第48話 水槽に桜満開!?コレって海水水槽だよね!?
……時は過ぎ……放課後になった……?
え?時間軸一気に早くなってないかって?2週間もすれば授業にも慣れ……東高校体操も完璧に踊れるようになったのである!……体操だけど。ようやく来週から東高校体操の練習から解放されることになった!今日の授業の山場はこの程度だった。放課後はコミュニティーセンターで集合となっているので、生徒会室に先に寄ることにした。奈良さんの様子をチラッと見てから行くことにした。
何気ない会話をしたが、『かわさきさん!』とやはり姓でしか呼んでくれなかった。進展はナシだ!日を増すごとに去年の『寿姉妹と水槽楽部』との衝突の内容がジワジワ判明してきて申し訳ない気がするが……奈良さんとは会話は成立しているのは助かっている。時間をかけて仲良くなっていこうと改めて思った。
棚上げでは無いが奈良さんとの関係は、とりあえずは現状維持である。花梨ちゃんが卒業するまでに奈良さんも水槽楽部の一員となるようにしたい。
……それより……昨日のコミュニティーセンターの水槽である。センターに歩きながら呟いていた。
「……大丈夫かな……どう見てもショボかった……倍のサイズになってもスカスカで迫力も無ければ、華やかさもなかったよ……」
「……ふむ、サンゴは成長が遅い、あと、サンゴは毒を持っているので、種類の違うサンゴ同士触れてはいけないのだ。だから結構マージンを取る必要がある……」
「……なるほど……毒を持って……って!花梨ちゃん!?いつの間に!」
「……うむ!七海を待っていたのだ。コミュニティーセンターへは裏口からが一番近い。正門からだと相当遠くなるから来ると思っていた」
「ありがとうございます!ちょっとだけ生徒会室へ行ってまして少し遅れました」
「……ふむ、気にすること無い。むしろ頼りにしている……」
「それで、花梨ちゃん、本当にあの配置で良かったのですか?あれだけ小さいと、ある程度まとめて置いた方が良かったのではないですか?」
やっぱり不安だった、仮に通常の3倍大きくなったとしても……全然がら空きだからである。部室の海水水槽をみていると、かなりビッシリとサンゴで埋め尽くされていたからだ。一方、コミュニティーセンターの海水水槽はスッカスカである。
「……うむ!あれでいいのだ七海、きっと驚く」
「ホントですか……?どう考えても寂しい水槽っぽかったのですが……あ!お魚メインって事なんですか?サンゴはおまけ程度っと」
「……七海、ちょっとしつこい……もうすぐ判る」
花梨ちゃんの事は信じたいけど、どうも私がイメージと合わなかった。
疑問に思いながらコミュニティセンターへ歩いて向かった。お魚は先に行った日花梨さんが『温度合わせ』を行っているらしい。
コミュニティセンターに到着すると、日花梨さんが作業をしていた。昨日のサンゴ同様ビニール袋を『サンプ側の水槽』に浮かべていた。
「お疲れさまです。日花梨さん」
「おつおつ!ナナちゃん!水槽観てみるみる!」
期待はあまりしてなかった。昨日の量では……確かフニャフニャの小さなソフトコーラルを20個程入れた程度だ。120cm水槽ならあの5倍ほど入れないとスカスカであった。
「ホントにアレで良かっ……」
——まるで別世界だった……!
低砂の上に置いた『ブツブツの岩みたいなサンゴ』が『桜の花』のように見事に開いていた!まるでお花畑のようにキレイだった。ピンク色の花を咲かせ水流でユラユラしていた。
中央付近に置いていたブロッコリーみたいなサンゴが……3倍どころか5倍?10倍近く大きくなっていた!ただ大きくなっただけでなく、薄い緑色のが花を咲かしていた!
……サンゴだから正確には花ではないけど……
なんか気持ち悪かった見た目……なんか人間の肌みたいなサンゴが……グーリーンとピンクのまるで『芝生のように』なっていた。
そして、サンゴの上に置いたキノコに近い白い形で『デローン』とグダグダに垂れ下がっていたのサンゴが……
「あ・・・あの!こ、この白いの花が!開いたり閉じたりしてます!」
そう、クパクパ周期的に花を開いたり閉じたりしているライトの方に向いて満開の花を咲かしていた。
——少し引いたところから観たら、満開の桜の花道みたい——。
春の桜の花道があるようだった!
ところどころワンポイントに緑や紫のサンゴが咲き乱れていた!
「ええ!?、昨日と全然違いますよ!!中身入れ替えましたよね!!」
「ううん!『昨日入れたサンゴ』だけだよん!」
「……うむ!これがサンゴだ!」
「昨日のツルツルお肌とブツブツお肌のだったのが、『スターポリプ』、枝みたいなのは『チヂミトサカ』ですっごい大きくなっちゃってるけどね!クパクパしているのが『ウミアザミ』だねだね!あとは、『ディスクコーラル』『マメスナギンチャク』だねだね!」
……まるで別世界だ……!しかも何でユラユラしてるのこのサンゴ達!
「……ふむ、ウェーブシステムも順調に稼働しているようだ!」
「ウェーブシステムって?」
「人工的に水流を作っているんだよん!!!」
「そ、そんなことが出来るのですか!」
「……うむ!実際稼働中。あの水槽にへばり付いてる黒いのがそう、あの複数ある水流ポンプを『コンピューター制御』でランダムに稼働させ、色々な水流を作り出しているのだ!」
「だねだね!……でも部室や私の家のシステムから比べたら簡易的でイマイチかなかな?でも、『淀み』もなさそうで良かったよん!最低限のパフォーマンスは出てるみたいで良かった!良かった!」
……これでイマイチって……日花梨さんの家はどうなってるんだ!一度見に行きたい……!
「……よし!日花梨、魚を入れるとるす!」
「おけおけ!温度合わせと、水合わせは済ませておいたよん!」
日花梨さんが結構な数の……一種類だけ!?
「どぼーん!どぼーん!どぼーん!どぼーん!……」
っとどぼーん!っと計30回繰り返した!?どぼーん!っと言っても、網でそーっと入れていたが。
「カクレクマノミだけですか!」
「だねだね!この水槽は『カクレクマノミ』だけなのだよ!」
「って、このカクレクマノミ小さくないですか?」
部室のカクレクマノミより遙かに小さかった。
「うんうん!小さいね!ぜーんぶ私がブリードしたカクレクマノミだよん!あと、全部『男の子』だよん!」
——全部『オス』だと!?
「……日花梨……その性別を言うのはどうかと思うぞ!誤解を招く」
……なぜ?ブリード出来るだけでも凄いのに、『見た目が全く一緒』なのに性別を判定出来るのは凄いが……。
「ありゃ、ゴメンゴメン!別に判別しているわけでないよんナナちゃん!カクレクマノミは産まれたときは全部オスなんだよん!性転換して『オネエ』になる世界!BLだな!JKが大好きなBLだねだね!」
「……あのう……そんなわけないでしょ……」
「……ふむ、日花梨の言う通りだ!グループで一番大きなカクレクマノミが『性転換』して、次に大きな奴と『番い』となる。そしてメスが仮に死ぬと、2番目に大きかった奴が『性転換』して、3番目に大きい奴と……以下略だ!」
「ええ!?な、なんて夢がないシステム!」
現実はファインディング映画ではなく、イメージとは全く違うのである!!受けと攻め、攻めが受けになるという不可解な営みを繰り返すのである。
「でも凄いですね……この30匹が日花梨さんが育てたカクレクマノミって」
「いやいや!今回は上手く行っただけだよん!結構ブリードを個人宅でするには難しいのだよ七海くん」
……そういえば、サンゴも日花梨さんの持ち出しだった気が……。
「あのう、お魚とサンゴ日花梨さんの持ち出しだとしたら、四二万五千円の行方が……」
「……ふむ、ライブロックと機材周りだけで四二万を超えているのだ!」
……何ですと!
「それだと、大幅の赤字ですよね!ま、まさかマッスルベーカリーさんとかGRPさんのピンハネが……」
ブラックだぞ!資金の流れがブラックである!
「……むむ?そんなことは無い。むしろ仕入れ値に近い金額で導入できている。120cm水槽でこの価格で実現できたのは奇跡である!」
「だねだね!ナナちゃん、60cm……所謂標準サイズでもこのシステムなら20万こえるよん!その数倍の大きさで四二万五千円で完成したのは安上がりだねだね!」
――海水水槽スタートはとてもハードルが高い!?金銭的な意味合いで。
「……なんか、海水水槽……ちょっと憧れましたが、高校生では無理ですね……」
現実問題として、仮に20万円で揃えられたとする。高校生のアルバイトで頑張っても月5万から7万位が限界かなと。無理である。この部の資金運用は既に社会人すら超えていたのである。
「だねだね!収入に応じたアクアリウムを始めるのだ!あ!ちなみにだけど、海水水槽でも格安システムなら3万円でも出来るよん!『3万ならナントカなる』かなかな?」
「……ふむ、水槽楽部の資金源は探偵事務所預かりだから何でも出来るのだよ。七海」
……花梨ちゃんの探偵事務所って『儲かっている』用には思えないのだけど……。普通に花梨ちゃん登校しておりますが?時々昼から登校だけど、仕事量的に無理だと思った。
「あの……探偵業って……儲かっているようには全く見えなかったのですが……」
「……!?失礼な!私の探偵料は『13の旦那』並なのだよ!」
スイス銀行!?お振り込みは是非『スイス銀行高野山支店』へ!『893御用達の探偵業』ではないだろうか?どうも、花梨ちゃんと愛芽さんは黒い社会の人間に思えてきた。意外と……誤解があるけど、日花梨さんが一番『普通』っぽいのである。
「……2日間の立ち上げ作業をこれで完了とする!」
無事コミュニティセンターの海水水槽を設置できた。今後は週1回以上メンテナンスに来ることとなった。その際、私もお世話することになるとの事。少しずつだが水槽楽部での『役割』がふえつつあった。




