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4. 東の森



 帰って来たルアはお昼を食べながら、祖父と母に木の実拾いの事を話した。


「でね、ランが穴場を教えてくれるんだって。だから朝から出かけたいの。行って良い?」

「ええ。気を付けて行ってらっしゃい。ちゃんと魔除け香と、毒消しも持って行きなさいよ。」

「はーい。」


 お昼を食べ終えると、祖父に許可を貰って作業場に入った。

 魔除け香を練るためだ。乾燥させた白花草と鈴韮を量り取る。香り空木の実をすり鉢で粉にする。全部すり鉢の中で混ぜて、混ぜ粉にしたら松脂を入れて、よく練る。細いひも状ににしたらグルグル渦巻状に成形して、真ん中に小さな穴を開けておく。この穴に留め具を付けて固定するのだ。日陰において乾燥させれば完成だ。

 その後は傷薬と毒消しを練った。ルアは練習のために、自分で使う分は自分で作るように言われている。もちろん、作り方は母に習って効能も確認してもらっている。

 その他要りそうなものを思いつく限り作っていると、すっかり日が傾いていた。

 そうだ。武器も用意しなくちゃいけない。普段村の外へ行く時は、護身用にこん棒を持っている。こん棒と言っても、先が丸く膨らんだ戦闘用の物ではない。元々はお母さんが台所で使っていた麺棒を、貰って使っている。うっかり赤葡萄の汁をこぼしてシミが付き、パイ生地を伸ばすたび紫のシミが付くようになったので、新しいのに換えたのだ。染みつき麺棒と言えど、片手で握るのに丁度良い太さで、重さも振るのにもぴったりなのだ。スライムを潰すくらいは出来るけど、ハリトバシを相手にするには間合いが狭い。ハリトバシは腕を目いっぱい伸ばしたよりも離れた場所から針を飛ばして来るのだ。

 物置へ行って物色すると、魚取りに使う銛が目に入った。リリーの兄のトール兄ちゃんが作った物で、余った針金を曲げて、木の棒の先に取り付けてある。焚き火に突っ込んで焼きを入れたから曲がることもない。先が二股だから、魚を取り外す時にくるりと回らないのが便利でいつも使っている。針金を尖らせてあるので魚を貫けるくらいには鋭いが、切る事は出来ない。柄が長いので、槍として使っても良いし、柄で殴ることも出来るだろう。

 庭で振りまわして見て、これを持っていくことに決めた。こん棒と一緒に使っている小さな木の盾は、持っていかないことにした。銛は柄が長いから、両手で扱わないといけない。盾はうまく使えないだろう。

 穂先を研いでいる内に、夕食の時間になり母が呼びに来た。


「まぁ、明日は魚取りもするの?」

「うん。ライとレイルは川にも行きたいんだって。」


 次の日の朝。ルアは日の出前に起き、朝食を食べて東の森へ向かった。朝の鐘が鳴る頃に家を出たのに、もうみんな集まっていた。


「お早う!」

「遅いぞ!」

「ごめーん。」


 みんなしっかり武装している。リリーはフレイル(脱穀竿)を持ってきた。長い棒と短い棒を革紐で結びつけた物で、いつも脱穀に使っているのだそうだ。革紐は2重になっていて、もし切れても飛んでいかないようにしてある。

 ランはいつものハンマー(木槌)を腰に吊っている。大人が使う道具だからランの手には大きいのだが、誕生日に貰って以来のお気に入りなのだ。

 レイルは手にクルーク(牧羊杖)を持ち、腰には丸めたブルウィップ(牛追い鞭)を吊っている。どちらも彼の仕事道具だ。クルークは先が丸くなった木製の杖で、羊や山羊を捕まえる時に首に引っ掛けて引き寄せるのに使う。ブルウィップは牛を移動させる時、音を出すのに使う。これは結構大きな音が出るので、レイルがキバリネズミを驚かして追い払っているのを見たことがある。ルアもびくっとした。音もそうだが、普段にこにこしているレイルが無表情なのが怖かったので。

 みんな長袖ジャケットを着て、ルアとリリーも今日はスカートではなくズボンを履いて来た。

 魔除け香に火を入れると、独特の爽やかな臭いが立ち込めた。

 忘れ物が無いか確認し、さて出発という段になってランが言いだした。


「まて、行く前に隊長を決めよう。」


 隊長、つまりパーティーリーダーである。彼が言うには、兵隊には全体の最終的な行動決定権を持つ隊長が必ずいるらしい。

 ルアはランの大好きな従兄が領主さまの兵隊に入っていて、この春小隊長になったと言っていたのを思い出した。

 ランの主張はこうだ。

たとえば、雨が降った時、途中で誰かが怪我をした時、つまり何かあった時に作戦を続行するかを決める役目が必要だというのだ。

 一理ある。けれどもランの得意気な顔を見ると、自分こそが相応しいと言いだしそうだ。

 ルアは言った。


「4人しかいないんだし、何かあったらその都度話し合えばいいじゃない。

 揉めたら多数決で決めてさ。」

「甘いな。4人なんだから、2対2で揉めたらどうするんだ。」

「うーん。」

「良いわよ。ただし隊長が決めるのは、それこそ2対2で揉めた時だけだからね。

 自分が楽するために普段から威張るのは無しだから。」


 リリーが釘を刺したので、それなら良いとルアは頷いた。レイルも賛成したので隊長を決めることになったが、ランは自分が隊長に就任する意欲を失ったようだった。

 結局、地図を持っているからという理由で、ルアが隊長になった。

 それって、隊長じゃなくて道案内じゃあないのかな?とレイルは思ったが、言わずに皆の後を追いかけた。

ルアが嬉しそうに先頭切って歩きだし、おいて行かれそうになったので。



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