森の熊さん
執筆遅くなってごめんなさい。
ガサリと目の前の茂みが音を立てた。
「っ!!」
悲鳴を上げそうになって慌てて口を手でふさぐ。
「大丈夫だ。野うさぎだ」
ゆっくりゆっくりと音を立てないように森の中を歩く。
「っっふぇっくしょん」
唐突に後ろでくしゃみをする“大きな”音がした。
フェイボスが勢いよく振り返る。
「ご、ごめんなさい」
「っ。いえ、大丈夫です。少し急ぎましょうか」
あっ、いらいらしてる。っていうか、怒ってるわ。
「ハンナ、花粉症なの忘れてた」
「お前ら今すぐ戻れって言いたいけど、ここまで来たら引き返すのも面倒だ。大人しくしてろ。熊に襲われるぞ」
「わ、わかったわよ」
真後ろから低いうなり声が聞こえた。
「……なぁ、お前の召使はくしゃみの時にこんな声を出すのか?」
「い、いいえ。そんなことはなくってよ」
ゆっくりと後ろを振り返った。
「お、王女殿下、フェイボス卿、! お、お助け下さい! ま、まだ死にたくないですぅ」
ハンナが泣きながらそう叫んだ。いや、熊の爪にぶら下がった状態で、といったほうが正しいだろうか。
それよりハンナ。あなた召使なら主を逃がそうとするものじゃないのかしら。それと、私だって死にたくないわよ!
それにしても
「あれが熊なの? 本で見たよりも大きい気がするわ」
「まぁ、熊の一種だよ。少し、後ろに下がっておけ」
そう言ってフェイボスが私を後ろに押す。
その瞬間に矢が飛んだ。
「きゃあ!」
その矢は真っすぐに熊の心臓に当たり、ハンナは倒れた。
「ハ、ハンナ!?」
慌ててハンナに駆け寄る。
「クルトか。助かった、礼を言う」
「いえ、おう……フェイボス様。お怪我はありませんか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「それより、彼女は確か……」
「あぁ、そうだ。父上と国王陛下が婚約者にと押し付けてきた」
お、押し付けてきた?
「押し付けてきたって何よ。私だってあなたとなんか結婚したくないわ。それより、エルフのあなた。クルトといったかしら?助けてくれてありがとう」
「本当に何も……。王女殿下、お怪我は……ないようですね。そちらの女性は気を失っているようですので、私の家においでになられてはいかがでしょう? 目を覚ます開いただけで結構ですので」
「じゃ、お言葉に甘えて」
「おい、俺は遊びに来たんじゃないんだ。狩りをしに来たんだぞ?」
「いいじゃない、少しぐらい。それとも、私たちを森に置き去りにしていくつもりなの?」
「チッ。少しだけだぞ」