3. 計画
それから二人は計画を練った。村の広さから考えて、バツ印の場所まで行くのはかなり時間がかかりそうだ。お弁当が居る。
それにモンスターも出る。東の森は子供だけで行っても怒られない場所だから、もちろん大したモンスターは出ない。よく見かけるのはドロミズススリとかヒイロケムシみたいな低級スライム、虫系モンスターだ。どちらも棒で叩くか踏みつぶせば良い。ちょっと嫌なのはドクマキガやヤツメトカゲ、ハリトバシみたいな毒のあるモンスター。これも魔除け香を焚けばよって来ないし、逃げるのも簡単だ。魔除け香をたくさん持って行って、毒消しや傷薬なんかも用意しておくことになった。
あとは、その日に限って手の掛る用事を言いつけられたりしないようにしておかなければ。
相談の末に、木の実集めに行くという口実で森に行くことになった。それなら用事を言いつけられたりしないし、お弁当も作ってもらえる。
決行は早い方が良いということで、明日である。雨天延期だけれども、空には雲ひとつない。きっと明日も晴れるだろう。
後は情報が必要だ。とリリーは言った。
「情報?」
「そうよ。森の奥の方はもっと強力なモンスターが出るかも知れないじゃない。
魔除け香が効かないようなの。で、逃げられなかったら大変よ。
だから誰か、奥まで行ったことのある子にどんなモンスターが居たか聞くの。」
「エマ姉ちゃんやトール兄ちゃんに聞けばいいんじゃない?」
リリーの兄姉の名前を出すが、彼女は首を振った。
「木の実拾いで何処まで行く気だ、って怒られちゃうわ。最悪、心配して誰かが付いてくるかも。」
「確かにそうか。じゃあ、ランかレイルに聞いてみようよ。」
「うん、そうね。男の子の方が、森の奥には詳しいかも。」
ランとレイルは村の男の子だ。村の子供の中でこの4人は年が近いので良く一緒に遊ぶ。
とりあえずルアの家から近い、ランの家に向かった。ランは鍛冶屋の息子なのだ。あいにく不在だったので、レイルの家に向かう。レイルの家は牛飼いで、たくさんの牛と羊、あとは馬と山羊を少々飼っている。
レイル宅へ向かう途中の河原で二人を見つけた。丁度二人で地面をほじって、釣り餌を集めているところだったので、リリーはなるべくバケツに寄らないようにした。ルアはわざわざ覗き込んで、うえぇ、といった。
「わざわざ見るなよ。」
レイルが呆れたように言った。
「わかっていても見たくなっちゃうんだよ。」
ルアが応えて聞いた。
「東の森の奥って行ったことある?」
ランは怪訝な顔をした。
「急にどうした?行くのか?」
「明日木の実拾いに行くのだけど、たまにはちょっと奥まで行こうと思って。
なんかヤバそうなモンスターって出る?」
リリーが引き継いで訊ねた。レイルが応える。
「ヤバそうって言っても、せいぜいハリトバシくらいだろ。」
ハリトバシは蜂に似たモンスターで、毒々しい青色と黄色をしている。その名の通り毒針を飛ばして来るのだ。大人の手の平程度の大きさだが必ず群れで行動する。遭遇するときは数羽いるし、戦っている間に仲間を呼ぶのでどんどん数が増える。群れを全て相手にするか最初の数羽をさっさと倒せないなら逃げた方が良い。
ランは別のことを聞いた。
「小川の辺りだったらアカメが出るって言うけどな。奥ってどの辺まで行くんだ?」
「どの辺って。」
リリーが言い淀む。
「決めてないわよ。奥の方に行ったらいっぱい残っているかもしれないじゃない。」
「ふーん。俺らも行くよ。」
「えっ。」
思わず声が出たリリーを見て、ランはにやりと笑った。
「やっぱり。なんか隠してるだろう。」
「別に。ただ女同士の話がしたかっただけよ。来たいなら来れば。」
「女同士のはなしぃ~?ふーん。じゃあ俺らは途中で別れるよ。それなら良いだろ?」
「なになに、森に何かあんの?」
ランは面白い物を見つけたとばかりににやにやしている。リリーはしまったとほぞを噛んだが、後の祭りだった。ルアは呑気に笑っている。
「良いじゃないリリー。4人で行こうよ。」
リリーは不満げだったが、こうなったら仕方が無い。
「ただし二人とも。この話は絶対に内緒にして。そう誓ってくれないと教えないから。」
乾いた地面に地図を広げて、風で飛ばないよう四隅に石を置いた。ルアが説明する。
「そういう訳で、ここに宝物があるかどうか確めに行くの。」
「宝探しってわけか。面白そうだな。」
レイルがバツ印を指して言う。
「でもここって僕らの足じゃ半日くらい掛かると思うよ。朝早く出ないといけない。」
「ここって森を抜けて、ほとんど東の山に差しかかってるよな。流石に山登りする時間は無いぞ。」
「たぶん、山の入り口当たりじゃないかな。小川の始まる場所みたい。」
「僕らもこの辺りまでは行った事ないなぁ。」
「じゃあモンスターについては判らないのね。」
「森の中ならそう変わんないだろ。とりあえずみんな武器持ってこいよ。」
「あと毒消しと魔除け香と、お弁当もね。」
「あ、傷薬はウチで用意しとく。後は煙玉かな。他に何か要りそうなものある?」
話し合っている内に昼時を告げる鐘が鳴り、作戦会議はお開きとなった。
「じゃあ、明日の朝一で森の入り口に集合ね。各自お弁当、魔除け香、毒消し持参。武器装備だからね。」
「わーたよ。」
「じゃあ明日ねー。」
「バイバイ。」
そうして4人はそれぞれの昼食のため家に戻った。




