嫌がらせの始まり
朝目が覚めた私は、胸からふつふつと湧き出る怒りを抑えることはできなかった。
「あんな態度、許してやるものか」
朝食をとるために1階に下りたところでフェドラと鉢合わせ。
「あ、おはようございます、ウラニアお姉様。……どうかしましたか?」
「おはよう、フェドラ。あのね、フェイボス様のされると嫌なことってあるのかしら?」
「? えぇ、ありますよ? 狩りについていかれることです」
なるほどね。決めたわ。今日、あいつの狩りについて行ってやる。
「なにかありました?」
「ふふふっ。後で話すわ」
急にご機嫌になった私を見てさらに不思議そうな顔をしてきた。
部屋に着くとすでにフォレスト卿とあいつがいた。
「おはようございます、フォレスト卿、フェイボス様」
「おはようございます、父上、兄上」
「おはようございます、王女殿下。おはよう、フェドラ」
「おはようございます、ウラニア様。おはよう、フェドラ」
ちっ。相変わらず猫被っていやがるわ、あいつ。いけすかねぇやつ。
「いやですわ、フォレスト卿。ウラニアとお呼びくださって結構ですのよ? いずれ娘になるのですから」
そう言ってちらりとあいつを見る。
「いやいや、ウラニア様は」
「そうですか。では、ウラニアとお呼びさせていただきますね。どうぞ、お父さんとでも、パパとでもお呼びください」
あいつのセリフを遮るようにしてフォレスト卿が言った。ナイス。
「父上と呼ばせていただきますわ」
あいつは殺意のこもった目で私を見ていた。おぉ、怖い怖い。鳥肌が立ったわ。
「父上。お言葉ですが、まだ結婚をすると決まったわけではありません。王女殿下にそんな親しそうにしては国王陛下がお怒りになるのでは?」
「大丈夫ですわ。お父様はそのようなことでお怒りになられるほど心は狭くありませんの。ですから、父上もフェイボス様も心配なさらなくて結構ですわ」
何を言っているのよ、この二重人格者。私の計画を邪魔しないでちょうだい。
「確かに国王陛下はウラニアを溺愛されているが、そんなに心の狭い方ではないぞ。心配するほどのことでもない」
……。今日のフォレスト卿はなんだかご機嫌ね。少し気味悪いわ。
「しかし、父上」
「お前はそんなにウラニアと結婚するのが嫌なのか? お前にとっては嬉しい話だと思ったのだが」
あら? どういうことかしら?
「っ父上。嫌ではありませんが……」
昨日あれほどいていたくせに。
「いいではありませんか、兄上。ウラニアお姉様は優しい方ですし、私は賛成ですわ」
「フェドラ、お前まで……。はぁ。もういいです」
そう言いながらあいつは私は一瞬ぎろりとにらんできた。もういいって諦めたってことじゃなかったの!?
ウラニアは怒る怖いということがよくわかりました。
それにしても、婚約者をあいつ呼ばわりはよくないと思う……。




