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第十三話 元僕っ娘系ガール

プロローグ~第十二話の改稿に時間がかかってしまい、最新話の投稿が遅くなってしまいました。

申し訳ありません。

 久しぶり? 「はじめまして」ではなく?


「萌絵ホント変わってないね。さすがに口調は変えてるか」


 勝手に話を進めないでいただきたい。こっちはまだ状況の整理ができてないんだよ。

 その女子は笑顔のまま俺を見ている。「久しぶり」と言ってるんだから面識はあるんだよな。

 

「萌絵?」


「えっ、ちょっと待って。待って」


 これはどう返すべきか。素直に「覚えてない」と言った方がいいかな。


「もしかして…覚えてない?」


 そんな悲しそうな目で見ないでほしい。本音言いづらくなるから。こうなったら自力で思い出すしかない。

 そもそもこの子の名前が分からない。大西さんの時と同じようにAさんにしとこう。

 俺が適当に笑顔でごまかすとAさんも笑顔で返してきた。いやー、どうしたものか。

 Aさんは俺に近づき目を合わせようとした。俺はとっさにらす。

 

「僕のことホントに覚えてない? 小学生の時同じクラスだったじゃないか」


 なんでいきなり僕っ娘口調? というか同級生? まさか…。確か名前は…。


「い、五十嵐…愛…華?」


 Aさんもとい五十嵐愛華は口を尖らせた。間違ってたかな? だとしたらごめん。 


「ぎこちないけど、せーかい」


 やっぱ合ってた。つーか、リアクションがややこしい。

 五十嵐愛華いがらしあいか、俺と同じ小学校の卒業生で俺の記憶では小学生の頃はずっと僕っ娘口調で喋っていた。本当は中学も同じ学校のはずだったのだが、家庭の事情というしがらみによってそれは叶わなかった。表現が大げさなのはご了承願いたい。

 でも、こんなところで再会するとは思わなかった。俺がこの駅に来ることを知っていたのか?


「小学生のとき以来だから五年ぶりか。ホント久しぶりだね」


「うん、というか愛華、だいぶ変わったな。あの時は短髪でよく男子に間違えられてたのに、その時の面影がまったくない」


 俺がそう言うと愛華は「ふふ」と小さく笑った。

 

「な、何? 俺変なこと言った?」


「そういう萌絵は見た目も口調もまったく変わってない。もう俺っ娘は卒業したと思ってた」


「いや、口調は直そうとはしてるんだよ。でもどうしても癖で『俺』が出てくる」


「ふーん。ご両親には何も言われてないの?」


 意外と言われないんだよな。まあ母子家庭だから父親がいたら多少は違ってたかもしれないけど。


「それより愛華、ここには何の用で来たんだ。俺に会いに来たとかじゃないよな」


「萌絵に会いに来たんだよ。それ以外で来る理由ないもん」


 あ、そうですか。でも後は帰るだけなのでここでお別れですね。…とあっさり帰ってしまうのは人としてどうなんだろう。

 それに、愛華は顔こそ笑っているがその目は俺に狙いを定めている。「そう簡単に帰らせねぇよ」と言っているかのよう。では検証。

 俺が右に移動すると愛華も同じ方向に進んだ。Uターンして左に移動すると愛華は先ほどと同様に俺についてきた。


「萌絵、せっかく再会したんだからもう少し一緒にいよ? 大丈夫、変なことしないから」


 逆に怖いわ。けどもう少し一緒にと言われても具体的に何時までだ。スマホで時間を確認すると現在の時刻は午後五時四十三分。門限ないけどあまり遅すぎると何か言われそうだしな。


「じゃあ…、六時半まで」


「オーケー、ありがとね萌絵」


 俺は母親に帰りが遅くなると電話で伝え、愛華と一緒に駅構内にある喫茶店に行った。

 春とはいえまだ外の風が冷たい。なので体を温めるのには丁度いい場所だ。


「この駅の場所は誰から聞いたんだ? 一輝か」


「そうだよ。カズくんと会うのも久しぶりだったから思わず抱きしめそうになった。冗談だけど」


 最後の一言が余計な気がするけど、再会していきなり抱きしめるのはさすがにね…。

 小学生の時、一輝と愛華は学年が違うから会う頻度は少なかったけど、仲は良かったな。『愛姉あいねぇ』って呼んでたし。


「一輝も驚いてたんじゃないの? そうでもない?」


「萌絵以上に驚いてた。『まるで別人』だって」


 そりゃそうだ。顔立ちもかなり大人っぽくなってるし。

 愛華はコーヒーを啜りカップを置くと、鞄からスマホを取り出した。


「メールアドレス教えて、SNSでもいいよ」


「SNSはやらない。アカウント作るの面倒だし」


「そうかな。メールって既読機能ないしすぐ返事出せないから不便な感じするけど」


 しょっちゅう会話する人から見ればそうだろうな。でも俺の場合、基本的に恵と由佳しか会話しない。関野坂もメールアドレスを交換したけど会話をしたのは一回きり。

 結局、愛華とはメールアドレスを交換することにした。気が向けばSNSに移行するけど今のところはその予定はない。

 

「ねぇ、萌絵って彼氏はできたの?」


 コーヒーを飲む前でよかった。むせるならまだマシだけど、下手したらそれ以上の惨劇になってたかもしれない。


「今はいない。…愛華は?」


「私も、告白は何度かされたんだけどみんな外見しか見てないんだよね」


 それは仕方ないと思う。人は九割が見た目って言われてるからな。合ってるかどうかは定かではないけど。


「そういえば昨日、学校の近くでかっこいい人見かけたなぁ。彼氏にしたいけど中身がわかんないと告白しづらいんだよね」


 まあ世の中いろんな人がいるからな。イケメン男子の一人や二人はいるだろう。


「背が高くてなんか瞳が赤かったんだよね。多分コンタクトだと思うんだけど」


 …またデジャブだよ。多分知ってる人だ。


「その人、二重じゃなかった?」


「言われてみればそうだった。もしかして知ってる人?」


「一回だけ会ったことある。悪い人ではないと思うけど…」


「思うけど?」


「三度の飯よりエロ本が好きな人だよ」


 愛華はすっかり黙り込んでしまった。やっぱり人は中身だな。




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