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異世界転生が闇すぎたんですが ?(キレ気味)  作者: 鹿里マリョウ
プロローグ 強制転生 TO THE FIRST DAY
12/23

012 戦いって人の部屋でやる物じゃないと思うの

感想貰えたのと戦闘シーンで興が乗ったので早く書き上げれました。やったね。














 渾身のラップも虚しくシルヴィアとヤミリーは同時に飛び出した。

 赤と白の輪郭がブレる。

 空中でしなりを効かせた二本の豪脚がぶつかった。

 弾けた衝撃波、吹き飛ばされる俺。


 ヤミリーの拳が唸る。

 重低音を乗せて打ち出されるそれは、しかし空を穿った。

 走る殴打の側面を縫うようにしてシルヴィアは避ける。

 接近を許したヤミリーの腹を今度はシルヴィアが撃ち抜く。

 えげつない炸裂音を残して刺突が鳩尾(みぞおち)を抉った──かに見えた。


 指を伸ばしたシルヴィアの手、もし直撃していれば絶命だって有り得る。彼女が目の前の女を排除すべき敵と認識した証拠。神速で迫る紛れもない殺意を、ヤミリーは鳩尾直前で鷲づかんで止めていた。


 一瞬の硬直。

 両者身体を伸ばし切った状態で、反撃、追撃は困難。

 ならばとヤミリーは掴んだシルヴィアの手を投げ捨てる。

 あわよくば地面に激突して死んでしまえと投擲したのだが、シルヴィアは空中で宙返り、勢いをゼロにしてふわりと着地した。

 次いでヤミリーも着地。


 ここまで、互いに無傷。俺、重症。

 頭に血が上って仕方が無い二人は、尚も続けるらしい。俺は見えてないのね。


 白銀の神託者は瞳を怒りで染め、真紅の王女は闘争の色で染めている。


 真紅が動いた。

 彼女の肉体から轟轟と焔が吹き出る。この世のものとは思えない光景。だがこの場で驚愕を示したのは俺だけのようだ。

 これがこの世界の日常。すなわち〝魔法〟である。

 そして絨毯が燃えているのに気づいているのも俺だけだ。頼むから気づいて欲しい。


 ヤミリーの手に炎が収束。一本の火炎棒の形を作り上げた。いや、目を凝らせば先端が鋭く尖っている。棒状と言うよりもっと戦闘に最適化された槍や矢と言った方が適切に感じた。


 紅蓮に燃え盛る煉獄の矢を、ヤミリーは素手で握る。

 涼しい顔をしている彼女は本当に人間なのだろうか。

 一歩、大きく踏み込む。

 身体を限界まで引き絞って、遂に解き放つ。



 爆発じみた一矢は、音の壁を超えた。



 捉えることすら不可能な一撃が、瞬間で距離を喰らう。

 シルヴィアの喉元を正確に食いちぎろうと牙を剥いたその時──白髪が揺れる。


 左半身を引いて最小限の動作で炎を躱す。

 それだけでは終わらない。右手で炎の矢を掴んだ。だから熱いって。

 その勢いも借りて左足を軸に一回転。炎が円状に軌跡を残す。

 彼女の一挙手一投足が、見たものの目を奪う。

 きらめく火の粉が白を彩った。


「──シッ──!!」


 鋭い息で、燃える強弓を投げ返す。

 ヤミリーが投げた音速と、シルヴィア自身の腕力の相乗効果で、炎矢は前へ前へと風を突く。


 全力投球に全力投球を重ねた炎矢に、ヤミリーは為す術もない──はずも無く、


 両手を鉤爪にして広げ、X字に空気を引き裂く。

 五指は火炎の尾を引いていた。

 宙に残る炎の爪痕は、次の瞬間爆破する。

 猛る爆炎から飛び出したのは、炎の龍。

 炎で形を成す太龍は大口を裂いてシルヴィアへと一直線に飛んでいく。


「死ね」


 ヤミリーが短く零す。

 まるでそれが掛け声だったかのように龍が吼える。

 王女様はもっと言葉を選んだ方がいいと思う。


 咆哮と熱波に大地が震える。

 そんな中、音速を超える矢が一本、炎龍へと飛来した。

 全力を重ねた一撃を、龍は特段気にする様子もなく真正面から迎え撃つ。

 龍の眉間に突き刺さった矢は、次の瞬間には燃えるの身体に溶けていた。

 たったそれだけで、音速の一矢が無に帰した。


 直接は触れていないのに真下の床が溶けていく。

 恐ろしい程の破壊力が凝縮された一撃だ。

 例え歴戦の騎士でも諸手を挙げて逃げ出すような残酷な破壊の化身。

 そんな化け物を前に、シルヴィアは全くの無表情。強いて言うなら怒りの感情だけが溢れている。それだけ。


 自然に、日常の動作と何ら変わらない気楽さで、シルヴィアは片手を掲げる。

 空気が揺らめく。

 彼女をドーム状に透明の壁が包み込んだ。


 直後、着弾。

 炎の龍がシルヴィアを呑み込む。

 少女を腹に入れた龍は止まらず部屋の壁を抵抗の暇なく突き破る。

 空へと躍り出た龍は、最後に天に昇るが如く霧散した。

 もれなく城下町では王城襲撃と騒がれ始めるだろう。


 炎の蹂躙の跡には、綺麗に溶け落ち焦げた床、未だ家具を燃やす残滓の炎、陽光が差し込む壁の大穴、そして、いたって無傷なシルヴィアと彼女を包む光の防壁。

 役目を終えた光の壁が砕け散る。


「──この程度·····?」

「まさか、そんなわけないでしょう?」


 声に嘲りを滲ませるシルヴィアに、上辺の笑顔でヤミリーが答える。


「私の為に、争うのは止めてっ!」


 底の見えない戦いを再び始めんばかり二人に、俺は堪らず飛び出した。

 よし、ちょっと言ってみたかったセリフ言えた!


「──蒼流、大丈夫、だよ?·····すぐ、終わる、から·····」


 やだこの子考え方が蛮族。


「ああっ!蒼流様に、心配していただけるなんて♡」


 どこら辺にお前を心配する言葉が含まれていたんだろう。


「兎も角お前ら、一回俺の部屋見てみ?」


 細かな破片だけが散乱するかつて扉だったもの。溶けたり焦げたりで凹凸激しい床。炭化したタンスらしきもの。そして何より風吹き(すさ)ぶ壁に空いた巨大な穴。


「·····随分、開放的な·····お部屋、だね」

「ぶっ飛ばすぞ」


 強制異世界転生二日目、お部屋全壊。

 心が折れそうです·····。




















そろそろヤンデレ要素強めていきたいな

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