
「二人っきり、の、時間・・・・・・邪魔、しないで──!」
物理的重圧を感じる程の怒気が溢れ出した彼女の瞳は、美しい白亜に、微かに影が差していた。
怒気でドキドキ・・・・・・なんちゃって。
「じょ、嬢ちゃんどうかし──」
第一に口を開いたモブBが、宙を舞った。
蒼流と未だに繋いでいる左手は一切使わずに、細腕一本でモブBの胸倉を掴んで宙に投げる。縦に二周ほど空中回転した後頭から不時着。喋りかけていたため舌を噛んだ状態で気絶しているようだった。
彼はスキンヘッドで頭部の防御力が低そうなのに・・・・・・。
「お、お前なにして──」
第二に口を開いたモブAも、宙を舞った。
蒼流と未だに繋いでいる左手は一切使わずに、細腕一本でモブBの胸倉を掴んで宙に投げる。縦に二周ほど空中回転した後Bの隣に不時着。ちなみに喋りかけていたため舌を噛んだ状態で気絶しているようだった。
「蒼流・・・・・・行こ?」
何この子ちゅよい。
まるで何も無かったかのように平然と言ってくるシルヴィア。
息が詰まる怒気はなりを潜め、彼女は歩き出す。
しかしその手だけは、モブ達と出会う前よりも、固く固く結ばれ、まるで決して話さないと意思表明をしているかの如く。
シルヴィアの進む先に自然に作られた人の割れ目。
シルヴィアと蒼流が去った後に残ったのは、静まり返った街と、舌を出して白目を剥く二人のモブだった。
可哀想に、モブ。
お手手むにむにしたい。