第3.5話 番外編 七海の選んだ相棒 ~サイド花梨~
……昨日、免許を無事取得して七海は合宿から戻ってきた。
どうやら買うバイクは4月から色々調べて考えていたらしい。
水槽楽部部員のバイクは、皆自由に選んでいる。
もちろん、七海も自分で好きなのを選ぶようにと伝えていた。
単純に荷物の輸送だけを考えたら、ビックスクーターをお勧めしたい所ではあるが、私自身、普段はZ250に乗っている。果たして何を選んだのだろうか?
七海には部活動の一環で使うので『私が買ってあげる』と言ったのだが、低調にお断りされた。
七海の家は結構裕福な家庭らしく、親である心桜さんに相談したら、買ってあげると言ってくれたらしい。
父も母も『やりたいことには全面的に協力』してくれるらしい。
ただし、アルバイトは禁止とのこと。社会勉強でアルバイトをしたいと言えばOKとの事。
「花梨さん、七海さんはどんなバイク選んだのかご存じですか?」
「何選んだのかなかな?私はぜーたい!ドラッグスター250だと思うよん!」
「わたしは、エストレヤだと思いますね。名前にカワサキをお持ちの方ですし」
……この二人……排気量コンプレックスか!?
ドラッグスター400あるではないか!エストレヤ……そこはSR400もあるではないか!
「ふむ……七海は意外と400のビックスクーターを選ぶかもだぞ!」
「えええ!400CCはないない!トリシティー155がいいと思うよん!」
「ありえませんね!400CCは七海さんにはふさわしくないですビックスクーターならスカイウェーブ250ですね。もしくはPCX150ですね!」
……やっぱり……じぶんのバイク以下の排気量を推している。心を読まなくても丸分かりだ……。そもそも、読心術は部員には使わないが。
七海と昨日話していて『新車』であることは聞いていた。車種は「へへへ・・・秘密です!」と勿体ぶっていた。「想像しているバイクと絶対違いますよ!」とも言っていたのだ。
――クラッシックやアメリカン系ではないだろう。
容易に想像できる……が、違うと言っていた。
と言うことは、部員みんなの事を考え行動できる七海なら荷物がイッパイ積めるビックスクーターを選ぶだろうと。
新車である以上、現行売っている車種は限られてくるので、私にとっては『いーじー』である。
七海は皆のことを考えられる良い子なのである。
「……ふむ、では車種をあげるゲームをすることとする!」
「よーし、じゃあ私から!『SR400』だねだね!」
「やっぱりニャマハ乗りとしてはニャマハをえらんでほしいぞ!日花梨さんのアンティーク好きだからねー『カフェレーサー風』とかにちゃいそうだねだね!」
……ゲームとなると当てに来やがった!!
「ここはやっぱり最近の『レブル250』ですかね。」
「最新のバイクになりますが、免許取り立てで乗りやすく魅力的なバイクだと思いますね」
……やっぱり当てに来やがったな!
……だが、事前に情報を得ている私の方が優位なのだ!
「……ふむ、では私は『バーグマン』とする!」
「ちょっとーまった!絶対花梨ちゃん|事前に何か聞いてるよねよね!」
「花梨さん、中々卑怯ですね。七海さんと密な関係を利用して事前に情報を得てますよね?」
「……むむ!なんという濡れ衣!!七海の部や皆への優しい思いをくみ取れば、ビックスクーターを選ぶのではないかと思ったのだ!失礼な!」
「なーんか、怪し疑わしいぞ!花梨ちゃん|!」
――2気筒の高回転らしき音が近づいてきた!?
「えええ!全員外れじゃーん!」
……なん……だと!?
「この音……ってビッチか!ビッチなのか!?」
……!?純粋無垢だと思っていたのにビッチだと!
「七海さんビッチな音を出していられるのですか!」
「うんうん!いいサウンドが響いているよん!水槽楽部らしきなってきたぞ!」
……粛清した吹奏楽部の代わりに、我々は管楽器を鳴らしているのである!アーメン・南無――
ドドドドドド!
「おはようございます!皆さん」
「おはおは!ってCBR250RR!?って何で!ナナちゃん的には、SR400じゃないのかなかな!」
「……な、七海ど、どうして!C、CBR250RRえ、え、選んだ!」
さすがに動揺が隠しきれなかった。絶対選ばないであろうフルカウルスポーツなんて!どうしてしまったんだ……!
「あはは……最初はSR400とかエストレヤにしようと思っていたのですが、心桜ちゃんが『それじゃダメだよ!』って言われまして……」
どういう理由でダメだったのだろうか?
「日花梨さんや花梨ちゃんと一緒に行くには、『SS乗らないとダメだよ!』って言われまして、その通りかなーっと」
「それで、『ぶれいん?のラジコン?』のブレーキと『Oリング?』のクッションに交換したって言ってましたね。心桜ちゃん昔は珍走族でブイブイ頑張ってたらしいので、バイクには詳しいんですよ」
……このカスタマイズ……間違いなく龍神の主である!あと珍走団ではなく、ローリング族だ。
「な、七海、このカスタマイズ……誰がやったんだ!?」
「CBRのですか?心桜ちゃんが家のガレージでカスタマイズしましたよ。酷いですよね!お金は心桜ちゃんが出してくれたとはいえ、私のバイクなのに。既に別物ですよ!」
……龍神で管楽器による演奏している我ら『吹奏楽部』だが、七海のCBRを観たら口を揃えて言うだろう『やべー奴が来たぞ!』と。公道で走る事のが出来る限界までチューニングしてある。
見た感じ足回りのセッティングは『何処のレーシングチームだ?』ってレベルである。
「……心桜さんにじっくりお話を伺いに行くことにする!」
「って!花梨ちゃん!ブレーキがなんか違うよん!なんだこれは?」
「……ラジアルポンプにブレンボのキャリパーに、オーリンズのサスペンスを入れてる。更に高級タイヤ付けている」
「凄いのかなかな!?」
「……うむ、ぱっと観ただけで、カスタム費用でR25がもう一台買えるぞ!」
「ええ!?花梨ちゃん、私のR3にもこれ付けたいよ!」
「そんなに凄いのですか?花梨ちゃん。まあ、教習車より全然乗りやすいですが。でもハンドルが低くてちょっと体制が辛いですけど」
「……ふむ、それでは高野山の『私の家』で昼食とする!2時間位かけての『とことこツーリング』とする!」
◇
七海達は、高野山へのマスツーリングをする事になった。
本来の目的は、『新潟聖地巡礼』のスケジュールの確認、宿屋の予約などを行うことになっている。
途中、福井県でスキューバダイビング、金沢でキャンプ、そして新潟聖地巡礼の予定となっているが……。
……果たして……そう上手く行くのだろうか?




