第33話 黒龍会vs名水組 確か水槽楽部だったよね!?
――『open AM7時~売り切れ迄、休日不定期』
朝7時から開いているお店のようだ。どうやら、今日の食パンはオープン前に花梨ちゃんが買ってきたようだ。イートインスペースもある?ようだ。
――気のせいなら良かったが、入り口は……パン屋さんではあるが、チラッっと奥に見える建物に……間違いなく『桜の代紋』の相反するマークが付いているのだが……。
――カラン!カラン!
花梨ちゃんと一緒にドアを開け店内に入ってみた。
「敵襲か!?どこの組のもんじゃわれぇ!」
――何処からどう見ても893だ!?十四年式拳銃でこっちを狙っている!?ネーミングセンス的に無茶苦茶ヤバい感じはしていたが、やっぱり危ない!?
――しかし、十四年式拳銃とは渋いモデルガン持っていらっしゃる。
「斜め前の名水組の川崎じゃぁぁ!カチコミじゃー!!さっさとパンを売れ!」
――なんて事言うんですか!?花梨ちゃん!!
「てめー!!勝手に|名水組(めいすんぐみ」を名乗りやがって!花梨姉さん名汚しめ!!ここで始末してやろうか!……よく観たらべっぴんやないか!○○へでも売り飛ばしてやろうか!」
――なんやこの昨今の任侠映画でも使わん展開や!
「……大将、おはよう。客を脅すのはまあ……、いいが、本物の銃をチラ付かせるのはヤメロ!パン屋が『高野山の犬共』と戦争になって営業停止になる」
「って!姉さん!おはようございます!ま、まさか!?さ、さ、さ、先ほどお渡しした食パンにGの死骸でも入っていたのでしょうか!?」
――素手で10人くらいはヤッちまってそうな風貌のオッサンが、まるで川で溺れていた所を『助けられたばかりの子犬』のように震え上がっている!?
「……心配するな大将……もし混入していたら、今頃この店は火の海にしているぞ!」
「今から七海を家に送って帰るところだ。七海の家に一泊お世話になったから手土産に大将のパンを買って行くことにしたのだ」
――魔法の粉入ってないよね!?
「ああ!姉さんそうでしたか、それでは、もう少し待っていただければ、焼きたての食パンができますので……」
「……うむ!……その前に、うちの組の者に対しての無礼、どう謝罪してくれようか?」
――!?……なんだと!? 名水組爆誕である!?
「も、申し訳ございませんでした!ワシはここの店主、『不動 龍』ともうす。七海嬢、パンしかございませんが、ごゆっくりしていってください!」
……花梨ちゃんは何者なんだ……。
「あ、いえいえ……お気遣いなく……あ!?そうそう、ここの食パン朝頂きましたが、すごく美味しかったです!」
「そうですか!お口に合って良かったです!花梨姉さんがお世話になったそうで、是非家族様に、パンしかないですが、持って帰ってくだせぇ!」
「いえいえいえ!ちゃんと買って帰りますので……」
「……七海、私が買うから好きな食パンを選ぶといい」
……食パンを選ぶようにと……って!食パンしか売ってない!
「……選ぶにも食パンだけしか売ってませんが」
全部、四角柱である!
「……ふむ、食パン専門店だからな。食パン以外ない」
「食パン専門店って珍しいですよね?よく観ると、四角柱の大きさが色々ありますね」
「……うむ!ここの食パンは、地域の喫茶店・カフェ・ご家庭へ提供しているのだ」
なるほど、食パンの卸売業みたいな物だろうか?
「……そこの86で毎朝食パンを配っ……」
――――それはアウトです!!!!!!!
「……という冗談はさておき、そこの『黒のハイエース』で『黒服達』が配達しているのだ」
……!?別の意味もアウトだ!?間違いなく、パンを配って『みかじめ料』を回収しているだろう!
――パンの代金?セーフか?
「なんか、すごくアウトっぽいのですが……」
「……ふむ、黒龍会は食パンの配達販売で地域トップなのだ!」
「他に、何かされてるのですか?」
「……裏アニマルビデオの撮影、家庭用常備薬の配達、金融業、各種武器まで幅広くやってるのだ!」
――まさにブラック企業です!!!!最後の方誤魔化しきれてなかったですよ!
本物の方である!?
「……ふむ、パンが焼き上がるまで少し時間があるようだから、水槽観ていこう……」
……組事務所といえば、やっぱりアレか!あのデカい魚がいるのだろうか?
――っと言いたい所だったか、入店してから『水草水槽』が目に入っていた。
「ここの水槽も花梨ちゃんがお世話してるのですか?」
花梨ちゃんの家の水槽から比べると結構小さい水槽だった……しかし、90cmはありそうなので大きい?方ではある。そこそこ広めの店内に設置しているので小さくは感じるが、私の家に置けばかなり大きいだろう。
「……ふむ、ここの水槽はそこの『親分』のが育てている水槽……」
……今、親分って言ったよ!
「な、なんか凄いガッツリ体型の方ですが、繊細な水槽ですね……」
「……『反社会勢力』の事務所と言えば、『アロワナ水槽』……この水槽は『水草水槽』……このパン屋さんは『きしゅう君の家』のステッカー貼ってる安心できるお店……」
――入店したら十四年式拳銃向けられた記憶が鮮明である!
……本物だとしたら、アウトではあるが骨董品としての闇の価値がありそうだ。アンティーク好きの知識がなければ気付かないであろう。
「水草水槽仲間?なんですか……あ!パンダっぽい色の魚およいでますよ!」
「……この水槽はco2は添加していない。陰性の水草を中心に入れてる……」
「……あと、底床は『田砂』にしている。水草の育ちは遅くなるが、底で泳ぐナマズの仲間『コリドラス』が飼える。ナマズの仲間は土や砂を掘り返したりするからソイルは向かない。でも『コリドラス』は水槽の底で群れで泳ぐ愛らしい魚。とても人気」
「……この水槽はコリドラスをメインで飼ってる水槽。水草で隠れる所を作ってあげたりと手間暇をかけている。人によっては人工物を入れて楽しむ人もいるが、『兄弟』は、水草と石で創り上げてるのだ」
「……ふむ。いつ見ても素晴らしい出来だ。コリドラスを愛し、水草や石と流木の素材を大切に扱い仕上げている。これもまたアクアリウムとしての道の一つ!コリドラスを中心に考えた空間の構成……」
……最後の方では米国式反社会勢力の兄弟扱いになっていたきがするが……花梨ちゃん的には、『水草水槽の愛好家』の同胞と言いたいのだろう……そうで無いと、outrage御用達の探偵事務所となってしまう。
——水槽を観ていると、パンのいい匂いが一段と強くなってきた。どうやら焼き上がったようだ。
「花梨姉さん!食パン焼き上がりました!」
……本当に食パンしか売ってないのか!?フランスとかクロワッサンとか色々あると思うのだが……食パン専門店も珍しい。
「……ふむ、いい焼き上がり。3代目、一斤頂いていく。」
「七海、パンは何カット位がいい?」
朝食のパンは4つ切りサイズにカットされていた。サイドの大きい耳の部分も無かった。あと、花梨ちゃんは龍さんの呼び方を毎回変えるのは何故だろう。
「あ!出来れば、そのままでお願いできますか?私は無理ですが、心桜ちゃんなら色々出来そうなので」
「お譲!了解した!このまま袋に入れておきますぜ!」
……お、お嬢とは……。裏社会とは出来れば関わりたくないのですが……。
……愛芽さんの親は警察官とかで……無いでしょうね?このパターン……あり得る!?
——カットしてもらうべきだったか?日本刀でヴァーン!っとか切りそうで……あり得ないか。
————!?
「……ふむ……5つ切りくらいに切ろうかと思ったが残念……」
残念そうに花梨ちゃんが日本刀を鞘に戻した。
————だから!何処から刀が出てくるのだ!?
ヤクザが経営するパン屋なら日本刀ぐらいありそうである。先ほど、南部十四年式で撃たれそうになったばかりだ。
「お!それなら姉さん、一斤6つ切りにやっときますか?予約分にカットもあるので良いですぜ!!!」
————花梨ちゃんがやる気満々のドヤ顔である!
「……うむ!我が名刀幸村の斬撃、魅せてやろう!」
——花梨ちゃんが抜刀し……
————一気にパン屋に緊張感漂う空気が流れた!
そして一太刀
『シュイーーン!』
・・・なんと!?見事に6つ切りの食パンになった!?
——そんな訳あるか!
「……花梨ちゃん、なんか、長い茶番ですね。そもそも1回しか切ってないのに『6つ切りの食パン』ってパンを切った回数が合ってません!真っ二つの方がまだ臨場感ありましたよ!」
「……ふむ……一太刀で『六つ切り食パン』にしたのだ!日々の鍛錬の|賜(たまもの!」
ドヤ顔……いや、ドヤ顔キメられても!?日々の鍛錬がパンを日本刀でバッサリする為とか……。
……もう、アクアテイ〇ーズの時もでしたが、何処か日本刀持ってくるのやら。意外と花梨ちゃんも日花梨さん並みに面倒くさい人だ。
ひょいっと!花梨ちゃんから迷刀……えっと?真田丸?だったか?取り上げ————!?
「嬢ちゃん!!!!!刀に触っちゃ駄目だ!!!!!!」
……取り上げて、花梨ちゃんが床に放り投げていた鞘に戻した。
「またそのネタですか……?昨日もアクアショップで日花梨さんと花梨ちゃんが同じ事してましたよ……」
「じょ、嬢ちゃん!どうして……灰にならんのだ……」
デジャブ……っと言うほど時間もたってないので、ハッキリ覚えていた。
「普通、日本刀持った位で灰にはなりませんよ……花梨ちゃん、日本刀元の場所に戻しておいてくださいね」
花梨ちゃんに日本刀を渡した。何処から出してきたのやら……。
「花梨姉さん、どうなってるんだ……」
「……ふむ……よく判らんが事実だ」
「姉さんにも判らんとは・・・嬢ちゃんあんた何者……だ!?」
「普通の女子高生です!」
即答した。もうちょっと面倒くさくなってきたのである。
「……七海、パンも買えたことだし、そろそろ帰るとしよう……」
「あ、はい!龍さんパンありがとうございました!また花梨ちゃん家に来たときに寄らせてもらいます」
「お、おう!嬢ちゃんまた来てくれよ!」
……何故か愛想笑いされた気がしたが……龍さんは悪い人ではなさそうだ。
——いやいや!間違いなく反社会勢力側の人だ!
店を出て、花梨ちゃんのビックスクーターに乗った。
「……よし!七海の家に向け出発!」
楽しかった高野山ともお別れである。また花梨ちゃんの家お邪魔したいと思いながら帰路についた。
——————もちろん、水槽楽部のバイクは時速50kmである!!




