019 クレイジーパーティーだねこれは
一話でクエスト一つ終わらせちゃおうと思ったが全然筆が進まなかったので二つに分けます。
「魔物討伐?」
集められたうんちゃらかんちゃら隊の面々。
その中でキースが口を開く。
「アア、東の墓地で狂化したスケルトン達が暴れているラシイ。コイツらを一掃してきてクレ」
「スケルトン·····ま、肩慣らしには丁度いいかもね」
キースの話に納得の表情を浮かべてリリエルが答えた。
スケルトンはゴブリンと並ぶ最下級魔物だ。
この部隊の連携能力を確認するのにも適任な任務だろう。
まあ、研ぎ澄まされた殺気をぶつけ合っているこの三人に、連携などという言葉が存在すればの話だが。
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細い冷気が肌を撫でて通り過ぎていく。
満月がてっぺんから妖しく見下ろす時刻は深夜。
東の墓地。
そこは荒んでいるの一言に尽きた。
いくつもの墓石が倒れ、苔は生えたい放題だ。
狂化スケルトンに占領されてからは、手入れなどできようはずもなくこんな有様になってしまった。
「まずなんで夜なのか聞きたいね」
朝で良くないか?別に朝だからといって魔物が消える訳でもないし。
視界も著しく低下する。
いくら予想以上に墓地までが遠くて着いたのが夜だったとしても、そこは寝ようぜ。
怖いんだけど。ただの肝試しじゃねえか。
一人で足踏みしていると、他のシルヴィア、ヤミリー、サミ、リリエルの四人は、特段怖気付くことも無く墓地の中へと入っていく。
ちっ、怖くなった女の子が思わず抱きついてくるっていうのも無いか。
気落ちしながらも、置いていかれると尚怖いので後を追う。
足を一歩踏み出した。その時だ、何かを蹴ってしまった。
軽快な音で白い球体が転がる。
石にしてはやけに軽かったが何だろうか。
木の根に阻まれて止まった球体に目を凝らす。
人の頭蓋が、そこにはあった。
·····しかも、しかもだ。
何か、目が光っている。
かつては眼球があったであろう二つの空洞に、真っ赤な光点が揺らめいていた。
「いやぁあああああああああ!!!!」
恐怖に染め上がった俺は、飛び跳ねる勢いで近くを歩いていたヤミリーにダイブした。
「そ、そそそそそそそう、そうりゅ──そ!?蒼流様!!?」
「が、がががががががい、がいこ──が!!骸骨ッ!!!」
カタカタと頭蓋が微振動で奏でる。
いや、頭蓋からだけではない。
一つ、二つ、と振動音が増えていき、やがてそこらじゅうが喧しくなった。
頭蓋がふわりと浮上した。
カタカタ、カタカタ、鳴り続ける。
カタカタ、カタカタ。
足元を何かが通り過ぎた。
錆び付いたように重い首を下に向けると、白骨の手が地面を這っていた。
「ひぃぃぃぃ!?」
カタカタ、カタカタ。
白い手が頭蓋へ向かう。
宙に漂う骨の頭が、まるで磁石のように周囲に転がる無数の骨を引き寄せているのだ。
骨達は、頭蓋の下まで辿り着くと、頭蓋と同じ軌道で飛ぶ。
次々に浮かんだそれらは、軽快な音でくっついた。
どんどん人型に近づいていく。
脊髄ができて背骨ができて肋骨ができて、両足も完成した。
そして最後に、俺の足元にあった左腕で、完全なスケルトンが作りあがった。
超合体ホネンジャーだ。
合体という全男子の憧れを前に俺は、
「ぴゃぁ、こわい」
ヤミリーに抱き着いていた。
だって合体の仕方が薄らキモイのだ。
そしてあの光ってる赤い眼、根源的な恐怖を誘ってくる。
超合体ホネンジャーは今すぐ放送中止にされた方がいいと思う。
「はぁ、はぁ、蒼流様♡あぁ、可愛いです♡♡うふ、うふふふふ♡」
「ぴゃぁ、こわい」
捕食者の眼光が目の前から覗いている。
光ってない赤い眼の方が怖かった。
慌てて離れようとするも、尋常じゃない力で抱きすくめられて身動き取れない。助けてホネンジャー。
救済を求めるがホネンジャーはカタカタと鳴くばかりで一向に動こうとはしない。
カタカタ、カタカタと、至る所で鳴いている。
「ホネンジャー、量産型じゃん」
思わず零れた呟きも仕方ないだろう。
視界も滞る深夜の墓地で、無数の真っ赤な双眸が四方八方に灯っているのだから。
その呟きが届きでもしたかのように、赤い灯火は一斉に揺らいだ。
一際に喧しい駆動音が耳を打つ。
スケルトンが、集団で雪崩かかってきた。
そこそこな恐怖映像に白目を剥く。
あれこれ死なね?と疑問が湧いてきたと同時に、爆炎が破裂した。
ヤミリーでは無い。彼女は俺を逃がさないことに全力を賭している。是非その熱量をスケルトンに向けてもらいたい。
炎の出処はサミ・ニイムだった。
砕かれたスケルトンの欠片が宙を舞う中、相変わらずの壊れた笑顔で見つめてくる。
「ふふ、やっぱりボクが一番使えるだろう?」
使われることが自分の存在意義だとでも言いたげだ。まあ実際その通りなのだろう。
この部隊の隊長だから俺に使われようとするのだ。その無感情さは機械と何ら相違ない。
とんでもないクレイジーガールだぜ。
次いで閃光が煌めいた。
スケルトンは跡も残さず粉微塵にされる。
「・・・・・・ん」
極太のレーザーを放ったシルヴィアは、その一文字だけを口にした。意思の疎通が難し過ぎる。クレイジーガールだぜ。
察するにどうだ私の方が凄いだろう的意味が込められているのだろう (シルヴィアちゃん検定一級)。
最後に炎柱が立ち上った。
超高熱に包まれるスケルトンたちの身体は、熱に耐えられず次々に罅が刻まれていき、やがてボロボロと崩れてしまう。
「うふふ♡見ていてくださいまし蒼流様。蒼流様に楯突いた不敬な魔物どもと、下品に擦り寄ってくる羽虫二匹を早急に駆除して見せますわ」
虫いんの?どこ?蚊かな。
俺の顔をその豊満なお胸で包み込んで離さないままヤミリーが視線を落としてくる。
こんな状況なのに感触を楽しめない。楽しんだら即食べられるという直感的恐怖を感じるのだ。クレイジーガールだぜ。
因みに俺はヤミリーより身長がある。そのため今の胸に顔を埋める体制になるには、常に中腰で姿勢を低く保たなければならない。とてもキツイ。足がプルプルしてきた。
「フフッ、ボクが一番役立つってこと教えてあげるよ」
「弱い犬ほど・・・・・・うるさい、もの」
「うふふ、蒼流様に相応しい犬はこのわたくしのみです」
狂化スケルトン討伐クエストは、突如として、第一回チキチキ誰が一番蒼流の役に立てるかな選手権に切り替わった。
やはり連携なんてなかったね。
「・・・・・・え、着いていけてないの私だけ?」
一人混乱するリリエルの肩に、スケルトンがそっと手を置いた。
カタカタ、分かるよその気持ちと伝わってくる。
数秒後に普通にスケルトンの頭蓋を弓矢で撃ち抜いていた。
は?人の心ないんだがうちのパーティー。
少し前からハーメルンにもこの話載せ始めたんですよ。そしたらそらもうすっごいヤンデレ小説投稿者様から好評をいただいて舞い上がったりしてました。