第57話 ほのぼの名水探偵事務所でのひととき(4)
カレーが完成してから『水槽ジャーナル』を読みながら『奈良さん』
午後12時半位になった頃に花梨ちゃんと日花梨さんが帰ってきた。
――『チリンチリン♪』
「あーーーおーーなかーーーすーーーいたーーよーーん!」
「……戻ったぞ!すぐにお昼ご飯とする!」
「お帰りなさい、花梨ちゃん、日花梨さん。ではでは、カレーの仕上げますねー。その間に手洗って来てください」
出かけていった時は『血相を変えて』飛び出していった。しかし、いつもの二人に戻っていた。問題は解決したようだ。
花梨ちゃん達が奥の洗面所に手を洗いに行っている間に、愛芽さんとカレーの仕上げをした。冷蔵庫から『平凡なサラダ』を出し、『平凡なカレー』を食卓に並べた。飾りっ気の無い『普段のカレー』だ。
「……ふむ、平凡なカレーだな……」
あえて平凡なカレーにしました!
「でもでも!いい香りだよん!カレーはオーソドックスなのに限るかなかな」
「……うむ!キャンプ飯の鉄板であるカレーは、やはり美味しい……キャンプ場で鍋を洗うのが大変だが……」
喜んでもらって良かった。何気ない日常を心がけた。
「あの、カレーもですが、キャンプ行くにはキャンプに行くのに私は何準備したらいいでしょうか?」
「……ふむ、七海は炊事班としての役割を命じる!日花梨と当日グランピングに負けないキャンプ飯を作るとする!」
「んじゃー食材は積んでいくかなかな?……って!また私のR3に『ホムセン箱』乗っけないよねよね!」
「……」
「……ホムセン箱とは?何のことでしょうか?」
――花梨ちゃんと愛芽さん『すっとぼけ』たぞ!
「こういう時に車が欲しいですね。去年は明日香さんのジムニーがありましたので色々と積んでいけましたが、今年はバイク組だけで、道具を運ばないと行けませんからね」
「……ふむ、チート使うなら龍を呼ぶが……やはりここは七海の新入部員歓迎会も併せてのキャンプとしたいから水槽楽部員のみの参加とする!」
「でもでも、キャンプ道具積んでいけないよ!……や、やっぱり!私のR3に!」
「……」
「……サイドバッグとは?何のことでしょうか?」
「わ、わたし何も言ってないよん!」
……どうやら、サイドバッグとやらと、多分『ホームセンターに売ってる箱』を積むらしい。積めるのか!?水槽楽部……愛芽さんなら魔改造して乗せそうである。『水作エイト様』も既に200%の性能までたたき上げられている。
「あと、花梨さん。七海さんと奈良さんも来られる可能性があります。色々と道具の買い足しに行かないと駄目すね。OD缶の在庫も無くなりましたし。日花梨さんが事ある毎に使っていて、殆どのガス缶が少量ばかり残されてます……」
「何!?貴重な110ミリのOD缶をほぼ使い果たしただと!?」
「キレイにガレージに並んでましたが、全部4.2%ほどの残量でしたね……」
なぜ4.2%なのか!?……いやいや、判りやすいけど……。
「日花梨!なぜそのような無駄な大道芸をする!せめて、42.5%にしてくれ!OD缶……しかも110g缶は高いんだぞ!」
「な、な、なんの事か判らないよん!」
「……むむむ……仕方ない。『ミカン』にOD缶買いに行くとする……」
――!?『ミカン』にOD缶?農家に売っているのか?
「あのう、ミカンって?蜜柑の事ですか?」
「いえいえ、『ミカン』というのは、『かつらぎ西IC』の国道沿いにある近所にあるキャンプ道具専門店のことです。ちなみに、関西で一番大きな専門店なんですよ」
「え!?和歌山に関西で一番のお店が……来た道にありましたっけ?」
「……うむ!テイラーズからの帰り道に通っている」
――記憶には無いが、通ったらしい。
「なんか・・・・・・水槽楽部ですけど、アクアリウムっぽい活動が少ない部ですよね?」
「アクアリウム自体『鑑賞魚』って言うくらいなので、普段は見ているだけですね。特段やることは、『水替え』と『コケ取り』ぐらいですし。だから『水槽がどんどん増えていく病』になりますね」
「うむ!水槽はドンドン増えていくのだ!そして管理できなくなり、崩壊するのだ。本能を自制できない『クズ』の末路はアクアリウムに限らず皆同じ末路を辿る」
「だねだね!そういうクズ共は消毒してやる必要があるよん!」
「そうですね。では、ミカン農家さんに消毒用のポンプと噴霧器をお借りしておきます!」
「……うむ!今年の初夏は、ミカンの消毒とする!」
――ちょーーっと無理がある『コント』ですよ?共通して言えることは、ほぼ『モブキャラ』の死亡フラグの流れである。
初夏のイベントに『ミカン《汚物》の消毒』が追加された!
「あ!水槽が増えるで思い出したのですが、私の家にも水槽を置きたいのですが、どれ位のサイズで始めてたらいいでしょう?」
部室の水槽とは別に『自分の部屋』にも水槽を設置しようかと考えている。
――既に水作エイト様は購入済みである!
「既に、水作エイトMは買っているのですが、あとは水槽とか色々揃えようと思ってますて……」
「……ふむ、まずは水作エイト様を窓から投げ、外部式フィルターを導入する」
――ちょーと!水草水槽まっしぐらですよ!花梨ちゃん!
「あら、水作エイト様購入済みですか?生体メインでおかんがえですね?」
「はい、でも、水草は入れようかと思っています。水槽ジャーナルにも載ってる『わびさび玉』を入れてみようかなと思ってす。あと、お魚は『メダカ』を入れようと思ってます」
「……なん!だと!?」
「七海、『わびさび玉』を使うことは大いに評価しよう!……だが、何故、水作エイト様を投入するのだ!七海は『水槽ジャーナル128巻 わびさび玉を使ったお手軽ネイチャーアクアリウム』を熟読していないのか!『経典』では、『わびさび玉』を使うことにより、理想的な飼育環境を創り出せると書いているではないか!」
――おーっと!触れてはいけない領域に触れてしまった!?
「水槽ジャーナルは読みましたが、やっぱり『ブクブク』がある方が良いかなーと思いまして……なんか癒やされます」
「判ります判ります!やっぱり水作エイト様の『ブクブク感』は安心と信頼の癒やしですよね!」
――おーっと!触れてはいけない性癖に触れてしまったか!?
「……あ、あのう……またそいう方向とも違うのですけど……」
「アクアリウムバンド『アクリル!!』バンドメンバーの『方向性の違い』により解散となった!かなかな!」
――まーたややこしい!事を言い出したぞ!
「ま、まあ、私の家の水槽のことなので……色々と考えて立ち上げてみます」
「……ふむ……これは一度、七海宅に実地検証に行く必要があるな!来週の土曜は七海宅で水槽設置会議とする!」
――ぜーったい!水草水槽にされてしまうフラグだ!
「花梨ちゃん、来週の土曜日って、ゴールデンウィークですよ?部のキャンプだと思いますが?」
「しまった!来週のキャンプの準備も兼ねてでの『水槽ジャーナル読書会』だった!七海の水槽は再来週とする!」
……いえいえ……再来週でも私の水槽は「自分で色々考えて」立ち上げます。
「花梨ちゃん、私の部屋の水槽は、自分で決めて立ち上げたいので……」
「ぐぬぬ!なんて反抗的な!?さては!?海水水槽だな!?」
さっき「わびさび草」入れるって言ったばかりですよ!?花梨ちゃんが、予想以上に動揺をしている。
「七海さん、水作エイト様では海水水槽無理ですよ?」
「おお!ナナちゃん海水水槽立ち上げるん!?協力するよん!」
皆さん私の話聞いてましたか!?確か「メダカ」を飼うって言ったはずです。
「と、とにかく、私の水槽は私が全部一からお世話します!……っと言っても、分からない所は皆さんに教えてもらいますが……」
「……むむむ!?アクアリウムで分からない事がと!?よし!来週の土曜は七海の家でアクアリウムの勉強会とする!?」
だから!来週はキャンプですよ!?
その後、一連の大道芸が続けながらキャンプ道具の準備をみんなで楽しみながら終えた。
……『水槽ジャーナルの朗読会』は皆すっかり忘れていた。




