第40話 七海水槽2日目!カルト教団『マツモ神』の爆誕を観た!?
生徒会の仕事を片付け、愛芽さんと部室に向かうことにした。生徒会室から部室まではかなり遠い。生徒会室の窓から別棟の『水槽楽部部室』は直下に見えているのだが、別棟なので当然、一度校舎からでなければならない。3階から1階に降りて、裏口側から校舎を出て、それから別棟に行ける。
「愛芽さん、生徒会室からハシゴかけません?」
「確かに、遠いですよね、見えてますからね……。花梨さんと日花梨さんは、生徒会室から飛び降りた所を目撃されたらしいですよ」
――やりそうだから怖い!?冗談だと解っていても、あの二人ならやりそう。
「上から見たときに気になってたのですが、プールと部室って配管でつながってますよね?」
おもいっきり上から配管が見えてますよ!?
「そうですね、実はプールの『水道局の配管』は構内を通っていないのですよ。構内を通ると、あの校舎の上にある『丸い貯水タンク』を通過するのですが、プールの水を入れる為にわざわざ通す必要がないですよね?水量が何トンにもなりますので」
「たしかに、それは理解できますが、それと水槽楽部への配管が……」
「あのタンクが問題なのです。水槽用の水を利用する際は、可能な限り良い状態の水が欲しいわけですが、貯水タンクは若干問題があるのです。金属製のタンクや金属の配管を使用している場合や、水圧上げるためのポンプを通したりしてますので、『重金属』の量が増える可能性があるのです」
「なるほど……。あの水私たち飲んでません?いや、飲んでますよね?」
体育が終わったときに水を飲んだりとかで冷水機の水を飲んだりしているような。あと、マンションで生活している人も同じことだと思うのだが……体に悪い!?
「そうですね、飲んでますね。私は飲みませんが」
おーっと!生徒会役員ですよ!問題があるようでしたら改善要求をば・・・。
「ご心配なく、誤解が無いように付け加えますが、貯水タンクの水は飲み水としては問題ないですよ。あと、学校の冷水機の水は、浄水フィルター通してますのでとても美味しいはずです。ちなみに、メイスイ製の高機能フィルター使ってます」
「だれだ!!!メイスイだと言った奴は!??」
――なんだ!!なんだ!?
「あら、花梨さんどうかされましたか?」
……花梨ちゃんドコから現れたんだ!?
「……ふむ、今、私のことをメイスイだの!浄水ポットだの陰口を言われた気がしたのだが……」
「ああ!今、七海さんにうちの学校の『飲み水用冷水機』はメイスイの浄水器を使用していて美味しいですよって話してたのです」
「……むむ?紛らわしい会話……学校の浄水器は生徒会の権力を行使して『三菱の浄水器』に変えよう!!」
「いえいえ変えませんし、そもそも、生徒会の横暴です」
「……チッ……部室戻る……」
そう言うと花梨ちゃんは、早歩きで戻ってい――って!?戻る途中にある『メイスイの浄水フィルター搭載』の冷水機を『バァァン!』と蹴飛ばしていった!?
「花梨ちゃんは、冷水機に恨みでもあるのですか?」
「花梨さんは、単純にメイスイが気に入らないだけですよ。花梨さんの名前って……」
「名水ですよね?探偵事務所に行ったときもフリガナ振ってましたし」
――なるほど、「めいすい」と読める……というより、『めいすん』って読まないよ!?
「ちなみに、花梨ちゃんの姓ですが、英語表記だと有名な弁護士さんと同じ名前らしいですよ。但し、アメリカ人らしいですが。花梨ちゃんは英国人ですね」
「なるほど……原因は名前を間違えられることですか……スゴい勢いで飛んできましたよ?」
「名前を間違えられることより、メイスイのCMのせいかなー?カッパが出てくるCMですが、どうも小学校の頃に結構馬鹿にされたみたいで、根に持っているようですね」
え!?そちら側ですか!?めっちゃ金髪ですよ!?英国人でありながら、英語喋ることが出来ない方が茶化されそうだけど。
「と、とりあえず、花梨ちゃんの姓は言ったことないので私は大丈夫……」
見えていたけど遠い部室に辿り着いた。入学してから毎日欠かさず部室によっている気がするが……。
「お疲れさまです!私の水槽はどんな感じになって……え!?」
――なんと!驚いたことに、昨日帰り際には真っ直ぐ立っていたグリーンロタラが横に倒れていた!?
「花梨ちゃん!グリーンロタラ全部倒れちゃってますよ!枯れちゃった?」
水草が枯れるという表現が合っているのか?
「……ふむ、これがベスト。むしろ良い感じになってきた」
これがベストだと!?完全に横にペタッと寝ているぞ!?
「グリーンロタラは適切な光量とco2、底砂やソイルが入っていると地を這うように根を張るのですよ。そして根から栄養素を吸って成長します」
「水草育成を始めるのにグリーンロタラを選択したのは花梨さん、流石って思いますよ」
「これから、『隣の水草水槽』のグリーンロタラみたいに『ふわーっと』なるのですね」
とっても不思議だ。真っ直ぐ立っていた植物が1日で這うように変化するとは……。
「よく観たら、小さい芽出てますね!あと根っこも!」
グロッソスティグマとグリーンロタラから小さな芽と根が少しだが出てきていた。
「……うむ、水上葉を使うと、環境に適応するのに時間が必要としないのだ」
「水中葉のグリーンロタラを使うとこうはいかない……」
「簡単に言うと、以前いた水槽から別の水槽に入れ替えると、環境の変化に順応する必要が出てくるわけ。栄養状態やpH、硬度など色々要因があるんだけど、水上葉から始めると水上で溜め込んだ栄養を利用して一気に環境に適応する水中葉を展開するってわけ」
不思議だ!普通にプランターで育っていた植物が、水の中に入れると水中に適応した植物にコンバートするとは!
「水草って大体が水上で栽培できるのですか?」
「それは無理ですね。例えば、一番目にすることが多い水草の一種、金魚藻で有名な『マツモ神』は|水中でしか生きていけませんね」
「……『マツモ神』は偉大なのだ!崇め称えよ!!」
なんか一気にきな臭くなったぞ!?
「ま、『マツモ』ですか?」
「違う!『マツモ神!』だ!」「『マツモ様』ですね」
今、カルト教団『マツモ神』の爆誕を観た!?なんかメンドクさい展開になりそう……。
「……!?七海、ちょっと再教育が必要か?」
……心の中を読まないで!
「考えたこと読めてますよね!」
「……いや、顔見たら判る」「顔に出てますよ。七海さんは嘘がつけないタイプですね」
……何だと!?中学時代『東中の|孔明』と呼ばれた私ですよ!
「マツモ……マツモ様って、そんなに凄いのですか?」
「マツモ様は、水槽立ち上げ初期状態の安定しない時や、水槽設置して数ヶ月後の原因不明で不安定になった時に、とりあえず水槽にぶち込んだら何とかなる位すごい浮き草なのですよ」
「……うむ!私も『アマ○ニア』の初期の栄養過多状態で不安定なときに、幾度となくお世話になった偉大なる神だ!」
「マツモ様自体が『バクテリアの住処』となって濾過能力の底上げをしていただける。さらに、水槽では日々蓄積される硝酸塩を吸収もして頂けるのですよ。」
「おお!それって、海水水槽の『ライブロック』みたいな効果じゃないかなかな!淡水にもそんな素晴らしいお方が!?」
……って!日花梨さんまで参加してきましたよ!『ライブロック』とは何だ!?
「……うむ!……但し、成長が凄いので、水槽が安定したら、別にご用意したお部屋にて養生をしていただくのである!」
安定したら帰れということか?働かされたあと用済みになったらポイと……。
「なんか話が一気にそれちゃいましたが、『水上葉になる水草』と『水中でしか生きられない水草』があるって事ですね」
「ざっくり言っちゃったらそうかなー。コケ類はまた別の分類になるので難しい」
コケも水草に入れるのか!?とりあえず、『水生生物』は何でもぶち込めるのだろうか?
「……うむ!グリーンロタラは教材としても優秀。水中葉になるとキレイなのも点数が高い」
「水草自体にもバクテリアが付着しますので、水草を水槽に入れる事はプラスになる事のメリットが大きいですね。当然、光合成をしますので、水槽内の酸素量も増えますし。」
いい事ばかりな様に感じるのだが……。世の中そこまで甘くない事は短い人生だが分かっている。
「でも、デメリットも当然ありますよね?」
「……うむ、水草は弱酸性を好む傾向がある。魚の種類によってはアルカリ性寄りの水でないと生きていけない種類がいる」
「ですね、どうしても硬度が高い、アルカリ性を好むお魚では難しいですね」
……なるほど、pHが大きく影響を受けるのかな。
「海水水槽はその点、全部アルカリ性の硬度アリだから簡単だよね!そもそも、弱アルカリ性でないと駄目駄目だからねー!」
「……うむ、海水水槽の方が水質管理は簡単なのだ。ただし全て……マネーよ!」「お金ですね」「銭こよ!」
「ギャッ!ギャッ!ギャッ!」「ギャッ!ギャッ!ギャッ!」「ギャッ!ギャッ!ギャッ!」
――何だこの金の亡者のような3人組は!?




