マイヤー伯爵家に到着~上~
「うわぁ、どこを見渡しても木しかないわ、ハンナ」
私は周りを見渡しながらそう言った。
「えぇ、そうですわね、王女殿下」
私の付き人のハンナは馬車を走らせながら返事を返した。
「ねぇ、ハンナ。お父様が言った通り森の奥にあるのね。どうしてかしら?他の公爵家や侯爵家、伯爵家は皆それぞれの町の中央にあるわよ。何か理由でもあるの?」
「えぇ。マイヤー伯爵家は特別で、昔からエルフを纏めることができるのです。他にも子爵家、男爵家が森のエルフを纏めておりますが、エルフは自尊心が高く、あまり人の言ううことを聞かないので纏めきれないことも多々あるのです。都周辺の森は最もエルフが多い地域です。その地域を少数でも纏めきれない子爵家、男爵家に任せるわけにはいきません。マイヤー伯爵家は多くてもきちんと纏めきっています。そのため、国王陛下からの信頼も厚いのでしょう」
ハンナの話を聞いて納得がいく。
「ハンナ。あなた物知りなのね」
そう言うと、頭をぶんぶん振って、こちらを振り返った。
「いいえ、前々から国王陛下がマイヤー伯爵家に王女殿下を嫁がせようとしていたのを知っておりましたので、マイヤー伯爵家について調べさせていただいていたのです」
「わ、わかったから、前を向いて。危ないわ」
「あっ、ごめんなさい、王女殿下」
「大丈夫よ、死んでいないから」
ハンナと一緒にいるときはとても心が落ち着く。お金でハンナは雇われているのに、精一杯尽くしてくれるからハンナには大感謝してる。こんなこと、本人には言えないけれど。
「どうかしましたか?王女殿下」
「いいえ、何もないわ。それより、マイヤー伯爵家にはまだつかないの?」
「もうそろそろですよ、王女殿下。……あっ、城が見えてきましたよ」
小窓から顔を出して前を見た。そこには森の雰囲気とあった建物が建っていた。
「あまり煌びやかじゃないけど、素敵な城ね」
「そういうところもエルフに支持される所以なんでしょう。あぁ、それと王女陛下。マイヤー伯爵家の方々は客人がいるとき、家の中でもフードを被って外さないそうですよ。きっと心を許した方にしかフードを外さないんですよ。頑張って外せるよう努力してくださいね、王女陛下」
「そうなの。教えてくれてありがとう」
「いえいえ。それにしてもロマンチックですね。心を許した方にしかフードを取らないなんて。何か秘密でもあるんでしょうか。あぁ、心臓が口から出そうです」
「妄想はいいわ。ハンナの妄想は甘すぎて困るのよ」
嫌いじゃないけど。逆に好きだけど、そういうことを考えるのは少し恥ずかしいのよね。
「あぁ、ごめんなさい、王女殿下。もうそろそろ到着ですよ」
ハンナが妄想乙女だったことに驚きが。
夢見る乙女のフェドラと気が合いそうですね。