第47話 読書の春とソフトコーラルレイアウト!?
コミュニティーセンターに戻ると、『少し白濁していた水槽』が透き通るキレイな水になっていた。その光景がとても不思議に感じた、濾過材どころかゴミを取り除くウールマットすらない水槽なのに濁りが完全に取れていた。時間的には2時間経った位であろう。『プロテインスキマー』だけでスッキリ綺麗に取り除けたのだろうか?
「おぉ!さすがライブロックだねだね!綺麗に白濁取れているいる!」
「これって、ライブロックのお陰なんですか!」
「うーん、そうなんだけど、若干違うかなかな?ライブロックに着いてるバクテリアが分解したのと、プロテインスキマーで取り除いただねだね!」
バクテリアの作用が目で見てハッキリ解った。
「バクテリアって、目では確認できませんが、確かに居るのが解りますね……ここまで水が透き通るって思いませんでした」
「……うむ!清流の川があれだけ透き通っているのはバクテリアが処理しているからだ。雨の後濁ってもすぐに元に戻るのは沈殿しているだけではなく、バクテリアが処理してくれているのだ。水槽も状態が良いと、濁りがすぐ取れる。しかし、状態が悪化すると白濁したり、グリーンになったりするのだよ!」
「だねだね!この状態ならお魚入れて大丈夫かなかな?」
「もう入れて大丈夫なのですか!?私の水槽でもまだ入れてませんよ!」
「……ふむ、念のため、明日の放課後にしよう。今日は、ソフトコーラル類を入れて作業を終了とする!」
「アイアイサー!だねだね!ショップとかなら入れちゃうだろうけどね。私たちは隣だしね!避けられるリスクは回避しないとね!」
「あのう、ソフトコーラルって?サンゴのことですか?」
「だねだね!柔らかいサンゴで『ソフトコーラル』だねだね!ちょーっと違うけど、骨格がないのだよ!」
「この水槽に入れるのは、私が養殖したソフトコーラルなのだ!種類はイッパイあるので説明は割愛するよん!愛を割るのだよ!離婚だね!」
「……なんか不吉です……」
日花梨さんの表現は、時々ビックリさせられる。
「あ!日花梨さんの表現微妙に合ってません?分割するって意味合いでは合ってますね。」
「んん?そうかな?ビリビリってサンゴやっちゃう?……あわわ!なるほど!!確かに割るだね!正確には切断だけどねん!」
――切断!!って何が行われてるんだ!
「七海さんソフトコーラルを増やすには、水上に出してカッターで切断しちゃうんですよ」
「ええ!愛芽さんが言うくらいなんでホントなのですね……」
「……ナナちゃんには失望したよ!私!そんなに信用ないかなかな!」
「いえ……信じたくない……とだけ……」
日花梨さんは……水槽楽部の皆さんは大げさに言ってる節はあるが、冗談とか嘘は殆ど言わない。ホントに大げさには言うけど……大体合ってるから、なーんか微妙に信じ切れない……合ってのですが……。特に、日花梨さんは見た目のがハイパースペックなのに、中身が残念過ぎる……
「なーんかなー。ナナちゃん私にキビシくない?かなかな!」
「そんなことは……あるかな?だって!日花梨さんそんなに美人なのに、言動が残念すぎです!」
「ガーン!私ってそんなにオカシイかなかな?普通だと思うんだけどねん!」
「……七海、日花梨が普通に行動・言動すると完璧すぎて気持ちが悪い。今のままでOK!」
「OKです!日花梨さん!今のままで!」
花梨ちゃんの言うとおりです!完璧すぎてヤバい。
「なんか納得できないんだけどけど!……うんもー話がズレちゃったけど、ソフトコーラルはホントにぶった切るのだよ!七海君!」
「枝分け?……ですか?」
「おおお!そそ!!その通り!バサッと切って、ライブロックとかに強力なボンドで『くっ付けて』増やすよん!」
「ええ!?そんな方法で増えるのですか!?」
「うんうん!すごいでしょ!その、ぶった切って育てたのがこのクーラーボックスに!」
……クーラーボックスにソフトコーラルの頭部が!?軽いサスペンスである……心で思っただけで寒かったので口に出すのは止めておこう……。
「……!?ソフトコーラルの頭部が!!そのクーラーボックスの中に!?」
「事件です!!花梨姉さん!!」
三段壁から飛び降りないし、『事件です!姉さん!』は古すぎて解らないですよ!
「もう!ネタはいいからソフトコーラル入れていくよん!ナナちゃん!クーラーボックスから出してね!」
「了解しました。クーラーボックスに入ってるくらいなので冷やしているのですか?」
「ううん、家に発泡スチロールが無かったからクーラーボックスに入れてきただけなのだよ!」
パカッと!クーラーボックスの中には!?……ビニール袋が沢山入っていた。小分けに分けて入っているようである。キレイにパッキングされていた。
「愛芽ちゃん、浄水器のコックさんを止水にお願い!」
日花梨さんがサンプ水槽から海水をバケツ1杯分ほど抜いた!?
「ナナちゃん!サンゴをパスパス!」
サンゴをパッキングされてたままの状態で渡すと……水槽に浮かべた!?
「日花梨さん、ソフトコーラルって水合わせ必要なのです?私は必要ないと思うのですが、日花梨さんはどう思います?結構意見割れますよね?」
「だねだね!うーん、私は気にしないけどねー。温度合わせだけして、投入かなかな?微妙と言えば、微妙……かなかな?どんなに丁寧にしても落ちるときは落ちるし、テキトーにドボン!しても大丈夫だったり。むしろ水合わせより環境が合ってるかの方が重要だとおもうよん!コーラル類はアンモニアに強いけど、リンには異常に弱いし、硝酸塩が少し出るだけで白化するし、かといって硝酸塩が全くの0だと成長しないし……うーん!ワカンナイ!」
日花梨さんでも解らないらしい。サンゴ自体、動物に分類される?っぽいらしいし。植物にしか見えないのだが……。
「そうですよね。サンゴ・コーラル類自体、謎の生命体ですし。そもそも動物に分類されていますからね。触手が出たり、捕食したり、共生したりと謎すぎですよね」
その後サンゴについて愛芽さんと日花梨さんがとても濃い内容の話をしていたが、私が理解できたのはここまでだった。花梨ちゃんは特に興味が無いようでコミュニティーセンターに併設している図書館で何かやら調べ物をしているようだ。
会話をしながらソフトコーラルを『袋ごと』全て水槽に浮かべ終わった。浮かべ終わったが、愛芽さんと日花梨さんの会話は、さらに専門的用語を連発しながら会話が続いていた。
温度合わせに少々時間が必要とのことで、話しについて行けない私は、花梨ちゃんと併設の図書館で時間を潰すことにした。
……ちなみに花梨ちゃんが読んでいる本は、『できる!0から始める英会話 基礎編』だった。英語自体の成績は普通らしいが……英会話となるとヒアリングが!?等……典型的日本人である!
私も折角なので、『初めての海水水槽!優しくしてね!』という参考書を見つけたので読んでみることにした。
タイトルがややいかがわしいが……。
※目次……さあ!始めようかなかな!海水水槽!
……なんだこの目次は!
一気に最後のページを見た!
著作:死神 日花梨
初版○○年4月25日
第16版○○年4月25日
第16版って!そんなに売れているのかこの胡散臭い本は!って、この作者絶対日花梨さんでしょ!あと、ペンネームに死神って飼う前から『ヤバいのに目をつけらて』どうする!
書き出しはやや癖のある書き方だったが、中身は終始真面目だった。ライブロックについてや、人工海水の使い方・サンゴ砂の種類について。濾過の種類まで事細かく書かれていた。正直、かなり参考になった。この本を日花梨さんが書いたとしたら驚きである。同じ高校生とは思えないくらいの内容だった。
……本当に高校生か?
私は本はあまり読まない方だけど、かなり読みやすい本だった。写真付きでとても解りやすい解説本だった。日花梨さんの海水水槽への想いがとても伝わった。……何故ここまでいい本なのに、ペンネームを死神としたのか……?本当に不可解だった。
「七海さん、花梨さん、そろそろ水槽に入れますよ。日花梨さんがもうサンゴを入れようとしてますよ」
愛芽さんが呼びに来てくれた。急いで戻らないと投入が終わっていそうだ。
「……レツゴー七海!」
……とても聞き取りやすいです!
「日花梨さん、この後どうするのですか?ドボンと入れちゃっていいのです?」
「うんとね、可能な限り根元に付けている土台を持ってね!サンゴは粘膜で覆われているから触っちゃうと調子落としたりするから慎重に!慎重に!」
手にとって袋の中をよく見ると……なんと!逆さまになってる!?土台部分に発砲スチルロールを付けて浮き代わりにしている。
「日花梨さん、なんか逆さですけどこれが正常なのですか?」
「うんうん!これでいいの!輸送するときに傷つかないように浮くようにしているのだよ!浮かしていないとビニール袋で擦れてダメージが増えるよん!」
「日花梨さん本当に丁寧ですね。ショップでもここまでの梱包しませんよ」
「ナナちゃん丁寧にビニール破いてね!カッター使うといいよん!中の海水はバケツに捨てたら良いからね」
「あ、はい!んじゃー早速……」
……カッターで袋を……どう切れば良いのだ?
「……七海、バケツに袋を入れて、バケツにもたれかけるようにする。そして
上の空気の部分を適当に切り、中のサンゴだけを取り出すといい。水を先に抜いてしまうとビニール袋に『ぺちゃー』っとなってしまう」
……なるほど!袋を開けた後、どばーっと!バケツに出したら……とも考えたが、ゴトン!っといっちゃいそうでチョット心配だった。
教えてもらった通りにすると上手く取り出せた……!
「な、なんかグロいです!」
「だねだね!一歩間違えたらエイリアンだねだね!よーし!ナナちゃんドボンと行っちゃおう!」
「あ、はい!それでは……」
そーーーーっと!水槽の中に入れた!もちろん、レイアウトは引き続き花梨ちゃん指導の下、配置していった。
「これで、全部ですね。なんかショボくないですか?」
「だねだね……でーも!ナナちゃん!明日放課後にお魚投入に来たら驚くよん!」
……このなんかショボい……本当にスカスカでなんとも言えないレイアウトだった。
「あのう……本当にこれでいいのですか?なんか心配になってきたのですけど」
「……ふむ、ソフトコーラルはこれ位で大丈夫。明日になったら驚く」
花梨ちゃんも同じ意見のようだ。このタイプのサンゴは部室には無いように思えた。日花梨さんの家のサンゴらしいが、こんなエリンギや蓮みたなボコボコばかりで大丈夫なのか心配である。個人の水槽なら……良くないか……なんとも言えない仕上がりで今日の作業は終了となった。
……っと思ったら……
「七海、水槽をキチンと拭いてから終了とする!」
――水槽楽部の水槽はいつも『くもりが無く透き通っている』のである!




