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第十一話 ゴールデンウイーク②

 ゴールデンウイーク四日目。え? 二日目と三日目? ああ、二日目は初日に買った『私は同性で同(以下略)』を読みふけって、三日目は格ゲー(格付けゲーム)を家で一日中プレイしてた。はい、回想終わり。

 で、今日は恵に呼ばれて先々週行った喫茶店で待ち合わせをしていた。

 待ち合わせの時刻は午前十時だが俺は十五分前に着いた。来るのが早かったとはいえ、呼んだ本人が遅れるとはどういうことだ。

 コーヒーを啜りながら文庫本を読んでいると恵が俺に気づいて走ってきた。


「先輩、早いですね。まだ十分前ですよ」


「ある程度時間に余裕を持たせた方がいいと思って早く来た。それで、俺を呼んだ理由は何?」


「お礼をしたいと思いまして…」


 お礼?


「私、関野坂先輩と正式に恋人になったんです!」


 …え? 今この子なんて言った?


「告白したの?」


「ええ、昨日」


 ちょっと待て。俺が関野坂と二日にファストフード店で会話したとき「もし告白されたらどうする?」って訊いて関野坂は「断るかな」と返した。断定ではなかったにしてもなんでOKしたんだ。いや、付き合ったのはいいことだけど…。


「恵、関野坂になんて告白したんだ」


「え。単刀直入に『私と付き合ってください』です」


 シンプルだな。てっきり恵が必死に説得したのかと思ってたけど違うらしい。じゃあ、関野坂の気が変わったとか。たった三日で? 考えにくいけどそれが一番自然な感じがする。


「先輩、私のサポートしてくれてありがとうございます。直接お礼したくて呼んだんですけど大丈夫でしたか?」


「大丈夫大丈夫、ダメだったら断ってるよ。それより由佳には告白したこと言ったのか?」」


「それが…、大園先輩ゴールデンウイーク中はずっとバイトらしくて直接の報告は月曜日になると思います」


 休み返上でバイトか。まあ稼げるときに稼いだ方がいいか。

 それはそうと、関野坂の心理にどういう変化があったのかを知りたい。関野坂本人に訊きたいけど連絡先知らないからな。…恵が知ってるじゃん。ということで俺は恵から関野坂の連絡先を教えてもらい、本人と直接会うことにした。

 恵とは午後十二時までショッピングモールで買い物に付き合い、店を出たところで別れた。

 関野坂との待ち合わせ場所に選んだのは店から約二十分歩いた先にある公園。人気ひとけはないので待ち合わせ場所としてはうってつけだ。

 だがいつまで経っても関野坂が来る気配がない。今日は待ってばっかりだな。午後二時を過ぎ、関野坂がようやく姿を見せた。


「遅れて悪い。この辺の道あんま通ったことなくて時間食った」


「別にいいよ。俺がいきなり呼んだんだし」


「なんでメールにしなかったんだよ。その方が早いだろ」


「直接訊きたかったから」


 関野坂は怪訝な顔で俺を見た。まあ、話の内容は言ってないし、何を訊きたいんだよって話だよな。


「訊くって何をだよ」


「今日恵に聞いたんだけどさ、付き合ったらしいな」


「ああそうだよ。それがどうした?」


「四日前に恵の事で話しただろ? そのときに俺が訊いたこと覚えてるか」


 関野坂が合点がいったのか、「あ~」と言って軽く頷いた。


「俺がなんであの子の告白を承諾したのかを訊きたいんだろ? 四日前の質問の答えと現状が矛盾してるからな」


「最初は聞いたときは驚いた。どういう気の変わりようなんだ」


「別に気変わりしたんじゃない。俺が折れたんだよ」


 折れた? どういうことだ。


「ホントは承諾する気なかったんだけど、勢いがすごくて断れなかった」


 つまり説得されたってことかな。関野坂の話によると恵が告白した後、

 

『君みたいな可愛い子と俺みたいな普通の男は釣り合わない』と関野坂が言って、


『そんなことありません! 関野坂先輩は優しいですし、私のわがままにもいつも付き合ってくれた。普通とかそんなの関係ないです!』と恵が反論。


『でもさ、俺と君は会って二週間ぐらいしか経ってないだろ? お互いまだ知らないこと多いのに付き合うの早くないか?』と関野坂が再反論したけど、


『そうですけど。これから知ればいいじゃないですか』と恵が再々反論。


『そうかもしれないけど、君のことをよく知っている人の方が合うと思うよ』と関野坂が再々々反論すると、


『先輩が私のこと一番知ってるじゃないですか。授業のとき以外はずっと先輩といますし』と恵が再々々々反論。


 そんなやり取りを十回近く繰り返し、最終的に関野坂が折れたらしい。


「もう途中で言うことなくなったし、あの子も俺のこと思ってくれてるみたいだからOKした」


 なるほど。つーか恵がそこまで喋れるなら俺のサポート要らなかったんじゃ…。まっ、いっか。


「まあ、せっかく付き合ったんだからちゃんと尽くしてやんなよ」


「わかった。まだ苦手なとこあるけど」


「どういうとこ?」


「ここ最近俺に体を密着させたり上目遣いで見つめたりして、結構恥ずかしいんだよ。最初に会った時とギャップがありすぎてちょっとビビった。あっ別に嫌いなわけじゃない」


 すげぇアピールしてたんだな。やはり人は見た目で判断できない。


「早乙女、お前もそうだったよ。最初会った時とのギャップはあの子以上だった」


「え、そうか?」


「確か中一の時だったか。同学年の女子が上級生の男子と絡まれてるときお前助けに行っただろ?」


 そういえばそんなことがあったな。相手が大柄の男子だったのは覚えてる。


「詳しいことは忘れたけど、確か相手の男に『女を舐めんじゃねぇ!』激怒したのは鮮明に覚えてる。俺、遠くで見てたけどマジでビビった。会ってすぐの時は寡黙でおとなしかったからその分怖さも倍増したよ」


 もう四年前のことなのに今振り返るとすごい恥ずかしい。それ以来、卒業するまで数人の生徒から「女番長」の異名で呼ばれたのは黒歴史。その後、俺と関野坂は中学時代の話で盛り上がり午後四時に別れた。



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