(グランデール社・異世界帰還者保護事業部創設者)ルシエル・グランデールの祝福
帰還勇者の孫〜異世界転移したけど戦闘力が無いんです。だから収納スキルで戦います。〜
初投稿です。
お試し読み切りですが、楽しんで貰えたら嬉しいです。
読みづらい所や誤字・脱字等があるかもしれませんが、暖かい目で見て下さると助かります。
今後も活動していこうと思ってます。
応援宜しくお願いします。
俺の名前は神城翔。
もうすぐ18歳になるごく普通の学生のはず・・・いや、普通とは違うかな。
俺は今、【グランデール社・異世界帰還者保護事業部】という組織の管理下に置かれているから・・・俺は帰還者じゃないんだけど理由があってね。
この組織、かなり昔から存在していて、ルシエル・グランデールっていう女の子が創設したらしいんだけど、設立後に『異世界に行って来るから後の事は宜しく!!』と言って居なくなったらしい。
異世界召喚や転移って、昔から行われていたみたいだね。
で、俺が組織の管理下に置かれている理由なんだけど・・・
50年位前に異世界のサウザーン王国から帰って来た4人【父方・母方の両祖父母】(以後爺さんズ)と、俺が5歳の時に異世界召喚で爺さんズと同じ異世界に行ったまま帰って来ない両親の影響だ。
一家揃って召喚体質?召喚家系?かもしれないので、5歳から管理下に置くことにしていたみたいだ。
爺さんズ4人は本当に凄かったらしい。(本人達談)
精霊王と神獣王と爺さんズの6人で魔王を倒しただけでなく、上下水道等のインフラ技術やこちらの食文化等を伝えて王国の発展に貢献したらしい。(本人達談)
精霊界に精霊の庭なる独立した土地に拠点を置き、豪邸を作り活動していたらしい。(本人達談)
異世界で頑張った事は確かだとは思うよ。
日本に帰還した時は組織に支援してもらったらしく、両親が召喚されるまでは異世界帰還者保護事業部で働いていたし、その後もたまに手伝っているので組織との関係は良好だし、帰還者達にも顔が利く。
おかげで俺は何時召喚されても困らない様に、5歳からずっと爺さんズと組織から地獄の特訓を受ける事となってしまった。
学校も組織が運営している特殊な学校へ入学させられたよ。
そのせいで、キャッキャ!!ウフフな学生時代なんて夢のまた夢なんだょー。
帰還勇者達って、魔法とかの能力が殆ど失われてるけど、人間場馴れしてるし、チートだのハーレムだの封印されし深淵の力を今こそ!!とか、ちょっと引いちゃう変態さんばっかりで常識ないんだよー!!
女の子は可愛かったけど、俺はかなりのイケメンみたいで、ハーレムを作る女の敵としてジト目で睨まれる毎日だよー!!
普通なら俺はモテモテのはずだよねー?
生活環境が異常なんだよー!!
だれか、俺の青春を返してくれよー!!
それに加えて、特訓は本当に大変だったんだよー!!帰還してきた本物の勇者さん達との模擬戦とかー、サファリパークや無人島放置1ヶ月とかー、廃校で罠有り・奇襲有り・攻撃有りの完全武装鬼ごっこ【勇者軍団対俺一人鬼・勇者軍団全員鬼対俺】とかー、本気で死にかけるんだよー!!
まぁ、おかげで探知・索敵や気配遮断・忍び足の隠密行動はトップだし、護身術もトップになったので、今では攻撃してきた勇者さんを余裕で転ばせたり、ぶん投げたり出来る様にはなったよ!!
只ねぇー、攻撃は無理ー!!武器使おうが素手だろうが無理ー!!
悲しいけど、どんなに頑張っても中学生以下なんだよねー。
まぁ、攻撃に関しては【才能無し!!】って事だね。
んでもって、全員で出した結論は?
『護身術が神ってるから、攻撃無しで逃げりゃいいんじゃね?』
【逃走王】翔
俺の基本スタイルが確定した瞬間だった。
確かに逃走王スタイルの俺は勇者さん達すら舌を巻く程の実力だった。
グランデール社からも、召喚されなければ高額待遇で諜報部に迎えたいとの熱いラブコールを受けている位だ。
将来は超一流のグランデール社のエリートとして活躍出来るなら、それも良いかもと思い始め、異世界召喚なんか来なければいいと思ってたよ!!
この時まではね!!
【数日後の夜】
「ん?ここは何処だ?」
気が付くと俺は見知らぬ部屋の中に立っていた。
辺りを見渡すと結婚式で見た近所の教会の部屋っぽく見えるけど、なんか違うなぁ。
誰も居ないしー!!俺、1人なのに『ん?ここは何処だ?』って言ってたしー!!ハズいー!!
何て思ってたら後ろのドアが『ガチャリ』って?
「黒髪?まさか!!私が待ち望んだ方なの?」
透き通る声に誘われて振り返った俺はフリーズした・・・
絶対!!女神様だよ!!ストレートど真ん中だよ!!バッターアウトだよ!!落雷でシステムダウンだよ!!
取り乱してすまん。一目惚れでした!!
だってさ、声は綺麗だし、背中まで伸ばした銀色に輝くサラサラストレートヘアーだし、キツ過ぎず緩み過ぎない上品な青色の大きな瞳が鼻筋の通った整った顔立ちにベストマッチだよ!!
着ている純白のミニスカートドレスも文句無し!!
歳も同じ位に見えるし、もろタイプです。
ん?よく見ると頭でピクピクしてる銀色のアレは・・・ケモ耳ー!!
しかーも!!後ろで見え隠れしているアレは銀色の見事な尻尾だー!!
モフモフしたーい!!二目惚れです!!
でも、舞い上がってばかりじゃダメだな。まずは自己紹介だね。
「俺は神城翔。もうすぐ18歳の日本人です。彼女は居ません。」
名前だけで良かったじゃん!!やっちまったー!!
「えっ?カミシロ?ニホン?マモルとヒカリと同じ・・・やっぱりカケル様は私が会いたかった方です!!」
そう言いながら彼女はニパッと笑い俺に走り寄ると、両手で俺の右手を握りしめ、そのまま嬉しそうに上下にブンブン振り続ける。
尻尾も左右に激しくブンブンしてるよー。
でも、それ以上にブンブン・・・いやブルン!ブルン!と揺れている所があるよー!!
メロンがプリンでブルルン×2だよー!!
凄いんだよー!!最終兵器だよー!!生きてて良かったよー!!
非の打ち所のない完全女神です。
俺を貰って下さい。三目惚れです!!
暴走気味な俺だけどー、でも、大丈夫ー!!
こう見えてもマルチタスカーDeath!!
という事で軌道修正だね。
さっき彼女が言ってた【カミシロ・マモル・ヒカリ・日本】かー。気になるんだよねー。
だって、俺の両親の名前って、神城衛・神城光だし、偶然じゃ片付かないよね。
もしかしてココに居たり?
元気なのかな?居るのだったら会いたいなー。
日本じゃないみたいだし・・・
ま、聞いてみれば分かるよね。
「君は女神様?ココはサウザーン王国?君の言ってたマモルとヒカリは俺の両親だと思うよ。ココに居るのかな?」
俺は2つのプリンなメロンを脳裏に永久保存して、彼女の両手をそっと降ろしつつ質問した。
「私は神獣王の娘なので名はありません。そしてココは精霊の庭と呼ばれ、歴代の勇者様達が暮らしていた場所です。マモル様とヒカリ様は言い難いのですが・・・既に他界しています・・・」
悲しそうな顔で彼女が答えた。
そうか、父さん母さんはもう居ないのか・・・帰って来ない時点で覚悟はしていたつもりだったけど・・・悲しくなるな・・・
俺は目を閉じて両親と過ごした日々を思い出しながら冥福を祈った。
成長した俺の姿を見てもらいたかったな・・・
気が付くと俺の視界が滲んでいた・・・あれ?涙?俺は泣いているのか・・・どうしよう、涙が止まらない。
すると突然、目の前が暗くなり、俺は柔らかで暖かな優しい感触に包み込まれた。
多分俺は彼女の胸に顔を埋め、抱き締められているのだろう。
「我慢しなくてもいいですよ・・・気が済むまで思い切り泣いても・・・今は私が側にいますからね。」
彼女の声が聞こえた途端、俺の感情が一気に溢れ出て爆発した。
俺は生まれて初めて本気で泣いた・・・
あれからどうなったかって?
途中まで膝枕してもらいながら色々と話してたよー!!
何故彼女がココに居るのかとか、この世界の現状とか色々ね!!
要約すると・・・
爺さんズは約500年前に魔王を倒した勇者で、精霊王から精霊の庭を貰って、この建物を建てたらしく、サウザーン王国の再建にも貢献した後、忽然と姿を消してしまった伝説の英雄らしい。
やるじゃん!!爺さんズ。
その後は、俺の両親が約120年前に魔王を倒したんだけど、二人とも魔王から受けた傷が深くて、助からなかったそうだ。
精霊の庭にも出入りしていて、ココで色々な魔道具を開発していたらしく、鑑定スキル持ちじゃなくても使用可能な鑑定魔道具や、異空間収納の魔法鞄まで開発した超有名人な英雄らしいよ。
俺の家族って何者なのさー。凄くね!!
んで、ココからが本題。
約10年前にサウザーン王国の近くで何者かによって邪神が召喚されて、魔王が何体も産み出されたんで、この世界の神と精霊王と神獣王が協力して戦い、世界の破滅の危機から免れる事には成功したらしいんだけど・・・
邪神と神様は力を使い果たし、神界で眠ってしまったそうだ。
魔王達は、数体が瀕死ながらも生き残り、北の大陸で力を蓄えようとしているので安心出来ないんだってさ。
魔王数体ってヤバくね。
精霊王は、サウザーン王国近くで邪神に封印されてしまい、精霊界が隔離され、崩壊しかねない危険な状況らしく、神獣王が食い止めようと頑張っているらしい。
精霊の庭も精霊界の一部なので、彼女がココに居て守ろうとしているんだって。
有り難い話だね。
地上の精霊も段々力が弱まっていて、作物や生き物に影響が出て来ていて、このまま精霊王を救い出さないでいると大変な事になっちゃうんだって。
精霊王を救うには、邪神の造り出した封印空間に入らなければならないんだけど、それが出来るのは同格の力を持つ神様しか居ないらしいんだけど、肝心な神様が神界で眠っている状態なんでどうにもならないんだってさ。
彼女と話したのは今のところここまでだね。
「これって精霊王助けないとピンチじゃないか?」
「はい。でもどうする事も出来なくて・・・かつての勇者様達が使っていたこの精霊の庭で、ずっと奇跡を願っていました。今日も奇跡を願っていたらこの宝玉が突然光だして、その後こちらで気配がしたので来てみたら、カケル様がココに居たんです。」
俺の問いに答えながら、彼女は首から下げていた宝玉を外し、俺に差し出した。
俺は宝玉を手に取り眺めた。
それは掌サイズ程の大きさで、彩飾を施した金色の土台に赤く透き通った大きな宝石を埋め込んだ見事な宝玉だった。
「これはカケル様の御両親がココに置いていった物です。カケル様が来た時に光だしたので、何か関係が有ると思います。だからその宝玉はカケル様が持っていて下さい。お願いします。」
確かに関係が有りそうだし、預かっておくべきだね。
彼女もその方が喜びそうだし・・・
でも、この流れは俺が精霊王を助けないといけない気がするね。
だって異世界からこっちに来られる奴なら封印空間に入れそうだもんね。
名探偵もビックリの切れっ切れの名推理だな!!
そうだ!!彼女のお願いを聞くんだから、俺のお願いも頼んじゃおう。
「君のお願いじゃ断れないよー。可愛い女性のお願いは男として断る訳にはいかないんだよねー。あっ、『私なんて、可愛くなんかないと思います。』とか無しね。お願いした時点で君の勝ちが確定してるからねー。」
「あ、ありがとうで良いのかな?何か悪い事してるみたいで。」
彼女が申し訳なさそうにこっちを見てる。
可愛すぎるー!!俺、恋しちゃったかも。お願いし辛いよー!!
顔が熱いし、心臓バクバクだし、良く考えたら彼女に可愛いって言っちゃってたしねー!!
みんな、オラに勇気を分けてくれ!!
「それならさ、俺のお願い聞くだけ聞いてよ。」
「えっ?は、はい!!」
彼女もどうしていいか分からないみたいだね。
挙動不審になってるよ。
俺は膝ガクガクだけど、ここが正念場!!頑張れー俺!!
「俺の事はカケルって呼んで欲しいな。君とはお互い色々と話してるしね。あと・・・で、出来れば・・・その・・・耳と尻尾を・・・えっと・・・モフモフさせてほ、欲しいかな・・・」
「え、えっとー・・・」
よし!!ダメダメだったけどお願いはしたぞ!!
あとは彼女次第だ!!
「あのー、カケルさんじゃ駄目ですかー?いきなり呼び捨ては恥ずかしいです。あとモフモフというのは耳や尻尾を激しく撫で回される事でしょうか?男性にされるのはちょっと問題が・・・」
「カケルさんで構わないよ。改めて宜しくね!!モフモフは問題が有るのかー。おれの世界には尻尾が有る人は居ないから、可愛い君の耳と尻尾は触ってみたかったんだよねー。残念だけどしょうがないね。ゴメンね無理言って。」
撃沈しましたー!!モフモフへの道のりは険しいな。
ガックリと肩を落とした俺に、彼女が声を掛けてきた。
「あのー、カケルさん。えっと、カケルさんから見て、わ、私はか、かわ、可愛いので、でしゅか?」
何だ、この展開は!!しかも、噛んだ?今、噛んだよね!!
彼女の顔が真っ赤だぞ!!噛んだのが恥ずかしかったのか?
メーデー!!メーデー!!緊急事態発生中!!
さっき可愛いって言ったから前言撤回はしないぞ!!
「か、可愛いでしゅ!!」
俺までやっちまったー!!誘爆発生中!!被害甚大!!
俺達どうした、落ち着けー!!
「そ、そうですか。なら、ちょっとだけなら・・・その・・・モフモフしても・・・構わないかなって。えへへ。」
彼女は耳をパタパタさせ、クネクネと尻尾を揺らしながら、真っ赤な顔で俺に微笑んだ。
マジでキタァーーー!!ビッグチャーンス!!
「いいの?ありがとうね。じゃあさっき膝枕してもらったお礼に、今度は俺がするからココに。」
そう言って彼女を逆膝枕にしたよー!!
念願のモフモフターイム!!只今より開始でーす!!
モフモフ・・・『はぁん・・・』
モフモフ・・・『いやぁーん・・・』
モフ・・・『はうっ!!』
何故か空気がピンク色だよー!!大丈夫ですかー?
俺は大満足さ!!感触が最高だね!!癒されるよー!!
もう少しだけ堪能させてー!!
モフモフモフモフモフモフモフモフ・・・
「も、もう限界!!んーっ、『はむっ』」
あっ、右手噛まれたよー。モフモフし過ぎ?嫌われちゃった?
でも、全然痛くないや。『はむっ』って噛んだ彼女はすげー可愛かったら問題無しだよ。
「あっ、ごめん。俺、嬉しすぎて調子に乗り過ぎました。」
「い、いえ。凄く気持ち良かったです。それより痛くなかったですか?私達の耳や尻尾は敏感なので、あんな風に触られると感情が高ぶってしまい、感情のコントロールが出来なくなって、あんな風につい噛みついてしまう習性があって・・・牙を立てる訳では無いので怪我はしないと思うのですが・・・」
甘噛みってヤツかなー?嫌われてなかったよー。
気持ち良かったって言ってたから、またモフモフさせてくれるかなー。
モフモフコミュニケーションは万国共通だね。
彼女との距離が大分縮まったよー!!
でも、彼女に名前が無いのは不便だよね。
「うん、全然痛くなかったし、むしろ仲良くなれた気がするね。だから、出来れば名前で呼び合いたいかなー。君の名前決めない?」
「私もです!!名前で呼び合いたいです。今まで必要無かったけど名前欲しいかなって。だから私も名前で呼ぶね!!私に名前をつけて下さい。カケル、お願い!!」
キタァーーー!!カ・ケ・ルって呼んでくれたよー!!
俺も名前で呼びたいぞー!!
早速モフモフ中に浮かんでいた名前を彼女に伝えてみようっと。
「リリィっていう名前と、ユキっていう名前が俺のイメージなんだけどねー。」
「リリィがいい!!うん、私の名前はリリィで!!素敵な名前ね。ありがとう!!カケル。」
速答だよ!!気に入ってくれたよー!!
「じゃあ、リリィ、これからも宜しくね!!」
「宜しくね!!カ・ケ・ル!!『はむっ』」
リリィが俺に抱き付いて首を甘噛みした。
尻尾が激しくブンブンしてるよー。
リリィのメロンがプリンで俺に当たってるよー!!
リリィも物凄く喜んでるし、俺も嬉しいし、ウィンウィンだよー!!
浮かれまくっていた俺達だったが、俺達の体から突然光が溢れ出し、俺達を包み込んだ。
「何これ!カケルの存在を私の中で感じるよ!!何か力が溢れてくるよ。これは!!神獣王の力だよ!!カケルが私の力を目覚めさせてくれたんだよ。」
「俺もリリィの存在を感じる。今なら何でも出来る気がするね。精霊王だって助けられそうだよ。」
光の中で、俺達は互いの心が繋がった事を感じた。
そしてリリィに封印空間に俺が入れる可能性が有る事を話した。
「確かにカケルなら精霊王を助けられそうよね。でも、今は無理なの・・・これから話す事をしっかり聞いておいてね。」
俺はリリィの話に耳を傾けた。
その内容にビックリだったよ。
俺は異世界召喚されて異世界に転移したんだと思ってたけど、どうやら違うらしい。
何らかの要因でココと俺の精神体が繋がってしまった為、こんな状況になっている様だ。
リリィから見た俺は、精霊の様な存在で、存在を感じる事が出来る者なら姿も見えるし、触れる事も出来るが、実体はココには無いらしい。
つまり、今の俺はこっちの世界には居ないので、何も出来ない役立たずって事だが、リリィの見立てでは、ココが精霊の庭で世界を救った勇者所縁の地である事と、俺が勇者達の身内である事、世界のピンチに勇者の持っていた宝玉の異変と同時に俺が現れた事は、偶然とは思えず、何か意味が有るのではないか?という事だ。
絶対有るでしょ!!
「もしかして俺は近々ココへ呼ばれるのかな?」
「絶対そうだと思うよ!!ただ、こちらの神様が力を使い果たしているので、こちらからカケルを呼び出すのは難しいと思う。でも、私とカケルとこの世界の繋がりは確実に強まっているから、カケルの世界の方に何か方法が有るのかも。例えばその宝玉とか・・・」
これは絶対、爺さんズの出番だよ!!何か知ってそうだよね。
宝玉見せたら何か解りそうだよねー!!
何となくだけど俺がココに来た意味が分かったね。
あれっ?俺達を包み込んでいた光が宝玉の中に吸い込まれてるぞ!!
「あっ、カケル!!時間がもう無いかも!!また逢えるよね?」
リリィが悲しそうな顔でこちらを見ている。
確かにもう、ココでの存在時間が無いのが分かる。
俺だってリリィと離れたくないよ!!
こうなったら絶対戻ってきてやるぞ!!
おれはやれば出来る子なんだぞ!!
「違うな!!ちょっと精霊王を助けて、代わりにココを俺達の家にしてもらうために行ってくるだけさ!!だからリリィ、少し待っててね!!」
「は、はい!!絶対に待ってる!!ココを二人の家にって、嬉しいよ、カケル!!『はむっ』」
あっ、また首に『はむっ』だ!!癖になりそうだよー!!
あれっ?二人の家にって、リリィにプロポーズしてね?
しかも、嬉しいって?ホント?
「それって、リリィは俺と一緒に暮らしてくれるって事?」
返事は無い。
リリィが俺の顔を見つめ、真っ赤な顔を近づけてくるよー!!
俺達の鼻先が触れ合い、リリィの熱い吐息が顔にかかった。
こ、これは!!もしかして!!俺は唇に全神経を集中して初めての感触を堪能しようとしている。
ドキドキドキドキ・・・
だか、二人の唇が触れる直前、俺の体が光の粒子となって消えていった。
嘘だろぉぉぉぉぉーーーー!!
ありえねぇぇぇぇぇーーーー!!
薄れていく意識の中にリリィの声が聞こえた。
『必ず戻ってきてね。待ってるからね。続きはあ・と・で・ネ!!』
目が覚めるとソコはいつもの光景だった。
俺の部屋だったよー。当たり前だよねー。
まだ心臓のドキドキが止まらないぞー!!
リリィみたいな完全女神とモフモフだよー!!
あと、『はむっ』だよー!!
人生最高の体験だったよー。最後が納得できないけどねー。
あぁ、早くリリィに逢って続きをしたいなー。
俺は期待に胸を膨らませながら、首から下げていた宝玉を握りしめようとした。
あれ?無い!!宝玉が無いぞ?何で??
慌てて身体中を見渡したが、あの赤く透き通る宝玉は見当たらない。
何処かにあるハズだと部屋中を隈無く探してみたが、宝玉が見つかる事は無かったのだ・・・
まるで、全てが夢だったかの様に・・・
俺は一人で呟いた。
「こ、これってもしかして・・・」
まさかの『夢オチ』?
嘘だろぉーーーー!!
異世界なんて、大っきらいだーーーー!!
答えてくれる者は、誰も居なかった・・・
あれからどれ位経ったのだろうか?
放心状態だった俺は腹に異変を感じて、再起動したよ!!
腹、減ったな・・・
人間、どんな事があっても腹は減るんだよ。
まずは飯だよ!!うん、基本だよねー!!
「おはよー。爺さんズ。腹減ったー。」
「何言っておるんじゃ!!もう昼じゃぞ!!」
リビングに行くと、爺さんズ4人が丁度昼御飯を食べていた所だった。
「翔の分も有るから、はよこっちさ来い。」
旨そうだよー。早く食べたいよ!!
急いでテーブルに向かい、食事を始めた俺を、爺さんズ全員が唖然とした顔でこちらを見ているんだよね。
どうしたのー?ボケるような歳だけど・・・大丈夫かなー?
「「「「宝玉じゃとーーーーっ!!」」」」
「えっ?宝玉?えぇぇぇぇーーーー!!どこに?」
「「「「首に下げているじゃろ。」」」」
まさかの急展開!!サヨナラ逆転満塁ホームラン!!
夢じゃなかったよー!!
前言撤回します!!異世界様、大好きだーーーー!!あ、リリィの次だけどね。
「首に?見えないけど?」
俺には宝玉は見えない・・・でも、爺さんズには見えているみたいだね。
これって、絶対、何か有るでしょ!!
何かずっとヒソヒソと話しているよー。
「婆さん達!!アレここに頼む。」
アレって何だ?と思いつつも、俺は昼御飯を食べ終えたよー。
なんてったってマルチタスカーだからねー!!
複数同時処理なんて朝飯前さ!!て、今は昼食後だけどー。
おっ、婆さん達が戻って来たぞ。
「これじゃ!!」
宝玉だった・・・色が赤ではなく、青色だが、俺が持っていた宝玉と瓜二つだった・・・
「何で家に?色が違うけど、そっくりだ。宝玉って何?」
「儂らが聞きたい位じゃよ。一体何が有った?話してみるのじゃ。」
俺は昨日の事を爺さんズに話した・・・
やはりというか、当然というか、爺さんズの息子と娘、つまり俺の両親が、既にこの世に居ないという事に一番驚いていたよ。
ま、俺もその件ではリリィに世話になったしね。
精霊の庭や魔王との戦いの事に関しては、本人達の事だから驚いてはいなかったけど、向こうの世界では、約500年前の出来事だったという事実にはビックリしてたよ。
ま、時間の流れ方が違うんだろうという見解になったよ。
リリィに関しては・・・そりゃもう大騒ぎさー!!
根掘り葉掘り聞かれたよ!!
あー、モフモフしたいなー。
神様と邪神の戦い以後に関しては、難しい顔をしていた。
精霊王の封印と数体の魔王の存在は、本気で不味いらしい。
爺さんズが苦労して救った世界の事だから、他人事とは思えないらしく、俺をバックアップするといって、赤い宝玉を2人の婆さんが調べている。
向こうの世界へ行く為のヒントが有るのかな?
「ん?もう夜になってしまったのう。腹も減ったし、一端休憩じゃ!!カケルは風呂にでも入ってこい!!続きは夜食の後じゃな!!」
爺さんに言われて気がついたよ。
いつの間にか夜になってたよー!!ビックリ!!
俺は言われた通りに、風呂に入り、皆で夜食を食べたんだけど・・・爺さんズの様子がおかしいんだよねー。
何か隠している事が有る気がするね。
「カケル、この青い方の宝玉の事じゃが、これは精霊の庭と家に入る為のカギなんじゃ。青い宝石は【転移石】といっての、精霊界に極僅かしか存在しない貴重な宝石なのじゃ。精霊界に入る為に転移の力が込められていたものじゃ。」
「儂らはこちらに戻る時に、両方の世界を繋ぐ扉を神が開き、コレの力を全て使い戻って来たのじゃ。」
2人の爺さんが順番に話した。
やっぱり宝玉は異世界転移と関係があったよー!!
「こっちの赤い宝玉なんじゃが、コレも【転移石】を使っておるようじゃ。儂らの宝玉より高位の物じゃぞ。驚きな!!コレには更に扉の力が込められているようじゃ!!」
「じゃが、力が足りんようじゃな。扉が開けないのじゃ。」
今度は2人の婆さんが順番に話した。
扉と転移、両方が揃っているの?
力さえ戻せば向こうの世界へ転移出来るって事だよー!!
ノーヒントからここまでたどり着くって、スゲーぞ!!
巷で有名な、頭脳が大人の小さな探偵さんもビックリだよー!!
「じゃあ、力を取り戻す方法が判明すれば、向こうの世界へ転移出来るって事なの?」
「そうじゃよ。その方法も何とかなるかもしれん。」
マジですかー!!
「じゃが、代償が有る!!神の力ではなく、宝玉の力で異世界転移するのじゃから、こちらの世界にはもう戻っては来られぬぞ?儂らとも、もう会う事も出来なくなるんじゃが・・・カケル!!覚悟はあるか?」
爺さんがそう言って、多分2つ?の宝玉を俺の首に掛けた。
あー、俺、一人で舞い上がってたわ。
子供に先立たれた爺さんズを、たった一人の孫が『異世界に好きな女性がいたからサヨナラー!!』って言って、異世界転移するヤツはクズじゃん!!
異世界で待ってるリリィにだって、確証も無いのに必ず戻ってくるなんて安易に答えて、サイテーなヤツだな!!
「ごめん!!みんな。俺は何も考えてなかったよ。リリィには会いたいし、戻って来られないのは構わないけど、爺さん達・婆さん達と会えなくなるのは嫌だよ。置いては行けないよ。リリィだって薄情な俺じゃ振り向いてくれないだろうし・・・」
「カケル・・・そこまで儂らの事を・・・嬉しいのう。」
爺さんズ全員が鼻水垂れ流しながら泣いてるよー。
おれもなんか泣きたくなってきたよ。
「覚悟が無かったのは儂らのようじゃな。あちらの世界は今後、大変な状況になりそうじゃったから心配じゃったのじゃ。儂らの為にカケルに我慢させるのも忍びないのー。優しいカケルの気持ちだけ貰っておく事にするかのー。それで充分じゃ、皆、それで良いな?」
「「「当たり前じゃ!!』』』
爺さんズが頷き、全員が立ち上がり、部屋の四隅に別れて立ち止まった。
爺さんの一人が突然、俺の愛用のスニーカーを投げて寄越した。
何故にー?
そして、俺に微笑んだあとに叫んだ!!
「「「「行ってこい!!異世界へ!!」」」」
「へっ?」
掛け声とともに宝玉が光だし、足元から魔方陣?の様な模様が出現し、輝いた。
赤い宝玉も今は見えている。
突然の事で、俺は間抜けな声しか出せなかった。
そして、くるりと回りながら爺さんズを見ると、全員、半透明な姿で淡く光を纏っており、徐々にボヤける様に輪郭が拡散していっている・・・
まるで、幽霊にでもなったかの様に・・・
そこで俺は気付いてしまった・・・
「まさか!!自分達の命を対価にして宝玉を使った?」
「やはり、カケルは頭が良いのー。最後まで隠しておこうとしたのじゃが・・・バレてしまったのう。」
「お前が風呂に入っている間に、皆で話し合ったのじゃよ。どうせ老い先短い命じゃ。最後くらい孫のカケルの為に使ってやろうとな。」
「小さな頃からあまり楽しい思いをさせてやれなかったんじゃ。せめて婆さんとして、孫の望みくらいは叶えてやりたかったんじゃょ。」
「儂らの大事な孫じゃ。命を掛けたって問題ないじゃろ?儂らはカケルの幸せの方が大事なんじゃよ。」
皆が順に話しかけてきた・・・
まさか俺の為に命をかけてたなんて思ってなかったよ・・・
さっきは様子がいつもと違うとは思ってたけど・・・
皆、真剣に話し合って決めたんだろうな。
俺に黙って・・・勝手過ぎるよ!!
でも、皆に対しての感謝しか思い付かないよ・・・
いつの間にか、俺は涙を流していた。
きっと凄い顔になってるだろう。
「爺さん達、婆さん達、俺、何て言ったら良いか分かんないけど、皆の孫で本当に良かったよ。俺は幸せ者だよ!!今まで本当にありがとう!!」
俺は涙と鼻水だらけの顔で、皆に感謝の気持ちを伝えた。
皆からの返答は無い・・・
だって俺と同じ様な顔して大泣きしてるんだよ。
俺も一緒に大泣きしていた・・・
俺にとってこちらの世界での最後の大切な思い出だよ。
絶対に忘れないよ!!
そして・・・皆が落ち着きを取り戻した頃、異世界転移の準備が整った。
爺さんズは、スッキリとした顔をしていたよ。
「よし、準備はいいかの。始めるぞ!!」
爺さんズが声を揃えて叫んだ!!
「「「「扉解放!!」」」」
「「「「行ってこい!!」」」」
爺さんズの掛け声とともに俺は光に包まれた・・・
とても暖かい優しさに溢れている光だったよ。
その時俺は、光の中に爺さんズと一緒に、父さんと母さんが見えたような気がした・・・皆、笑顔に見えたよ。
途中、皆の異世界での知識が頭の中に流れ込んできた。
どこまで過保護な爺さんズだよ。
でも、ありがとうね!!
更に、父さんと母さんの知識も何故か流れ込んできた。
やっぱり、俺を導いたのは、父さんと母さんだろうな・・・
二人ともありがとうね!!
そして、こちらの世界に別れを告げ、これからの異世界生活に思いを馳せた。
薄れていく意識の中で、俺は最後に叫んだ!!
『待ってろよ、リリィ!!もうすぐ迎えにいくよ!!』
爽やかな風の感触を感じながら、俺は目を覚ました・・・
目の前には真っ青な空が見える。
どうやら俺は、眠っていたらしい・・・今は朝っぽいな。
取り敢えず、無事に到着した様だな?ひと安心だよ!!
俺は起き上がり、大きく伸びをし、深呼吸もして気持ちを整理した。
何か、空気が澄んでいて凄く気持ちが良いよー!!
頭も冴え渡るねー!!
勿論、爺さんが投げ渡してくれた愛用のスニーカーは、早速履いてみたよ。
流石に裸足って訳にはいかないからね。
さてと、準備が整ったところで先ずは状況の確認かな?
辺りを見渡すと、中世の欧州を彷彿させる石造りの街並みと、遠くに大きな城が見えるよー。
如何にもファンタジーって感じだね。感動です!!
どうやら俺の居る場所は、サウザーン王国首都の城下町の中にある、公園の様な所みたいだね。
比較的安全な所だったみたいで良かったよー!!
えっ?何で分かるかって?
だって、俺には爺さんズや両親の知識が有るみたいで、記憶の中の街並みが当時とあまり変わってないみたいで、初めて異世界に転移したのに意外に土地勘が有るみたいなんだよ!!
家族に感謝だね。
とはいえ、まずはこれからのの事を考えないとな?
まずはお金だよねー!!何をするにも必要だからねー!!
という事で、家族の知識を参考にしようと思ったら気になった事が・・・
無限収納か・・・
異空間へ物質を無制限に収納・取り出しが出来る便利な物を家族が使用していたみたいなんだよね。
俺にも使えないかなー?
そんな事を思いながら、軽い気持ちで異空間に収納するイメージをしてみた瞬間!!
「うおっ!!」
思わず声に出ちゃったよー!!
頭の中にいろんな物の一覧が流れ込んできたんだよー!!
これってもしかして・・・
もしかしたよー!!大当たりだったよー!!
家族が使っていた物が残っていたんだよー!!
使いきれない程のお金やアイテム、貴重な素材等々・・・
食べ物もあったんだけど・・・コレがなんと温かいままで、腐ってないんだよー!!
収納空間は時間が経たないみたいなんだよね。
家族の知識が有るから価値が判るんだよ。ヤバいよヤバいよー!!
一生遊んで暮らしていけちゃうぞー!!
とはいっても、俺は封印空間の精霊王を助けてリリィに逢う事が第一の目的だから、浮かれまくっている場合じゃないんだよね。
封印空間は俺しか入れない筈だから、敵がいたらアウトなんだよ!!
だって俺は、勇者達から【逃走王】翔、というお墨付きを貰う男だよ!!
逃げと護身術に関しては神がかってるけど、代わりに攻撃能力は皆無なんだから・・・
何か対策を考えないと不味いんだよ!!
リリィに逢う為にも頑張れ!!俺!!
先ずは試しに、特訓の成果を生かして周辺を索敵してみたよ。
うお!!朝から凄い数の人が居るねー!!賑わっているよ。
流石王都だね。
これならもう店も営業してそうだな。
では早速行動開始!!
最初は両替商だね。
なんてったって100年以上前のお金が使えるのか?
結果、全然使えました!!
お金に困る事は無さそうです。ラッキー!!
次は、身分証だな。
この世界には冒険者ギルドや商業ギルド等が存在して、仕事として色々な依頼を受けたり、商売したりするには身分証が必要らしい。
どうやら教会で発行しているみたいなんだよね。
きっと美人の受付嬢さんが待っているに違いないよね。
その時スキル鑑定というのがあって、個人の得意とする能力が、○○スキルという形式で判るらしい。
魔法スキルとか、収納スキルとか色々存在しているみたいだね。
俺はどんなスキルを持っているのかなー?楽しみだね。
早速行ってみよう。
教会の美人のお姉さーん!!って、おっさんかい!!
受付はおっさんだったんだよ!!
周りに綺麗なお姉さんが一杯居るのになぜ?
アンラッキーだよ!!期待していたんだよ!!
この教会は呪われているに違いないぞ!!
「あの、身分証を発行して欲しいのですが。」
「おう、身分証だな。この用紙に名前を書いてくれ。」
フランクなおっさんだな。興味無し。
俺は事務的に名前を記入して、おっさんに渡した。
「次はこの水晶に触れながら、この魔導具に血を1滴垂らしてくれ。」
魔導具には小さな針が付いており、ソコに触ればいいみたいだね。
俺は早速実行したよ。目の前はおっさんだからね。
「よし、これで終わりだ。ちょっと待ってろよ。」
おっさんだから待ちたくないけど、仕方ないな。
あれ?おっさんが俺を哀れむような目で見ているぞ。
一体何だよ!!激おこだよー!!身分証を早くくれ!!
「坊主、お前の価値はスキルで決まるモノでは無い。強く生きるんだぞ!!」
と言って、俺に身分証である鉄製?のカードを俺に手渡した。
おっさんの言っている事が意味不明だよ。
兎に角、内容を確認だよ。
###
身分証【鉄】
名前・・・カケル カミシロ
種族・・・人族系
性別・・・男性
スキル・・・【収納】【鑑定】
###
お、やっぱり収納スキルがあったよー!!家系かね。
後は鑑定スキルか・・・あー、だからおっさんがあんな事言ったのか・・・
収納スキルも鑑定スキルも、昔は所有者が僅かしか居らず、花形スキルだったんだよね。
でも、俺の両親が、かなり容量のある魔法鞄や、かざすだけで鑑定が出来るカード(身分証がそう)を普及させたからねー。
収納スキルも鑑定スキルも、今じゃあまり意味が無い【死にスキル】だから、おっさんが俺を可哀想と思った訳だね。
まあ、お陰で家族の残した物が手に入ったから良しとしよう。
「確かに・・・魔導具が有るから、良いスキルではないですね。頑張ってみます。有難う御座います。」
「お、おう。頑張れ。」
俺はおっさんに身分証のお礼を言って、教会を後にした。
未だ馴れていない場所なので、気配を消し、索敵しながら歩くと誰にも見向きもされなかったが、試しに気配を消すのを止めた途端、色んな人が俺に注目し始めたよー。
お上りさんがバレバレだよー!!ハズいよー!!
索敵で判るけど、追い掛けて来る人も沢山居るよー!!
取り敢えず、逃げろー!!
俺は逃走王モード全開で逃げましたー。
建物の陰に入り、隠密全開で通りに戻ると誰も俺に気付かなかったよー!!コレってスキルじゃないの?
よし、自分を鑑定してみよう。
【鑑定】
うあ、情報が多過ぎるぞ!!
取り敢えず、身分証と同じ様な感じでスキルを詳しくする感じで再鑑定してみたよ。
###
名前・・・カケル カミシロ
種族・・・人族系
性別・・・男性
スキル・・・【収納】【鑑定】
特殊・・・【範囲無限収納】【神眼】【マルチタスク】【探索】【隠密】【神業護身術】【勇者達の遺産】
###
おいぃぃぃぃーーーー!!
スキルじゃなくて、特殊だよー!!
チートクラスのスキルって事なの?
【範囲無限収納】って、範囲内なら何処でも出し入れ出来るってか?
魔法鞄なんかより遥かに高性能だよー!!
【神眼】は鑑定の超強力版だよー!!細かい事まで調べる事が出来るんだよね。攻撃を見切ったりも出来るみたいだ。スゲーぞ!!
【マルチタスク】は、多重処理だね!!得意だしね。
【探索】【隠密】は、さっきも役に立ってたしね。
【神業護身術】は、【神眼】と合わせた神ってる護身術だね。
【勇者達の遺産】は、家族の知識だろうね!!
凄いんだけど・・・攻撃系が相変わらず皆無なんだよなー!!
取り敢えず、ある程度検証してみようかな・・・
という事で、俺は冒険者ギルドへ向かったよー!!
町の外の様子も見てみたいし、初心者の定番である街周辺の薬草採集依頼でも受けられれば、探索・隠密・範囲無限収納辺りを検証出来そうだし、魔物が現れても街へ直ぐに逃げられるので、戦闘力が皆無な俺にとっては有り難いんだよねー!!
早速、薬草採集依頼受けてみました!!
身分証と依頼書をサクッと受付に出してさっさと受注したよ。
だって、ギルドの受付もおっさんだったんだよ!!
時間は無駄にしたくないよね。
だから、隠密全開のままにしてたんで、テンプレ的な絡まれイベント系も起こる事もなく、サクッと受付を終わりにしたよ!!
後は検証がてら、依頼をこなすぞ!!
俺は街の外に出ると、薬草をイメージしながら、【探索】を試してみたよ。
魔物は周辺には居ないようだね、!!目的の薬草らしき反応が、約50メートル前方の森の中にかなり有るみたいだね。
行ってみよう!!
お、コレだな!!
森の中を反応を頼りに進んで行くと、予想通り大量の薬草が生えていたよ。
早速、生えたままの薬草に触れながら、収納してみたよ。
うん、出来たね!!
引っこ抜かなくても収納出来るのは便利だねー!!
魔法鞄じゃ出来そうもないよね。
さて、次は周辺に生えている薬草を、試しにそのまま収納!!
えっ?
俺の周辺にあんなに沢山生えていた薬草が、全て消えた・・・
で、出来ちゃったよー!!収納しちゃったよー!!
コレって凄いんだけど・・・
もう、アイテムボックスとしての機能を超越し過ぎでしょ!!
犯罪クラスだよ!!店でやったら泥棒だよねー!!
使い方に注意しないと、危ないぞ。
ま、俺はそんな事はしないけど・・・
あっ、採集出来る薬草がもう無くなっちゃったよー。
宿も決めてないから街に帰ろうっと。
俺が街に着いた頃には、日もだいぶ傾いていたよ。
早速、今夜の宿を確保して、冒険者ギルドへ依頼達成の報告をしたんだけど、やっぱり受付はおっさんだったんだよ!!
しかも、俺が大量の薬草を持ち込んだから、面倒くさかったらしく、舌打ちされたよー!!ヒドくね?
お金は有るから、暫くはギルドに世話にならなくたっていいもんね。
俺は報酬を受け取り、さっさとギルドを後にして、宿屋に戻った。
宿屋で夜食を食べたんけど、日本に居た頃と変わらなかったよ。部屋に風呂まで付いてるし、快適だったよ!!
風呂や、食事のレシピ等は俺の家族が広めたみたいなんだよね。
流石、俺の家族だね!!
そして、風呂に入った後は、手を触れずに部屋の家具を収納しては取り出し、部屋のレイアウトを変えたりして収納・取り出しの練習をしていたよ。
なんか便利そうだからねー!!
夢中で練習してたせいか、気が付いたら夜中だった。
俺はベッドに横になり、2つの宝玉を取り出し、昨日からの出来事を思い返した・・・
昨日から今日まで、色々あったなぁ・・・
本当に異世界に来たんだよなぁ・・・
リリィは元気かなぁ・・・早く会いたいなー。
そんな事を思いながら、俺の異世界最初の日が過ぎていった。
俺が異世界に転移してから、1週間が過ぎた・・・
俺は毎日、街の外で魔物と対峙していた。
そして今日は、俺の新戦闘スタイルの最終確認なんだよね!!
最初の頃は、ウサギ型の魔物や、狼型の魔物等の小型の魔物を相手に戦ったんだよ!!
【神眼】のお陰で、相手の動きは見切ってるし、飛び掛かられても【神業護身術】で、回避したり、相手の力を利用して投げ飛ばしたり、地面に叩き突けたりする事が出来たんで、大きな怪我は無いんだけど・・・
俺の攻撃が当たらないんだよ!!全然なんだよ!!
結局逃げるだけなんだよ!!
だから、考えたんだよ。
逃げる最中に岩とか丸太とかを【収納】して、追い掛けて来る魔物の目の前にソレを取り出して、ぶつけてみたりとかね!!
そんで動けなくなったところにまた岩を落とすという戦術をね。
凄いでしょ!!これなら戦闘力皆無の俺でも何とかなるんだよ!!
名付けて、『岩石落とし』なんちゃってー!!
まぁ、魔物がぺちゃんこになっちゃうんで、グロいし、素材も採集出来ないのが難点なんだけどねー。
コレ、絶対に他の人が見たらドン引きだよねー!!
魔物倒してもお金に成らないしー、友達出来ないよー!!
だけど、魔物を倒せるから、一歩前進だよねー!!
で、この戦術って敵に岩を落とすだけなんだから、わざわざ戦闘しなくたっていいんじゃね!!って思ったわけさー。
索敵で目標物を見つけたら、隠密で近づいて、頭上に『岩石落とし』。
御愁傷さまー、チーン!!
更に、【マルチタスク】で複数の敵にも同時対応のおまけ付き!!
なんてったって俺はマルチタスカーだからねー!!
敵さん達、危ないよー!!頭上注意だよー!!
チーン!!なーむー。
こうして調子に乗った俺は小型の魔物に加え、新米冒険者の定番である、コボルドやゴブリン相手に岩石落としをしまくったんだよ!!
単体だけじゃないよ。10体程度の集団もね!!
無双状態だよー!!俺TUEEEってか!!
これなら精霊王もイケんじゃねー!!
魔王も殺っちゃう?
そう思った時もあったさ・・・
ヒャッハーなお祭り気分でワッショイ!ワッショイ!の俺は、森を進んで行って、出会う敵全てに『たのもー!!』的な道場破り野郎となり、中級冒険者20人相当で何とかなると言われる、ハイオーク率いるオークの集団約30体と出会ったんだよー!!
勿論、全てに岩石落としの同時攻撃をお見舞いしてやったさ。
でも、倒せたのは半分で、ハイオークには全然効いてなかったんだよー!!
攻撃したから隠密解けちゃったし・・・
スマン、調子に乗ってました!!
逃走王モード!!発動!!あっ、大変だ!!
索敵で逃走ルートを探したけど、アチコチに魔物の反応があって逃げ道が無いよー!!
これはピンチだよー!!爆ヤバだよー!!
緊急避難警報発令!!直ちに避難して下さい!!
て、無理だよー!!フィーバータイム突入!!大乱闘確定だよー!!
接近戦だよー!!どうする?
マルチタスカーな俺は、索敵で敵の位置を把握しながら、神眼と神業護身術で攻撃を回避しつつ、間合いを取る為に時折敵の力を利用して投げ飛ばしたよ。
勿論、敵の居る所にね。
そして、敵同士でぶつかり倒れた所に、範囲無限収納からのー、岩石落とし!!
私にも敵が見える。見えるぞー!!
堕ちろ!!蚊トンボー!!
ハイテンションな俺は、持っている能力を駆使して次々と敵を倒していったよ。
よし、残るはハイオークのみ!!
最後のオークに岩石落としを決めた時だった。
ハイオークの攻撃が俺を掠めた!!
攻撃が当たる直前に、反射的に受け身も考えず、全力で後ろに跳んだ様だ。
後ろの木に激突してしまい、クラクラするけど、大きな怪我は無い。
神業護身術が無かったらと思うとゾッとするよ。
ハイオークが接近し、追撃してきた!!
俺は岩石落としと丸太を数本ハイオークの辺りにバラ撒いたよ。
まだクラクラするから正確な位置に取り出せなかったんだよね。
「グオォォォーーッ!!」
ハイオークの絶叫が聞こえて来たんだよ!!
何か断末魔の叫びっぽいぞ!!
もしかして・・・倒しちゃった?
ハイオークを見ると、腹に丸太が2本刺さった状態で絶命していたよ。
岩石落としは当たらなかったみたいだね。
「ヨッシャーーー!!」
ガッツポーズと共に雄叫び上げちゃったよー!!
でも、なんで丸太が刺さっているんだろう?
もしかしたら・・・
俺の頭の中で1つの仮説が閃いたんだよ。
俺はオークの死体を1体収納してハイオークと同じ所に取り出してみた。
「うげっ!!」
グシャッという音がして、ソコにはハイオークとオークの混ざり合ったグロい物体と周辺に飛び散った肉片があったんだよー!!
これは見てはいけないものだよ!!
良い子の皆は真似したらダメだよー!!
やはり思った通りだったよ!!
収納スキルや魔法鞄って、取り出した所に何か有ると、取り出し出来ないはずなんだよね。
でも、俺の範囲無限収納は、取り出した先に何か物体が存在しても関係無いみたいだよ!!
だから、相手の体内に直接岩石を出したり出来るって事だよね。
丸太がハイオークに刺さっていた理由が判ったけど、これはひょっとすると、とんでもない能力かも・・・
確か大昔のゲームの迷宮で、罠に掛かると壁の中に飛ばされてしまって、どんなに強いキャラでも、即ゲームオーバーになるというえげつないのが有ったと思うんだよね。
『いしのなかにいる』ってメッセージが表示されて、キャラがロストするんだよ。
体と壁が融合しちゃうんだから当然なんだけどね。
この能力はソレに近いぞ!!
取り出す岩を相手の所にしたら、融合しちゃうよね。
『いしがなかにいる』だよー!!
絶対にヤバいよー!!えげつないけど、凄い攻撃だよー!!
『岩石落とし改』ってところかな?
『メテオストライク』のほうが、格好良いけど、イメージ違うもんなー。残念です。
これで、俺の戦闘力不足問題が解決しそうだよー!!
リリィ!!もうすぐだよー!!
こうして、ハイオークとの戦いの経験は、俺にとって大きな収穫となったんだよ。
俺の中で新たな戦闘スタイルのイメージが湧いてきたよ!!
一度街に戻りながら試してみよう!!
俺は街に戻る途中、遭遇した魔物に『岩石落とし・改』を試してみたよ。
魔物の頭部に狙いを定め、岩を取り出す。
魔物の頭が岩になり、そのまま押し潰したよ。
頭は岩の中かな?見当たらないや。
効果は抜群だ!!見た目が美しくないけどね。
今度は丸太で試したよ。
丸太が魔物に刺さった様に見えるねー。
頭や急所なら一撃だね。
これなら素材も採れそうだよ!!
結果が出たね!!
範囲無限収納を利用した俺専用攻撃は、チート級だよ!!
間違いないよ!!俺、頑張ったよ!!誰か誉めてー!!
ただ、岩を使うと見た目が悪いし、丸太だとなんかショボく見えるんだよね。
岩と丸太以外で色々試してみようっと。
こうして色々試行錯誤をして、今日に至ったんだよ!!
今、俺はオークの集落の前に居るんだよ!!
魔物に襲われて誰も居なくなった村にオークが棲み着いたみたいだね。
ハイオークが5体、オークが100体ちょっと居るねー!!
新戦闘スタイルの最終確認には丁度いいかな?
どう?凄い自信でしょ!!なんてったって、生まれ変わった俺の御披露目だからねー!!
脱・逃走王だよ!!もう、戦闘力が皆無とは言わせないよ!!
では、早速行ってみますか・・・
建物の外にハイオーク3体とオーク80体か・・・
その全ての首に狙いを定める。
『首狩り!!』
ハイオーク3体とオーク80体全ての頭がポトリと落ち、倒れていく・・・
相手の頭と体を分断する様に、首の部分にある物を出現させる『岩石落とし改』の発展型だ。
異変を感じたのか、残りのオーク達が建物から飛び出してきた。
残りハイオーク2体とオーク約20体だ。
俺はオーク全てに『首狩り』を実行。
オーク達は、先程と同じ様に頭が落ち、倒れた・・・
自分でもゾッとする程の、マルチタスクと範囲無限収納の極悪コンボだ。
残りは、敢えて残したハイオーク2体のみ。
俺は神業護身術で、ハイオークの攻撃を回避しつつ、相手の力を利用して2体を投げ飛ばした。
ハイオークは2体共に仰向けに倒れ、苦しそうな声を上げている。
神眼で急所を探ってみる・・・人間でいう心臓部分も急所か・・・
俺はハイオーク2体の心臓に狙いを定めた。
『死の十字架!!』
仰向けのハイオーク2体の心臓部分に、約2メートルの巨大な石の十字架が出現し、敵の息の根を止める。
そして、2体のハイオークは動かなくなった・・・
戦闘終了だよー!!圧勝だったでしょー!!
思ってた以上の効果だったんで俺もビックリだよー!!
シリアステイストで格好良く決めてみたんだけど・・・
どうだったかな?
『首狩り』の正体は、直径30センチ位の円形の木製トレイでしたー!!
これを首の部分に出現させると・・・ほら、ポトリとね!!
地味に凄いんだよねー!!
あと、鉄製のトレイと1メートルの鍋の蓋も有るんだよ!!
『死の十字架』は、丸太の代わりだよー!!
名前がイケてない?刺さった姿も絵になるしねー!!
あつ、トレイと十字架を収納しておかないと!!
ストックは腐るほど有るけど、節約は大事だよね!!
よし、最終確認終了だねー!!
街に帰ろうっと!!
宿屋に戻り食事と風呂を済ませ、ベッドに飛び込んだ。
天井を見上げながら、新戦闘スタイルが確立出来た喜びを噛みしめた・・・
苦労したけど、やっとスタートラインに立てたよ!!
収納と鑑定スキルの、いわゆる死にスキルしか無くて、おまけに戦闘力は皆無だった頃からみたら雲泥の差だよね。
でも、やっぱり爺さんズとグランデール社の帰還勇者達との特訓に感謝だねー!!
【神眼】【索敵】【隠密】【神業護身術】は特訓の成果だよ。
コレがなかったら、今頃どうしてたろうな?
でも、収納スキルも無かったら範囲無限収納も使えなかったかもしれないから、収納スキルにも感謝だねー!!
これで、準備も整ったし、次は、いよいよ精霊王の救出か!!
そんな事を考えながら眠りについた・・・
翌朝、街の外に出た俺は精霊王が封印されている【始まりの地】へ向かう事にしたよ!!
夢の中で爺さんズや両親、特訓してくれた帰還勇者達、そして・・・リリィが居て、俺に笑いかけてるんだよ!!
期は熟したって事だよね!!
だから決めた!!
俺は行くよ!!
収納スキルで攻撃っていう、変な奴だけど、精霊王もリリィも助けてハッピーエンドさ!!
だって、勇者の孫で子供だよ!!
やってやるさ!!
だから、皆、見ててくれ!!頑張るからさ!!
そして・・・
「リリィ!!聞こえるかー!!今から迎えに行くからなー!!この間の続きー!!楽しみにしてるぞー!!」
伝わったのかな?心が暖かくなった気がした・・・
さあ、出発だ!!
俺は、大きく息を吸い込み、一気に駆け出した!!
今はまだ誰も知らない、翔とリリィ達の物語が始まる。
それは、また別の機会に・・・
コンティニュー? 【Y/N】
最後までお付き合い頂き有難う御座いました。
どうだったでしょうか?
楽しんで貰えましたか?それとも・・・
続き読みたいって人がいるといいな。
初投稿で読み切りなのであっという間に消えてしまうと思います。
読まれた方、是非評価をお願いします。
いいね!感覚でお気軽にー!
感想や気づいた事、アドバイス等も有れば今後の参考にしたいと思いますので、宜しくお願いします。
反響有れば続き検討します!!