第31話 神と戦うスカイライン!?朝のお勤め会である!?
——昨日、風呂上りにすぐ寝たせいか日が昇るより早く起きた。
既に花梨ちゃんは起きているようだった。 裏庭から朝の鍛錬らしき音が聞こえていた。よく判らないが、剣道とはまた違う感じがした。昨日の朝は物干し竿を振り回していたが、今日は木刀を振っている。
朝寝坊だと、この高野山から私の家の近所にある高校へはとてもではないが到達できないであろう。今はバイク通学できるから多少問題ないが、バイクの免許を取得するまでどうやって学校へ通っていたのだろうか若干疑問である。
「花梨ちゃん、おはようございます!早いですね!」
「おはよう七海、早起きだね。もう少し寝ていても問題ない」
「いえ、なんか目が覚めちゃいまして。さすがに高野山の朝は寒いですね……」
本当に寒かった。ブランケットを羽織っていなかった外を出歩くことは難しいレベルの寒さだ。標高が1,000m近くある高野山だけある。
「……今から奥の院行けば生身供見に行けるけどどうする?」
……生身供?とは何か判らなかった。
「……生身供とは弘法大師に食事を届ける事」
興味があるかないかと聞かれたら、どっちでもいい?かなと思った。
「そうですね、あまり興味が……よく判らないので」
「……ふむ、じゃあ私達の朝ごはんを調達しよう」
「ああ!それなら私に任せてください!冷蔵庫の食材勝手に使わせてもらっていいですか?」
「……うむ、好きに使っていい。多分、日花梨が何か入れてくれてるはず」
一宿一飯の恩はきっちりと返さないと駄目なのだ。このことに関してはあまり口うるさく言わない心桜ちゃんから厳しく教えられて事だ。受けた恩は例え小さくてもいいので返しておきなさいと何回も言われたのをよく覚えている。それ以外では一般的なマナーぐらいだ。
「それでは、キッチンお借りします」
裏庭から家の中に入る途中……
——『パァァァアアアアアアアン!』
聞き覚えのある音が響き渡ってきた……。
「って!まさか!?日花梨さんじゃないですよね!?」
「……ふむ、あれは直四の音だな……」
——『ドゥカドゥカヴァアアアアアアアン!』
また違う音が!?
「今度こそ!日花梨さん……」
「……ふむ、あれはL型2気筒の音だな……」
「花梨ちゃんよく判りますね!?」
——『ヴァアアアアアアアン!』
また来た……不謹慎極まりないな!?誰だよこんな朝からバイクすごいスピード出してる音させてるのは!?
「……ふむ、日花梨だ」
——!?
「ひ、日花梨さん!?」
「の、双子の妹」
そんなわけ無い!?
「日花梨さんは日曜の朝から何をやってるんですか……」
「……龍神名物の朝のお勤め……」
——『ドッドッドッドッヨシヨシムラムラ』
って!?花梨ちゃんもバイクを出してきた!?
「七海、ちょっと日花梨を捕まえてくる……!」
——無茶苦茶やる気満々のドヤ顔である!?
「あ!・・・え!?」
——『ヴァアアアアアアアン!』
返答する前に行ってしまった……。音は日花梨さんと花梨ちゃんのバイクほぼ一緒に聞こえたが……。
行ってしまったのは仕方がないので、花梨ちゃんが戻ってくる迄朝ごはんを作る事にした。話素振りから、日花梨さんを捕まえてくるようだ。花梨ちゃんとの2人での朝ごはんではなく、不本意ではあるが3人での朝食になりそうだ。
冷蔵庫の中を見ると、色々食材が入っていた。昨日買った食材とは別の野菜や果物、玉子もあった。花梨ちゃんは料理は出来ないと行っていたが、とても出来ない人の独り暮らしの冷蔵庫ではなかった。時々、日花梨さんが来てご飯を一緒に食べているのだろうと勝手に思い込んだ。
キッチンはこのレトロな探偵事務所兼リビングの雰囲気に合ってはいるが、最新式のキッチンだった。花梨ちゃんの家は外観がレトロなだけで、かなりリフォームの手が入っているようだ。
冷蔵庫も2ドアのレトロ感はあるが、中身はとても新しいタイプの冷蔵庫だった。
「花梨ちゃんは結構お金持ちなのかな……バイクも2台持ってるし、でも、探偵業ってあまり儲かってないイメージあるんだけど」
っと独り言を言っても誰も返事してくれる事はないのだけど。
多分だが、日花梨さんと花梨ちゃんが戻ってくるまで1時間程、丁度7時前位には戻って来るかなと考えた。冷蔵庫の素材を見て、簡単でかつ、1時間程で出来る朝食を考え、『ポテトサラダ』と『野菜スープ』を作ることにした。
まずは、ゆで卵を薪ストーブで茹で始めた。……薪ストーブで料理してみたかったのである。
薪ストーブに火を入れ、水を入れた鍋に玉子をセットし火にかけておくことにした。ゆで卵の堅さはポテトサラダ用なので固めでOKだ。時間を計らなくても大丈夫だろうが、途中1個だけサルベージをして半熟玉子を食べたいなとも思ったので、スマフォで時間を計ることにした。
同時にジャガイモも茹でなければいけないが、さすがに1時間で一から茹でていては時間が足りないので、電子レンジ先生で下ゆで……予備加熱をしてから茹でることにした。
……順調にポテトサラダを作りながら、野菜スープも同時進行で作っていった。
——『カチャ』
……探偵事務所の『玄関のドア』が開く音がした。
「おはよー、花梨ちゃん起きてるー?って日曜の朝だと『日花梨ちゃんと走りに行ってる』かーって独り言言ってもねーって!?誰かいる!?」
「あ!、え!?っと、おはようございます」
——だ、だれだ!?花梨ちゃんは独り暮らしだと言っていたが……。
「お、おはよう、貴方誰なんです?」
「あ、七海、川崎 七海です!あの、花梨ちゃんと同じ部の水槽楽部員です!」
「ああ!あっち側の人……あっと、高校のお友達さんなんだね!吹奏楽部なんだ、って花梨ちゃん楽器とかやらないタイプだと思ってたけど……」
「あ!?水槽楽部、アクアリウムの部活です!」
「え!?そんな部あるんだ!?……って……まあ、花梨ちゃんなら、作っちゃいそう」
……この人は、花梨ちゃんのと親しそうだけど、学校のこととかあまり話さないのかな?
「花梨ちゃん、プライベートの事はあんまり話さないからねー。お友達連れて来たのも初めてだし」
そういえば、花梨ちゃんは無口らしいが……私とはとても話してくれるイメージがある。
「そうなんですね……って日花梨さんもよく来てるみたいですが?」
日花梨さんもこの探偵事務所によく来てるイメージを受けたのだが。実際、昨日もここで一緒にご飯食べたし。
「日花梨ちゃんね……あの二人は友達じゃないんじゃないかな?」
——嫌な予感がした……。
——二人の関係に踏み入ってはいけない気がした……。
————まさか!?恋人関係なのか!?
いやいや!まだ早い!?そう決めつけるのは!?
「仲いいと思うのですが、今も日花梨さんを追っかけて花梨ちゃんバイクで出ていきましたので……」
「あー、あれは朝のお勤めだねー!ちょーーっと朝の儀式みたいなものよー」
……あれは、どう見ても早朝の暴走行為だ!?きっとお巡りさんが寝ている間に悪行を繰り返しているのだろう。
「す、すみません、貴方は花梨ちゃんのお姉さん?じゃなさそうですが……」
「ああ!姉妹とかじゃないよ!見た目が全然違うからねー」
「私は、天野 理子。理子でいいよー」
「理子さんですか……」
「一応、私もこの探偵事務所の人間だから。ほら鍵も持ってるし」
「ああ!なるほど!理子さんも探偵なのですか」
「うーん、花梨ちゃんの助手と言った方がいいかな。私は花梨ちゃんと違って一般人だから。雑用&処理係ってところかな」
——なんか、引っかかる言い方を先ほどからする人だ。私とは初対面だし、花梨ちゃんのプライベートの事を濁しているのだろうと察しておいた。
「そうですか……私自身花梨ちゃんと知り合ってまだ日が浅いですが、よろしくお願いします」
——なんとなく、社交辞令的に返答しておくことにしておいた。
「あ、朝ごはんを今作っている所なんですが、理子さんも食べていきますか?」
「そうなんだ!助かるかなー、いつも私が花梨ちゃんのご飯作ってるから、上げ膳据え膳とは」
花梨ちゃんのご飯は、理子さんがいつも作っているみたいだ。昨日は多分、花梨ちゃんが私の家にもう1泊か、夜遅くなるかで断っていたのだろうか?
「それじゃあ、手伝いますかね!何したらいいかなー?」
「丁度、茹で玉子が出来ていると思いますので、冷やしていただいて、殻を剥いてください。そのあと、ジャガイモも茹で上がる頃だと思いますので、同じく皮を剥いていただけたら助かります」
「りょうーかい!」
日花梨さんや花梨ちゃんから比べると、結構大人っぽい感じがしたが、そんなに年は離れてないだろう。理子さんが手伝ってくれるお陰で、野菜スープの具材の種類を増やすことが出来た。『ポテトサラダ・ちょっと具沢山になった野菜スープ・食パン』でいい感じの朝食が出来た。昨日の余っていたパスタで『ナポリタン』も作ることが出来た。計4人分の朝食としては十分なボリューム感も出た。
日花梨さんならもっと華やかな朝食をいとも簡単に作りそうだけど、ここまで出来れば私的には及第点を付けることが出来た。
あえて減点するとしたら、理子さんが来たことで『半熟玉子』を食べ損ねた事だ。
花梨ちゃん達が戻ってきたらパンを焼くことにしよう。
「理子さんは、花梨ちゃんのご飯を毎日作りに来てるのですか?」
「毎日って程ではないけどね。でも、仕事で事務所にいることが多いし」
「この高野山で探偵業って成り立つのですか?」
少し疑問でもあった。比較的開けた街並みではあるが、探偵業が出来るほど人口はいないと思ったからだ。
「うーん、儲けは関係ないから。判りやすく言えば、事件が起きたら出動?かな。殆ど花梨ちゃんが解決するんだけどねー。高野山特有のトラブルとか事件があるから」
——事件が起きるらしいが、花梨ちゃんが解決すると……。
「理子さんは花梨ちゃんのお姉さんみたいな存在?」
「私はどちらかというと、花梨ちゃんに引っ張ってもらってるかなー?」
花梨ちゃんはとても魅力的な美少女ではある!
——『ヴァアアアアアアアン!』『ヴァアアアアアアアン!』
2台分のバイクの音が聞こえてきた。
花梨ちゃんと日花梨さんが戻ってきたようだ!
さて、二人を出来立ての朝食で迎えることにしよう。




