第08話 水槽楽部、全国デビューする!
「ワニだ!ワニが車内に飛び込んできた!!」
3メートル級のワニが白いバンの後部座席に横たわりピクピクしている!
……まさに地獄絵図である!
車をよく見ると、これもまたたまたま通りすがりの……。
――にっぽんダイナミックTVと車のサイドに書かれていた。
TV局の車両にモンスターバトルを見事にキメた!
「……ふむ、七海の器用さが見事に発揮したな!」
飛び出したTV局員のクルーらしき三人が駆け寄ってくる!
「……よし!解散!撤収するぞ!」
花梨たちは逃げ出した……!
しかし回り込まれた!
というより、畔から出るにはTV局の車が停車している道を通る必要がある。
ディレクタらしき女性が七海達に話しかけてきた。
「もしかしてあのワニ……ではなく、外来種釣り上げ……たわよね?」
迷探偵花梨が推理を始める……!
「……ふぁーっと?ジスイズアフィレオフィッシュ?……」
――間違いなく『ハンバーガー』の名前を言ったぞ!
先ほど食べたブラックバスの切り身が脳内に作用したようだ!
「え……っと、先程のお魚さんは、この七海さんが釣った魚です」
「私ではありません」
日花梨が全責任を七海にふっかけたかなかな!?
「ええ、私も見てましたよ?七海さんがお釣りになられた魚ですね?」「どういった種類のお魚でしょう?私には判りかねますが……」
水槽楽部で一番魚の知識が豊富な愛芽がごまかしたぞ!
七海が振り返ると既に小悪党三人は……。
「って、逃げ足はや!」
――素早く退散していた!
「あ、いえいえ、私たちは車の窓を割られたことを責めに来たんじゃ無いですよ?」
「丁度、琵琶湖の外来種問題の取材で、畔で関係者の方と待ち合わせするところでした。でも、ブラックバスとかブルーギルの釣れる映像を撮れたらと思ってましたが……まさか……なんでしょうか?あの超巨大魚は?」
「いい取材になりそうですよ!七海……さんでよろしかったですか?」
「……ふむ!この『外来種対策』部の部長である花梨メイスンが答えよう!」
「和歌山の東高校生徒会長の神畑日花梨と申します」
「魚の育成と研究・外来種問題を専門としております、緑川愛芽です」
――小悪党三人の手のひら返しは凄まじい早さである!
当然だが、取材陣は速攻トンズラをキメた3人は無視した。
「七海……さんですか?」
「外来種を釣って調理して食べていらっしゃるようですが……」
「丁度、外来種バーガーの取材も兼ねてと思ってまして、良ければ撮影させて貰えませんか?」
「……というか!この巨大ワニ!大物を女子高生が釣り上げた!」「見出しで今日の夕方のニュース枠に乗せられたら最高です!」
ガン無視された小悪党3人がさらなる悪態を働く!
「……うむ!うちの七海をTVで使いたいと!?」
「……事務所通して貰わないと困りますな……?」
花梨は事務所を通すように申し出た!
――きっと探偵事務所の事だろう?
「あ!まずはお名刺をどうぞ!」
名刺には『グリーンリバーコーポレーション・裏AV<アニマルビデオ>部』と記載されている……!
――絶対裏社会の事務所だ!
可愛い動物たちがおたわむれる素敵な無修正動画だ。
「お!お!私の事務所も通して欲しいかなかな!」
――絶対、地獄の事務所だ!
「てか!花梨ちゃん達、私をほっぽり出して速攻逃げたでしょ!」
「……!?七海!!我々水槽楽部はメンバーを置き去りにするような冷酷な事はしないぞ!」
「そうですよ!七海さん……花梨さんも、日花梨さんもいざって時に備えただけですよ!」
「そうだよ!ナナちゃん!酷いな!」
……よーく見ると小悪党三人は『幸村・大鎌・ライフル』を背に持っていた!?
――間違いなく、ヤバいときは××する気満々だった!
その後、水槽楽部メンバーは何時もの如く大道芸を一通り熟し、TV局員を困らせた。
取材に対し一言質問される度に小悪党3名のヤジ……もとい……大道芸に七海は一喜一憂した。
「で、サンマの切り身で外来種がいとも簡単に釣れるのですか……」
「……うむ!……まあ、切り身なら何でもいいのだ!」
「いえいえ、花梨さん。何でもって事はないですよ?」
「やはり、サンマの切り身が見栄え、香り、味ともにすばらいのです。タコも高級食材ばかり食べるくらいですので、やっぱり美味しい魚は餌としても有能なのです」
――その後数十分程、TV局の取材を受け記念撮影までして不幸にも水槽楽部は全国デビューを果たした!
七海と小悪党3人衆の一味は、TV取材という大仕事を終え、一路今夜のお宿である『丸田屋』を目指すことになった。予定よりかなり遅い出発となった。
不思議なことに、TV取材を受けたのだが、到着時刻は予定通り昼前に到着した。
数回警察が提供する道路に設置したカメラが光った気がした。