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アクリル 東女子高水槽楽部  作者: 川崎タイチ
水槽楽部入部編
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第4話 駐輪場事件簿ファイル!?

 何とか水槽楽部から脱出した……。今日は水槽楽部への入部は諦め、帰ることにした。


「部活……どうしよう?」


 帰宅部でもいいのだが、実は吹奏楽部に入りたい理由もあった。


 自分持ちの「フルート」を楽しく部員と吹ければいいのである。中学時代ゆるい感じにクラッシック音楽から最近の流行歌などを部活動で楽しく演奏できていた。二羽曰く吹奏楽部は本来体育会系でスパルタ部の代名詞だ!……と言われたが、中学の部活は他の文化部同様の文化部特有のゆるい良い部活だった。


 ……まさか粛清とは……。


 二羽の練習風景を横見にしながら体育館を抜け、駐輪場へと向かうことにした。


 自転車置き場ではなく駐輪場なのである。この学校は学区がとても広く、田舎特有15㎞以上遠い家の学生はバイク通学可である。一番遠い学生で「高野山」から通学しているカオスな学生も1人いるらしい。


……なぜこの東女子高へ来た……。


高野山の高校へ行くべきだと思うところだが、「免許取得自由」がこのご時世では数少ない高校でもある。


 「この学校のカオス学生の噂」の一つがバイク絡みで、現3年生で4月1日生まれ、1年もの長い間、高野山からこの学校へ自転車で通学したらしい。

 往復で60㎞……行きは下りで問題ないが、道中に15kmも峠があるらしい。


 水槽楽部に立ち寄っていたので帰宅時間を少し経過していることもあって、自転車の数もかなり少なくなっていた。

 バイク置場にも数台止まっている。カフェに泊まっていそうな可愛い原付バイクもあれば、新聞配達のようなバイクもあった。

 女子高校…のわりに本格的なバイクも数台止まっていた。


 その中でひときわ目立つバイク……ではなく学生が立っていた。

 ロングヘアーの英国人風金髪少女である。

 身なり的には高校生には見えない……。

 しかし東高校のブレザーを着ているので、うちの生徒なのは一目で解った。

 他校同様、学年はリボンの色で判別できるため『3年生』であるのも分かった。


 外国人の時点で目を引くのはこの田舎ではよくあることでもあるが、見慣れてもいた。

 昨今の「猫の駅長」のブームと世界遺産の影響で神社仏閣パワースポット巡りが盛んである。

 欧州の方が多く観光に来ているので、外国人自体は和歌山では珍しい光景でもなくなってきている。


 アンティークと言えば……言うまでもないであろう。

 まるでお人形のように彼女に目を奪われてしまうのは必然な事である!バイク置場に向かっているようなので、これは「カフェに泊まっていそうな可愛い原付バイク」に乗って帰るんだなーっと勝手に美化して、すーっと近づいてみて自然体で話かけることにしたが……!


 可憐な美少女とは似つかない……どちらかというといかつい兄さんが乗っていそうなバイクに鞄を載せていた。


 話かけるのを止めよう……と思ったが、彼女から話しかけてきた。

「……明日、放課後……まぁいいか?……たぶん言わなくても来るだろうし……」


 ……え?


「あのう……何か気になる事あるなら話していいので!むしろ歓迎します!」

 思わず返答してみた。


 彼女は、少し間を置き……。


「……私がこのバイクに乗る所を見て期待を裏切ったみたいで悪かったな……」

 

 プイッと、そっぽ向かれた……。


 感情を読まれていた!というより見透かされていたように感じた。

 どちらかというと、表情見て返した言葉ではなく、何か心を読まれているような雰囲気だった。二葉曰く「俺の右手が!?」的雰囲気を感じた。


「……あと、私は左利きだから……でもハサミは右手で使う……」


 ――考えたことが読まれている!?


「じゃあ……また明日放課後……」


 彼女は、体に似つかない大きい「漆黒のバイク」にのって颯爽と帰っていった。

 大きい事は大きいが、彼女の体から比べて大きい……が正確ではある。

 ……あえてここは「漆黒」としてみた!


 ……むしろ彼女の漆黒のバイクの隣の方がヤバい感じだった。


 「R3」と書いているが……間違いなくレースをしてそうな感じがした。

 バイクに、酷いことに、二葉が好きそうなアニメのステッカーを貼られていた。


「何でもありだけど、ちょっとそれはない……」


 ……考え更けてるところに聞き覚えのある声が!?


「あらナナちゃん!水槽だけでなくバイクにも興味あるかなかな?」

 イメージが大崩壊して間もない会長が近づいてきた。


「いえ……特に興味はない……です」

「そもそも、こんな大きなバイク乗れませんよ!……っと言いたいところですが……先程衝撃的なことがありまして……私でも乗れそうな気がします……」


 あの小柄な……大体150㎝位?だろう、絵に描いたような金髪美少女が乗る事が出来るのだから、私でも乗る事が出来る気がした。


 ……で、大崩壊したイメージが更に崩壊することとなる。アニメのステッカーをデカデカと貼っているバイクに会長が乗ろうとしているのであった……!


「……え!?」


 思わず声が出てしまった……。


「これ私のバイク、可愛いでしょう!」


 ……この生徒会長は何でもありである……。


「は、はあ……。私の幼なじみも好きで耐性は持ち合わしていますが……しょ、衝撃的すぎて……」


「まあね!JKがスカートでバイク乗っているのはヤヴァイよね!」

 ……満面の笑みである!そこではない!


 私の言いたいのはそこではないのだけど、突っ込んだら水槽楽部の部室同様、帰れなくなりそうな気がしたので、華麗にスルーして逃げることとした!


「せ、先輩じゃあまた明日!――はっ!?」


 思わず、社交辞令で思わず また明日 と言ってしまった……。

 器用貧乏な私の性格は損である。生徒会長のような人には所謂(いわゆる)社交辞令が通じないタイプである。


「じゃね、また明日!部室で!」


 と言い残し、会長も颯爽と帰って行った。


「……なーんか……運命を感じる……悪い意味で……」


 残念なら、私の家と学校の距離は近いので自転車通学だ。


 ――バイク通学は15㎞以上からである。


 そう思いながら帰路についた。


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