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異世界転生が闇すぎたんですが ?(キレ気味)  作者: 鹿里マリョウ
プロローグ 強制転生 TO THE FIRST DAY
21/23

021 岩から生まれた岩太郎

なんか長くなっちゃいました








 ──反吐が出る。



 ──心底、反吐が出る。



 〝天魔〟という種族に生まれた。


 その種族は神の力を宿す。

 比喩ではない。正真正銘の神の力。

 というのも、彼らが暮らす地には、かつて存在した神々が扱った魔力、〝神性〟が内包された宝玉が祀られていたのだ。


 宝玉の恩恵を色濃く受けた魔族が〝天魔〟である。

 背中に生える純白の羽も神性の影響である。


 しかし、それは結局、宝玉がなければ唯の魔族である。


 にも関わらず、周りの同種は自らを選ばれた種族だと自称した。

 なんとも、醜い選民思想であるものだ。


 力をお与えになる神を崇め、正装である白の司祭服に身を包みながら、自分自身も神の一族だなどと的外れなことを抜かしている。


 嫌いで嫌いで仕方がなかった。

 彼らの中にいるだけで、気が狂いそうになった。




 ──だから、壊した。




 宝玉を壊してやった。


 結果いとも簡単に、彼らは選ばれた力を失った。唯の魔族になったのだ。


 ただ、砕けた宝玉から膨大な神性が溢れ出したのは予想外だった。

 恩恵により神性を保管する器がこの体にはある。

 凡そ想像つかぬ程の神性が流れ込む。

 しかし同時に、その器は消失した。恩恵は跡形も残さず消え去ったのだ。


 残されたのは、保管場所を失い身体中を暴れ回る神性。

 神性は、神の下でなければ存在できない。


 このまま消えて無くなる、そう思われた。


 だが、ここで更に厄介な現象が起きてしまった。


 神性が、元より存在する普通の魔力と溶け合い始めたのだ。

 かなり特殊ではあるが、神性もまた魔力である。

 いわば、同じ容器に塩水と水を入れれば混ざり合うのと同じ道理だ。


 宿主に定着する魔力であり、宿主から離れる魔力でもある。




 その矛盾が、







 ──神性を反転させた。







 白かった翼は漆黒に染まり、

 体内からはおどろおどろしい力がこみ上がり、

 神性が編み込まれた純白のシスター服は黒く変色し、


 世に聞く天魔とは、真逆の容姿の魔族となった。



 当然、他の〝元〟天魔たちは、憤怒に顔を歪めて口々に罵ってきた。

 その顔はもう神々しさなど影もなく、欲と怒りに狂った、醜いナニカだった。


 お前は堕天した!などと、

 だから嫌いなのだ。

 自らを天と名乗る傲慢さが。


 本当に、反吐が出る。



 その直後に彼らは怒りに任せて封印魔法を発動した。

 身に残る僅かな神性全てを、種族全員で練り上げて。


 反転──いや、〝堕天〟した魔力に馴染んでいない身体は、ろくな抵抗も叶わず封印に飲まれる。



 かくして、この世界から〝天魔〟という種族は消えたのだった。






 ■■■






 あれから、何年たったのだろうか。数年ほどだろうか。いや、そんなに経っていないかもしれない。

 封印は依然として解かれない。

 真っ暗な闇に、一人。

 暇、と言うと少し違う気がする。そんな余裕から来るものではない。

 ──ただ、気が狂いそうだった。





 何十年?何百年?

 封印は依然として解かれない。

 光とは、どのような物だっただろうか。

 音とは、どのような物だっただろうか。

 ・・・・・・世界とは・・・・・・・・・・・・。





 この封印は、とても堅牢なものらしい。

 絞りカスみたいな神性でも、神性は神性。それを種族総出で集めたのだ。この封印が破壊するのは至難の業だろう。


 いやしかし、待っていれば、きっと誰かが解いてくれるはずだ。

 ・・・・・・きっと。




 また、大分月日が経った。

 まだ助けは来ない。

 神様というものに見捨てられたのだろうか。

 ・・・・・・堕天しているのだから当然と言えば当然か。





 ・・・・・・。





 ・・・・・・そろそろ、限界だ。





 ・・・・・・もしかしたら、


 ・・・・・・もしかしたら、永遠に、このままなのではないか?











 ──嫌だ。











 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい!!!!!!!


 助けて神様!!助けて!!!!!













 ハハ、











 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!

 神なんていない!!神なんていないんだ!!

 もう何千年と待った!!!!

 だがやはり、神様なんていなかった!!!!!

 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・ハハ・・・・・・。





 ・・・・・・・・・・・・。





 ・・・・・・・・・・・・。





 ・・・・・・・・・・・・。








 ・・・・・・・・・・・・誰か。







 突然に、偶然に、何千年の封印が断ち切られる、数十年前の記憶である。






 ■■■






「────かみ、さま?」


 先程まで岩があった場所に、シスター服の女性が跪いている。

 ぼんやりと見上げてくる瞳は、何処か焦点が合っていないように感じた。


 ・・・・・・岩から生まれたから岩太郎と名付けよう。


「ぁ、あぁあ、かみさま、かみさま・・・・・・!」


 昏い瞳に大粒の涙が輝きを灯す。


「かみさま、かみさま、かみさま、かみさま・・・・・・!!」


 涙が止まらないまま、彼女は俺の方へと身を乗り出そうとしている。

 上半身を持ち上げるため腕を着く。

 が、直ぐに肘が崩れ落ちてしまった。

 まるで、体の動かし方を忘れてしまっているかのようだ。


「かみ、さま・・・・・・かみさま、かみさま、かみさま」


 転倒し砂に汚れた顔も気にとめず、彼女が這いずって進んでくる。

 濡れた双眸は、俺の顔から一瞬たりとも外れていない。


 遂に俺の足元まで辿り着き、靴に手を伸ばしたその時、


 彼女の背中に、一筋の剣閃、そして炎を纏った拳が叩き落とされた。

 容赦という言葉の無い無慈悲な剣と拳が、大切な人に触れようとする愚かな外敵を狙う。


 あわや直撃というところで、黒いヴェールが二つの攻撃を受け止めた。


 無防備な背中に向けた致死の一撃が不発に終わる。シルヴィアとヤミリーは驚愕に目を開いていた。


 俺は満身創痍な女性の背中に殺意増し増しスーパーアタック決めるお前らの方にびっくりだけどな?


 しかし意外だったのは、サミがこの状況を静観している事だ。

 シルヴィアやヤミリーと似たような思考回路を持っているのだが、攻撃には参加していなかった。

 サミの方を見ると、無感情な瞳と視線が重なった。


 そして気づく。


 サミは黒翼の女性に対する警戒度が高くないようだった。

 この場合の警戒度とは、自分を使ってくれる人に危害を加える可能性があるかどうか。その点で岩太郎は警戒対象外。


 そもそもサミは、俺への愛情がある訳では無い。

 岩太郎と俺がどんな関係になろうと、自分を使ってくれさえすればいいのだ。

 好きだから動くシルヴィア達とは、根本からズレているし、複雑だった。


「どうしたんだいそーりゅう?あ、もしかしてそいつ邪魔なのかな?殺そうか?」


 ずっと見つめ続けていたらバイオレンスなことを口走ってきた。

 この幼女ヤバい。

 俺を好きかが違うだけで、発想は同類だった。


 ちっちゃい悪魔に慄いていると、岩太郎が足にしがみついてきた。


「ああ、かみさま、救っていただきありがとうございます。本当に、本当に」


 封印されていた割にちゃんとお礼言えるいい子だった。


「一生仕えます。なんでも命令してください・・・・・・!」


 こいつヤバいんだけどぉ!!誰だいい子とか言った奴!!


 次の瞬間、冷気が俺の鼻先を通り過ぎた。

 眼下には、黒のヴェールが巨大な氷柱(つらら)を阻んでせめぎ合っている。


「──は?待てよ。それってつまり、ボクの居場所を奪うってこと?」


 結局こうなる(諦め)。

 怒っちゃったよ、自分の居場所を侵食されることは許容できない系幼女サミ・ニイムが。


 怒気を立ち昇らせるサミは、次なる氷柱を生み出し、氷の雨を降らせる。


 止まない追撃にいい加減鬱陶しくなったのか、それともヴェールの耐久値がレッドゾーンに突入したのか、遂に岩太郎は視線を移した。


「失せろ。神様との会話の邪魔だ」


 ごめん俺一言も発してないから会話では無いと思うよ。はい論破、ウェーイwww(揚げ足取り委員会)。


「いや、うちらの隊長は一言も発してないんだから会話ではないでしょ」


 リリエルさんが素の揚げ足取り委員会な件。





「──ほう?」





 背筋が凍る錯覚に陥った。


「貴様、我が愛が一方的な、独りよがりな物と言ったのか?」


 え?違うの?


「え?違うのかしら?」


 もうシンクロが凄い。そしてリリエルの勇気よ。強キャラ感ビンビンの奴前にしてこの態度だもん。


「ハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!」


 やだこいつ怖いんだけど。


 長く続く狂気的な高笑いは、しかし突然止まった。

 息が詰まるような静寂が突如訪れると、黒翼がはためく。


 ・・・・・・でかい。

 先程よりも明らかに巨大化している。

 片翼ですら俺の全身を包める程だ。


「余程死にたいようだな」


 静寂に吐き出された言葉は、呪詛のようにドロりと耳に残った。

 雰囲気変わりすぎじゃね?


 殺気を感じ取った面々が即座に武器を構え直す。

 俺にだけ綺麗に殺気が当たって無い。快適だぜ。


 翼が一扇ぎ。

 彼女の身体は宙に浮く。


「失礼致します」


 何故か俺はお姫様抱っこされてしまった。やだかっこいい。

 岩太郎王子は今にも斬り掛からんとするシルヴィア達を見下ろして覇気をぶつける。


「我が名は〝ルシファー〟。堕天魔のルシファーなり!・・・・・・いや、覚えておく必要はない。貴様らはここで塵と消えるのだから」


 投げつけられる絶対的強者の風格に大地が揺れる。

 しかしシルヴィア達も、同等の怒気を荒ぶらせた。


 大地割れちゃうんじゃないかなレベルの振動の中、ルシファーと名乗った岩太郎が、此方に目を向ける。

 その顔には何処までも優しい微笑みが浮かんでいる。


「ご安心ください神様、ルシファーが直ぐに邪魔者を消し去りますので」


 テンションの差どうした。そんな優しい雰囲気じゃなかっただろさっきまで。


「そしたら、何処か山奥で一緒に暮らしましょう♡ルシファーが全部お世話いたします」


 急に将来プラン出てきやがった。しかもかなり和やか。


「──うふ。・・・・・・なってないですねルシファーさんとやら?仮にも臣下(いぬ)を名乗るならば、将来プランは全て蒼流様(ごしゆじんさま)に任せる物です。蒼流様(ごしゆじんさま)の自由を縛るなど、笑止千万ですよ?」


 割り込んできたヤミリーが、絶対に王女様が言っちゃいけないことを口走っている。

 国の未来考えろや。


「会話の邪魔だと言っているッッッ!!!」


 至福のひとときを毎度遮られ、あまつさえ自分と主の関係を否定され、ルシファーは遂に大噴火を起こした。

 ルシファーの身体から闇そのものが(ほとばし)る。

 もう誰にも止められない。



 しかし、それでも、勇気を振り絞る者はいるものだ。


 白い頭に細い肢体。喧しい音を動く度に響かせる。


 カタカタカタカタ!!!!



残りも僅かなスケルトンが、ルシファーの足下で群れを成していた。


 ほ、ホネンジャァアアアアア!!


 最弱の魔物が逃げずに強敵へと立ち向かう、その姿だけで俺はホネンジャーのファンと化した。


「目障りだ──」


 霧状の闇が、スケルトン達を呑み込んで音もなく通り過ぎる。


 ただそれだけで、そこに居た全てが消えた。


 ほ、ホネンジャァアアアアア!!


 超合体ホネンジャーは死んだ。応援してたのに・・・・・・。

 でも、彼らは勇気を残してくれた。

 立ち向かう勇気(影響受けやすい系ファン)。

 よし、先ずは声を掛けて相手の出方を伺おう。


・・・・・・ゴクリ。


「ル、ルふぁしゃぁさん」(ル、ルシファーさん)


 ・・・・・・噛んじゃった。

 ルファシャーさんになっちゃった。



 因みに余談だが、岩太郎もといルシファーもといルファシャーさんは、実は俺の声を聞くのは今が初だ。

 そう、初なのだ。つまりどういうことが起きるかと言うと、


「ぴゃ、ぴゃぁぁぁ♡♡♡♡♡」


 いやそうはならんやろ。

 俺への態度と俺以外への態度どうなってんだ。


 ルシファーは極度の赤面で俯いた。

 この場を覆い尽くすほど広がっていた闇も収まり、僅かな残滓がチロチロと羽の表面で踊っているだけとなる。


 想像以上のピュアで可愛らしい反応であった。


 戦意も霧散し、怪獣大対戦は起きず、平和に解決。



 ──とはいかなかった。


 この平和を破る者がいたのだ。
































「ホワチャァアアアアアアアアアアアア!!!!!!」







 そう、


 俺だッッッッッ!!!!!!










多分これがラストヤンデレになりそうですね。

あと二人考えてたんですが多すぎても扱いきれないなと思ったので断念しました。

でもそのキャラ達も別の短編とかで書くかもです。

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