第54話 ほのぼの名水探偵事務所でのひととき(1)
道路を挟んで前にある『名水探偵事務所』の玄関前に移動した。花梨ちゃんと愛芽さんは乗ってきたバイクをガレージに片付けに行った。花梨ちゃんに『先に入って暖炉に火を入れておいてくれ』と言われたが……鍵は預かってないが……。
「鍵が無いのに入れません!」っと呟きながらドアの取っ手を念のため握ってみたら……
——『ガチャ!』
自動的に鍵が解錠された!?どうなってるんだ!?このドアの鍵は!?
……前回来たときも謎のドアだと思っていたが……気にしないことにした。
花梨ちゃんの指示通り、薪ストーブに新聞紙を突っ込み、適量の点火用の細い薪を……までは既に準備されていた。ライターを使い火を入れた。
すぐに火が回り、薪ストーブが暖かくなってきた。火がちゃんと着いたのを確認し、とりあえずヤカンに水を入れ、コーヒーの準備をすることにした。
——『チリンチリン♩』
「いつ来ても花梨さんの家はノスタルジックでステキな家ですよね……家の雰囲気にマッチしたこの大型水草水槽も……よく合っています」
愛芽さんも花梨ちゃんの事務所には数回来ているのだろうか?
「最初花梨ちゃんの家に来たときホントに驚きましたよ。この水槽を花梨ちゃんが創り上げたとは……」
まだ早朝なので『水槽のライト』は付いていないが、部屋の明かりだけでも十分水槽の雰囲気が楽しめた。しかし、花梨ちゃん邸は全体的に照明が暗い気がしていた。
「花梨ちゃんの家って、全体的に暗くないですか?」
「そうですね、アクアリウム愛好家ならよくあることですね。水槽を引き立てる為に『間接照明』にしたり、『水槽に余分な光』を当てないように窓のカーテンを一日中閉めたりしますね」
「花梨さんの家は、かなり計算されていますよ。窓からの光は直接水槽に当たらないように工夫していたり、照明も天井を照らす『間接照明』にしてますね」
「なるほど!てっきり、薪ストーブの光を楽しむ為とか、インテリアのこだわりからかと思っていました。」
「そうですね、その辺も含めて計算しているのかと思いますよ。花梨さんは、アクアリウムも生活の一部に溶け込ませる事を重視されていますので。っと言っても個人のレベルを超えていますが」
幻想的な部屋に仕上がっている。調度品などは置いていないが、ソファーや薪ストーブ、キッチンに至るまでがアンティーク調で統一されているが、利便性は損なわれていない。前回来たときも気付いたが、ほぼ全て最新の家電やキッチンが揃っている。オーダーメイドで製作されたのだろうか?
薪ストーブも最新式で調理もできる。
——『チリンチリン♩』
またドアが開く音がした……
「……4月後半とはいえ、やはり寒い……七海、もっと景気よく薪を入れるのだ!」
花梨ちゃんの許可が出た!よーし!気合い入れてドンドン薪をいれるぞ!
……ポイ!
……ポイ!
……ポイポイポイ!!
――薪ストーブ君『モクモクモク!!!』
――!?
薪を入れすぎた!!不完全燃焼で薪ストーブから煙が吹き出した!
「……!?七海!入れすぎだ!!」
……花梨ちゃんが手際よく薪を裁いた!
「……ふむ、これで良し!七海は調子に乗ると雑になる……ライブロック積んだ時も崩れた……気をつけること……」
「す、すみません……つい、やっちゃいました」
「……うむ!では朝食とする!……で、誰が作る?……私の料理は怪しいぞ!!」
「うんじゃー私が作るよん!ナナちゃん手伝ってねー!」
……って!いつの間にいたんだ!?……まあ気付いてはいたけど……挨拶無しで唐突に喋り出すのはどうかと思いますが。
「あのう……日花梨さん、今日は唐突に出てくるスタイルですか?パン屋の時もですが、気配消してもバレバレですから」
「……日花梨、気配を消すのはどうかと思うぞ!今日は水槽ジャーナルを1巻から最新刊までの朗読会だ!ふざけるなら帰れ!の前に、朝食を頼む!」
「うんもー!せっかくナナちゃん来たんだから、朗読会ってツマラナイ事は夜とかにして『龍神温泉』までツーリングでも行こうよ!」
「……ふむ……龍神温泉は『日花梨』一人で行くとする!」
「ええ!ナナちゃんと行きたいよん!行かないなら、朝ごはんは作らないよん!」
朝食の準備を餌に無理を押してきた!ので……
「あ、花梨ちゃん、じゃあ私が作りますね!元々そのつもりでしたので」
「しまった!ナナちゃんも料理が出来るのだった!……うんもー仕方ない仕方ない!作るよん!」
……ささっと日花梨さんが朝食を作り上げた!
「はーい!お待たせ!『ピザトースト』と『お野菜たっぷりコンソメスープ』さらに『温野菜をピリリと刺激的な柚子胡椒とオリーブオイル入りの青じそドレッシングで和えたサラダ』よん!」
……ドレッシングのネーミング長い!
「……うむ!80点!……フランス料理並みにサラダの名前が長いのがイマイチだ!『温野菜をピリリと刺激的な柚子胡椒とオリーブオイル入りの青じそドレッシングで和えたサラダにマヨネーズをブチャーっと乗せ』とする!」
……いやいや……更に長くなたった!
「あああ!マヨマヨはダメダメ!折角の温野菜が……」
花梨ちゃんは容赦無く『オン ザ マヨマヨ』を実行した
「……ふむ!朝はやっぱりカロリーが必要……大きくなれないぞ!」
……努力の結果小さい花梨ちゃんと、ほぼ完璧な日花梨さんがいる……遺伝子の影響である。
日花梨さんは見た目だけではなく、黙ってさえいれば内面的にも完璧に近いのだろうか?
水槽楽部4人で朝食を済ませると……
「……ごちそうさま。では、経典の朗読会とする!」
……忘れてなかったようである!
「水槽ジャーナルって本、見かけませんよね?」
「水槽ジャーナルは特約店のみの販売なのですよ。和歌山だと限られた店舗のみの販売ですね」
「……うむ!A〇A公認のショップのみ扱える書である!」
――日花梨さん絶対ツッコミ入れるぞ!
「人はそれを『宗教』と呼ぶ!」
「……!?日花梨……水槽ジャーナリストを読む気が無いなら今すぐカエレ!!もしくは静かにしている!」
「ええ!……仕方ないね……大人しくしてるよん!」
日花梨さんは本当に特徴的なしゃべり方をする。普通に話せるのに『わざと』しているのだろう……。
花梨ちゃんの勧めで『水槽ジャーナル1巻』からの読書会が始まった……
確かに、『水槽ジャーナル』は読み物としては丁度いい厚さだ。1つのテーマに絞って深く掘り下げているが……
「……あのう……読み物として面白いですが、さすがに飽いてきました……」
2時間近く読んでいて、水草水槽に関してや濾過の働きなど理解できた。……が、さすがに飽きた。第30巻を過ぎた所だ。
「……ふむ、私は飽きないのだが……七海、お昼の買い出しにスーパーへ行こう」
「……あと、午後からは『GWのキャンプ』の打ち合わせとする!読書会は後日行うこととする!」
「あ!読み物としてはとても興味あるので、10巻ずつくらい貸してもらえたら嬉しいのですが……」
「……むむ!『水槽ジャーナル』は貸し出し禁止なのだ!……私が読めなくなる……」
「経典が手元に無いと『手の震え・めまい・発熱・嘔吐・倦怠感など』の症状がでるよん!人はそれを『依存症』と呼ぶ!人間って大変だねだね!」
――日花梨さんは『人』じゃないのか!?
「……むむ!日花梨、私はそのような症状など出ないぞ!『落ち着きが無くなり、幻聴・幻覚がでる程度』だ!」
……禁断症状出てますよ!
「それでは、花梨さん、日花梨さんとお昼の買い出しに行ってきますね。」
「おけおけ!んじゃー愛芽ちゃん行くよん!」
「……うむ!任せた!残った七海と『キャンプ道具の確認』を進めておく!」
日花梨さんと愛芽さんをお見送り、花梨ちゃんと『GWのキャンプ』の準備をすることになった。




