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はじめに
フィクションです。
ジョー・メハラに継ぐ異彩の野球人が、かのオームランで有名な大村小一であろう。
ジョー・メハラに関わり彼に悲惨な野球修羅道を歩ませた責任を痛感した私、加藤源次は、ジョー・メハラこと三原譲治の引退を機に野球界を退くつもりだった。
しかしそんな私を、なおも野球界に引き留めるような強力な人物が現れてしまった。
それが、大村小一君だった。
私は、再びスカウトそして彼の専属コーチとして野球界に復帰した。
しかし、私はジョー・メハラのときの失敗を再び犯し、大村君を野球修羅道に追いやってしまうのである。
大村君に対しては謝罪のしようもない。
大村君本人は
「気になさらないでください。すべては僕の運命ですから」
と私より若いのに、達観した言葉を洩らしていた。
もちろん、言外に強い悔恨があるに違いないのだ。
大村君の引退から5年が過ぎた。
大村君の名球会入りを見届けた今、私、加藤源次はここに大村小一君の栄えある偉大な功績を称えるべく、この書を世に送る。