エルフさんのお家
「着きましたよ。ここが僕の家です」
そう言われてみるが……。家らしきものが見つからない。
「どこにあるの? 見えないのだけど」
そう戸惑って言うとあいつに鼻で笑われた。
「エルフの家は樹の上に作られるんだよ。そんなことも知らないのか」
「まぁまぁ。普通の人は知らないのが普通ですよ」
「こいつは一応王女だぞ?」
「こいつって言わないでもらえます?ウラニアっていう素敵な名前があるんです。それと、一応じゃなくてれっきとした王女ですわ」
「その割にはこの国の住民のことを何も知らないんだな」
「王女殿下も、フェイボス様も少し落ち着いてください。王女殿下は雲の上の方。エルフという存在がいることを知っていただけるだけでも光栄なのです。どうかお気になさらず」
エルフがこの国にいることは常識よ。なんだか励まされてるのか貶されてるのか微妙だわ。
「どうやって上まで行くの?」
「普通は蔦を上っていくのですが……。女王陛下のためにエルべーたーを作りましょう。少々お待ちください」
「いえ、いいのよ。私も蔦を上っていくわ」
「いえいえ。一度作ってみたかったのです。是非作らせてください」
笑顔で押し切られた。なんか迫力があるわ。無言の、圧力というものかしら。でも、無言ではないわね。なんというものかしら。
そんなつまらないことを考えていると
「できましたよ。自然の物で作った自然のエレベーターでございます」
声がして上を見ると緑色の箱が下りてきた。
「いかがでしょう? 丈夫な素材で作りましたので乗っても大丈夫ですよ。それと、扉は手動で占めることになりますが、大丈夫でしょうか?」
「え、えぇ。大丈夫よ。素敵ね」
自然のエレベーターだなんて。素敵だわ。
「では、王女殿下。どうぞお乗りください」
クルトにエスコートされて中に入ると季節の花に彩られていて、とても綺麗だった。落ち葉の絨毯が引いてあり、椅子は鳥の羽毛で座り心地がとてもいい。
「素敵。本当に素敵だわ。作ってくれてありがとう」
「喜んでいただけてよかったです」
「……。俺は先に上って上に行ってるぞ」
「あら、乗ればいいじゃない。ダメなの?」
「上れるからいい」
「一緒に乗りなさいよ。命令よ」
きつめの口調でそう言うと、しぶしぶ乗り込んできた。
「わかったよ」
無言でエレベーターが上がり始める。やがて玄関らしきものが見えてきた。
自然のエレベーター。乗ってみたいものです。